HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報556号(2013年5月 1日)

教養学部報

第556号 外部公開

〈後期課程案内〉統合自然科学科案内

金子邦彦

2043年12月のインタビュー そして クイズ

http://www.integrated.c.u-tokyo.ac.jp/

556-G-6-3.jpg

――この度はN賞おめでとうございます。まず、先生の学生時代のことを伺いたいのですが。
そうね、一番思い出深いのは東大の統合自然科学科ね。入ったのは2013年だからもう30年になるわ。

――先生はたしか2期生ですよね。
そう、出来たばかりで活気があった。数理自然科学、物質基礎科学、統合生命科学、認知行動科学、のコースとスポーツ科学サブコースがあって。学生はそのコースで専門を究めるとともに他の学問も興味に応じて身につけられるの。今ではあたりまえのことだけど、当時は数学、物理、化学、生物に分かれて、ほかのことは知らないっていう学科が普通だったのよね。あまり信じられないかもしれないけど。

――先生は数理か物質かですか。
って思うでしょ。私は統合生命だったの。大学に入った頃は数学とか物理とか苦手でね。でも、量子力学とか統計力学とかが面白くなってきて。演習で基礎を鍛えられたのもよかったのかな。特に、数理生物とか、情報と計算の物理とかシステム生物とか、今ではスタンダードだけど当時では他にはない科目があって、数理や物理と生命とのつながりを考えるもとになった。もちろん生物の実験も徹底してやったわよ。

――当時それだけ身につけるのは大変だったのでは。
もちろん基本は自分の専門をまず伸ばすんだけど、ちょっと周辺も知っておくってことは専門を磨く上でも効果的なのよね。あと毎学期少人数ゼミがあって、先端的な本や論文を読んで、それでだんだん自分のやりたいことが見えてきた。そう、先生の人数が学生よりも多い、ってことも、これも今では常識だけど、当時は魅力だったわね。それぞれの分野ごとに専任家庭教師がいるみたいって言われてたのよ。

――えーと、なんだか学科案内パンフみたいになってきましたね。
ごめんなさい、でも今の研究の原点だったから。ちょうど、生命動態プログラムってものが始まって、その科目を履修したらご褒美で、卒研の結果の発表にアメリカの国際会議に行かせてもらったわ。

――ご主人もこの学科の同級生だったのですよね。
ええ、彼は逆に物理や化学が好きで、アミノ酸の名前20も覚えられるか、って感じで生物学が嫌いだったのに、突然目覚めちゃって。構成生物の講義だかのあとで、いつか無機物から生命システムを作ってみせるって宣言したのを今でも覚えてるわ。

――一ご夫婦で独立に受賞されたのは、たしか史上初ですよね。他にも同級生は多士済々ですね。
確率過程とグラフ理論を組み合わせた数学手法で量子重力の新潮流を創ったA君、フラクタル状につながったカーボン分子を合成していまやエネルギー問題の解決にもって言われているBさんに、物性物理のアイディアと蛍光イメージングを組み合わせて脳計測の革命を起こしたCさんとか。一見関係なさそうな分野を結びつけて、新しい道を開いちゃった人が多いわね。そうそう、統計力学を使った情報統合システムの会社を興してGoogleに張り合っているD君には物理も計算機演習もずいぶん教えてもらったな。この分野なら誰にきけばいいって同級生がいたのも強みだった。

――皆さん、そのまま大学院に?
駒場の広域科学専攻や数理研究科に進んだ人が多いわね。私は、「うちの大学院がベストだからこそ、よその大学院に行くことを薦める」って先生の言葉を真に受けてプリンストンに行ったのだけど。でもあれってファインマンが学生の時に先生から聞いた言葉の受け売りだったのよね。

――それで、統合自然科学科に進んだきっかけはなんだったのですか。
当時はやっぱり本郷に行きたいって学生もいたけどね。でも周囲に流されているようじゃ独創性のある研究なんてできないでしょ。それに、たしか学部報で、30年後に卒業生が学生時代を振り返るって不思議な学科紹介を読んだような気も……基礎的な科目と斬新な科目があとで有機的につながってきたことを思うと、なんだか30年後からタイムマシンで作られた学科だったようにも……。

――先生、あまり遠い目をなさらないでください、そろそろ受賞の研究のことについてお伺いしたいので。

***

さてクイズ:
(i)この先生の研究テーマは?
(ii)A,B,C,D各氏の卒研と大学院の研究室は?

答えのヒントは統合自然科ホームページ、学科ガイダンス(5/13、5/15)、オープンキャンパス(6/7)そして16,15、3、2、9号館、Advanced Research Laboratoryに。

(相関基礎科学系/相関自然/統合自然科学科長)

第556号一覧へ戻る  教養学部報TOPへ戻る

無断での転載、転用、複写を禁じます。

総合情報