HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報547号(2012年5月 2日)

教養学部報

第547号 外部公開

〈本郷各学部案内〉 薬学部:創薬に向けてのチームプレー

武田弘資

http://www.f.u-tokyo.ac.jp/

薬学部の玄関には、「大学院薬学系研究科・薬学部」の表札といっしょに、「創薬オープンイノベーションセンター」の表札が掲げられています。このセンターは、昨年、「生物機能制御化合物ライブラリー機構」という三年ほど前に発足した組織を改称して設立されたものです。その目的は生物の機能を調節する合成小分子化合物の開発で、約二〇万の化合物からなるライブラリーを基盤として新たな創薬を目指す、日本では初めての公的な機関です。

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左側の写真の左の建物が薬学系総合研究棟、右が薬学部本館、間は最近整備された花壇

近年、ともに高度に発展してきた生命科学と有機化学とを融合させることで、生体の機能をより特異的かつ高感度で調節できる合成小分子化合物の開発が可能になってきており、これまでにない有用性の高い疾患治療薬の創出につながることが期待されています。そのような化合物の開発における最も重要な基盤は、質、量ともに充実した化合物ライブラリーです。的確に構築した生物活性の評価系を用いて化合物ライブラリーをスクリーニングすることで、目的とする活性を有する「ヒット化合物」を迅速に見いだすことができます。

さらにその「ヒット化合物」をベースとして、タンパク質の構造解析や分子設計に関わる技術と知見、最先端の有機化学を駆使して、さらに高い特異性と活性を有する化合物へと最適化していきます。そのようにして得られた「リード化合物」は有望な薬の「種」としてさらに開発されていくことになります。

薬学部は、このような創薬への一連の流れに何らかの形で携わる研究室から構成されており、まさに創薬に向けたチームプレーが繰り広げられている場です。それに加えて、実際に使われている医薬品に関する研究などにも携わる臨床系の研究室までを含めると、まさに薬にかかわるすべてを網羅した学部ということになります。薬学部の学生にとっては、創薬オープンイノベーションセンターが同じ建物にあり、医学部附属病院もすぐ近くにあることから、創薬、そして薬を使った医療を学ぶにはとても良い環境に違いありません。

現在、薬学部には、基礎研究者の養成に主眼を置く四年制の薬科学科と、薬剤師の養成に主眼を置く六年制の薬学科の二つの学科が設置されています。薬科学科が九割、薬学科が一割の定員となっていますが、薬学部に進学してくる二年生の十月から三年生の間までは学科の振り分けはなく、すべての学生が共通のカリキュラムの下で、みっちりと有機化学、基礎生命科学、創薬科学を学びます。

薬学部では実習も充実しており、基礎的な実験から、各研究室で使われている最新の研究手法を取り入れた応用的な実験に至るまで、幅広く薬学に関わる研究手法を学ぶことができます。四年生では学科を問わず、すべての学生がいずれかの研究室に配属され、各自の卒業研究に取り組みます。六年制の学生は、病院や薬局での実務実習をこなしつつ、卒業研究にも取り組むことになります。

ですから、基礎研究者にしても薬剤師にしても、創薬研究への高度な知識と見識を身につけた人材が育成されることになります。そのような人材が活躍する場は、決して薬に直接関わる製薬企業や病院、大学薬学部だけにはとどまりません。創薬について学ぶことは、非常に幅広い研究分野の基礎を学ぶことになり、実際、本学薬学部出身の方々は驚くほど幅広い分野でご活躍されています。

居ながらにして様々な分野の研究とその創薬に向けての熱意を肌で実感できる薬学部に、足を踏み入れてみたらいかがでしょうか。

(細胞情報学教室)
 

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