HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報534号(2010年12月 1日)

教養学部報

第534号 外部公開

IARU グローバル・サマー・プログラム

木村秀雄

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ロバートソン講師の授業風景
東京大学はさまざまな形で、海外の大学との連携強化に努めてきました。学部後期課程のAIKOMプログラムがその典型ですが、その他にも世界中の多くの大学と国際交流協定を結び、学術交流や学生交換を進めています。そのような大学間交流の一つに、IARUグローバル・サマー・プログラムがあります。

IARUというのは聞き慣れない言葉かもしれませんが、International Alliance of Research Universitiesの略称で、世界の十大学(オーストラリア国立大学、シンガポール国立大学、北京大学、スイス連邦工科大学チューリッヒ校、コペンハーゲン大学、カリフォルニア大学バークレイ校、イェール大学、ケンブリッジ大学、オクスフォード大学、東京大学)が加盟する大学連合です。

このIARUが実施するサマー・プログラムは、加盟各大学が短期の集中授業を提供すると同時に受講学生を派遣し合うものです。このプログラムは二〇〇八年に始まり、昨年までは工学部のSustainable Urban Management とNanoscience、本郷の留学生センター(本年度から日本語教育センターと改組)のIntroduction to the Japanese Languageが開講されてきましたが、本年度から教養学部の新しいプログラムが加わりました。本年度、東京大学は十五名を派遣し、三十一名を受け入れました。

教養学部が提供した授業は、Japan in the Today’s Worldと題した集中講義で、本年七月二十日から二十九日まで行われました。カリキュラム上ではAIKOMプログラムの科目として開講したもので、正規の二単位が与えられます。イェール大学を除く海外の八大学から十二名の学生が参加し、東京大学からはAIKOMプログラムの外国人学生二名と、法学部の学生4名が常時受講しました。その他に、全部の授業を受講した日本人学生が数人ありました。

Japan in the Today’s Worldでは、毎時間さまざまな講師をお招きして、日本を取り巻くさまざまな問題についてお話していただくプログラムを編成しました。プログラムの構成、講師への依頼、ディスカッションのリードなどは、教養教育高度化機構の旭英昭特任教授が担当しました。土曜日曜を除いた八日間、午前中の二コマを授業にあて、個々の授業に対して翌日レポートの提出を要求するというハードな授業でしたが、実りも大きかったと思います。

授業は、六つのクラスター(Fundamentals and Variables、The Japan ? U.S. - Relations、Japan and Asia、Japan in the World、Japan in the World: What’s Unique and What’s Common?、 Wrap-up)に分けられ、各講師による四十五分から一時間弱の講義のあと、受講生からの質問やコメントを受けるという形で進められました。講師は表のとおりです。

  Volker Stanzel(駐日ドイツ大使)
  伊奈久喜(コラムニスト、日経新聞)
  Robert Dujarric(テンプル大学日本校)
  松尾文夫(ジャーナリスト)
  大島賢三(国際協力機構副理事長、元国連大使)
  松浦晃一郎(ユネスコ前事務局長)
  東郷和彦(元オランダ大使)
  Jonathan T. Fried(駐日カナダ大使)
  Glen S. Fukushiman(エアバス・ジャパン社長)
  Marion Robertson(オリックス球団社長)
  藤垣裕子(大学院総合文化研究科)

講義の他にディスカッション、最終的な意見発表、数回のランチ・ミーティングも開催しました。今年の夏はとりわけ暑かったこともあり、途中一時体調を崩した受講生もありましたが、質問や意見が飛び交い、とても刺激的な授業でした。講師も交えたインフォーマルなミーティングも好評でした。

全体のコーディネーションを担当した者として最も強く感じたのは、複数の国から集まったさまざまなバックグラウンドを持つ学生たちが、ひとつのテーマについて学び、意見を交換することがいかに大事かということです。今回の講義では、日本とアジアとの関係も大きなテーマだったのですが、北京大学からの受講生は、今回の授業で日本と中国以外の国の人の意見を聞けたことがとてもよかったと述べていました。日本と中国の間で一対一の交流を深めることも大事でしょうが、そこにその他の国の人を加え、関係の当事者の間からはなかなか出てこない意見や新鮮な視点を導きだすことで、新たな相互理解の可能性が開かれるのだと思います。

今回は事前の広報が不足していたこともあってか、日本人の受講生が少なかったことが残念でした。授業の登録者はかなりあったのですが、受講生は決して多くありませんでした。すべて英語で行われる授業ということでハードルが高かったのか、毎回レポートという課題がきつすぎたのか、その原因がはっきりとわかったわけではありません。駒場での授業はまだ一年目ということもあり、試行錯誤が続きますが、毎年夏学期に開催する予定です。学部学生や修士課程大学院生の諸君の、来年度授業への積極的な参加をお待ちしています。

(超域文化科学専攻/スペイン語)

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