石田 淳

学部長からのメッセージ

東京大学における学士課程教育は、前半の前期課程と後半の後期課程から成ります。本学の学生は、前期課程において、人間の知的活動の広がりとそれを構成する個々の学問分野の配置とその相互関係を理解するとともに、自分自身の知的関心と適性も自覚したうえで2年次半ばの進学選択に臨み、特定専門領域の学問を修める後期課程へと進学して行きます。このように学生の大半は、入学から進学までのつかの間、駒場キャンパスを駆け抜けてゆくのですが、約6%の学生は、学際的な駒場の知的環境の中で学士課程を完結することを選択しています。

1949年の設置以来の教養学部の歴史は、学部ウェッブサイトの「総合文化研究科・教養学部の歴史」に詳しいのでここでは繰り返しません。その要点だけをここに確認しておきたいと思います。すなわち、駒場の後期課程教育は、前期課程教育に携わる多様な人材を活用して、多面的な現実を総合的に把握するために既存の知の境界を乗り越えようとする学際的な挑戦――越境する知性――なのです。

人間社会が直面する難題は、学問をなりわいとするものにとって都合よく、既存の特定学問分野の枠の中で十分に解答できるものばかりではありません。多様な学問分野の枠を超えて、一体として学際的な協働を行うことなしには解答できない問いは数多く存在します。しかも、この《多様にして一体》の学際的な協働も、文系内部の協働、理系内部の協働、あるいは文理の枠を超えた協働といろいろです。現在、教養学部後期課程は、文系の「教養学科」、理系の「統合自然科学科」、そして文理融合の「学際科学科」の三学科を置いて、まさにこの学際的な協働を展開しています。

さらにそれぞれの学科は、分科、コース、プログラム、サブコース、サブプログラム等を置いていますから、教養学部後期課程の全容を俯瞰するにはガイドマップが必要です。それが本小冊子『越境する知性』に他なりません。この小冊子で後期課程の組織名称を確認して頂ければ一目瞭然ですが、《多様性の中の一体性》を表す「総合」、「統合」、「相関」、「学際」、「国際」等の修飾語が、駒場における知的活動のキーワードになっています。

総合文化研究科・教養学部長
石田 淳