HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報557号(2013年6月 5日)

教養学部報

第557号 外部公開

〈本郷各学部案内〉 教育・発達への学問的アプローチ ――教育学部への誘い

南風原朝和

http://www.p.u-tokyo.ac.jp/

557-H-3-2-01.jpg子どもが誕生して、親をはじめとするたくさんの人やいろいろな事物に接するなかで、言葉やさまざまなスキルを身に付けて成長発達していくことは、ごく当たり前のことのようですが、その仕組みを考えると不思議なことばかりです。その過程で、家庭や学校や社会による教育が多面的・複合的に影響を与え、個人差が広がるとともに、それらの個人がひとつの社会を作っていきます。それがどのような社会となるかによって、そこに生活する人々の幸福感や生きがい、さらには国のあり方まで、大きく変わってきます。

このように考えると、人が成長発達していく過程や、それに影響を与える教育のあり方が、個人にとって、そして社会全体にとっていかに重要であるかがわかるでしょう。

教育学部では、(1)成長発達の仕組みについて、実験や観察などの方法で実証的に迫っていくことや、(2)より良い教育の実践を探求すること、さらには、(3)そもそも「良い教育」とは何かを根源から問い直すこと、そして(4)教育が社会に与える影響や、逆に社会が教育に与える影響を検討することなど、教育・発達に関する広範な学問的アプローチを学ぶことができます。

おおまかに分類すると、このうち(1)のようなアプローチは教育心理学コースや身体教育学コースで、(2)は教育実践・政策学コースで、(3)は基礎教育学コースで、そして(4)は比較教育社会学コースで重点的に学ぶことができます。教育学部はこれら五つのコースが「総合教育科学科」という一つの学科に統合されており、どのコースに所属しても、広い視野から教育の諸問題を考えることができるように工夫されています。

557-H-3-2-02.jpg教育学部は、このように教育・発達への学問的アプローチを学ぶ学部であり、教員養成を主目的とした他大学の教育学部とは性質が異なります。しかし、教育学部で学んだことを中学校や高等学校の教育現場の実践に活かすことは大切なことであり、学校の先生への道も、卒業後の魅力ある進路の一つです。卒業生のその他の進路としては、大学院に進学してさらに研究を深め、大学の教員や研究職を目指す人や、官公庁、マスコミ・出版関係、教育・福祉関係、企業の人事・調査部門に就職する人が多いです。

大学院教育学研究科では、学部と共通するコースのほか、臨床心理学コース、大学経営・政策コース、生涯学習基盤経営コースが新たに加わって、総合教育科学専攻を構成しています。たとえば臨床心理学コースでは、心理的なつまづきやそれに対するケア、そしてそこからの立ち直りの過程などに関する学問的研究のほか、実践的な臨床心理士の養成も行なっています。また、大学院のもう一つの専攻として学校教育高度化専攻があり、そこでは特に学校教育に焦点をあて、附属中等教育学校とも協力して、教職の専門性、教育内容の開発、教育政策等について研究を深めることを目指しています。

教育は誰にとっても身近なものですが、研究の対象としては奥深く、きわめてチャレンジングな学問分野です。その学問分野に私たちと一緒にチャレンジしていく意欲のある皆さんが、教育学部を選んでくれることを期待しています。

(教育学部長)

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