HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報541号(2011年10月 5日)

教養学部報

第541号 外部公開

教養学科 ~文系の学際的な知の空間~

斎藤文子

新しい後期課程において発足した教養学科は、駒場キャンパスの文系教員が教育・研究を担う、学際的 な学科です。教養学科という名称には、じつは六〇年の歴史があります。一九五一年に教養学部後期課程が設置されたときに、学際的で高度な教養教育を行いつ つ、駒場から新しい学問を創出しようという気概のもと、教養学科が誕生しました。以来、多くのすぐれた人材を輩出し、教養学科で育ち発展したといわれる学 問領域も出てきました。

その後専門性を重視する教育への要望が強まり、いっそうの発展拡充をめざして、一九七六年、教養学科第一、第二、第三という編成になりました。さらに大 学院重点化の動きに連動し、一九九六年に後期課程の文系は、超域文化科学科、地域文化研究学科、総合社会科学科という三学科体制になりました。教養学科と いう名称に誇りと愛着をもつ卒業生、教員は多かったのですが、このとき教養学科は解消されたのです。

それから十余年、時代と社会の大きな変化により、文系学科の教育・研究は新しい対応を求められ、三学科を統合して一学科とすることになりました。その名 称として再び教養学科を冠することにし、装いも新たに、新しい一歩を踏み出すことになりました。従来の三学科は、超域文化科学分科、地域文化研究分科、総 合社会科学分科として、教養学科を構成する三分科となります。

新しい教養学科の教育理念には、三つの柱があります。

 (1)高度な教養教育、
 (2)学際的な専門性をみがく教育、
 (3)学生とともにある教育、

です。(1)に関しては、総合的な視点と柔軟な理解力、また国境や地域を自在に横断する姿勢と能力を習得させることを目標とします。(2)に関しては、現 代社会の要請に対応しうる先鋭な問題意識、分野をまたぐ創造的な問題解決力をもつ人材を育てることが目標です。(3)については、少人数教育を通じて、確 かな自信と達成感、成熟した主体性を学生に身に付けさせることをめざします。

三つの分科はそれぞれ複数のコースを擁し、互いに有機的に連関する合計18の個性的なコースが、学際的な知の空間を作りだしています。

超域文化科学分科は、「文化人類学」「表象文化論」「比較文学比較芸術」「現代思想」「学際日本文化論」「学際言語科学」「言語態・テクスト文化論」の 七つのコースで構成されます。この分科の最大の魅力は、さまざまな学問領域や地域的境界、文化ジャンルを超えたダイナミックで横断的な学際性・総合性で す。

地域文化研究分科を構成するのは、「イギリス研究」「フランス研究」「ドイツ研究」「ロシア東欧研究」「イタリア地中海研究」「北アメリカ研究」「ラテ ンアメリカ研究」「アジア・日本研究」「韓国朝鮮研究」の九コースです。世界各地域の特質を歴史学、政治学、経済学、社会学、哲学、文学、言語学などの研 究方法を使って多角的に学び、広い視野に立って全体を見渡せる人材の育成をめざします。

総合社会科学分科は、「相関社会科学」「国際関係論」の二コースから構成され、社会科学の総合的研究とその現実社会、国際社会への適用をめざします。従 来の社会科学の成果を尊重しつつも、その縦割り的な制約を超え、グローバル化する現代社会の諸問題に対してディシプリン横断的にアプローチしていきます。

それぞれのコースは多様な特色あるカリキュラムを組んでいますが、教養学科全体のカリキュラムの特徴としては、まず、サブメジャー・プログラム(副専 攻)制度が挙げられます。分科やコースの垣根を越え、学生が複数のコースを自ら主体的に関連づけて履修することを認めるもので、現在は地域文化研究学科で のみ実施されていますが、学生からの評価が高く、新体制では教養学科全体で可能になります。また国際化を念頭におき、外国語を重視しています。ほとんどの コースが2カ国語を必修とし、また主要言語では、前期課程で身につけた語学力をレベルアップし、さらに高度な運用能力を養成すべく、カリキュラムを工夫し ています。

また2012年秋より英語で講義が行なわれるコースが設置されますが、その後期課程「国際日本コース」は教養学科のもとに置かれます。

卒業生は、これまでの実績では、官公庁、国際機関、メディア、情報サービス、金融、商社、製造業などの分野における国内外のグローバルな諸機関、諸企業への就職、及び人文・社会科学系を中心とした関連する大学院へ進学し、各方面で活躍しています。

混迷した社会を切り開く、見識ある国際人をめざす学生のみなさんの挑戦を待っています。

(教養学科長)

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