HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報557号(2013年6月 5日)

教養学部報

第557号 外部公開

〈本郷各学部案内〉理学部 ゼロから価値を創り出す理学部

佐藤薫

http://www.s.u-tokyo.ac.jp

みなさんは、地球のスケールを実感したことはあるでしょうか? 私は砕氷船に乗って南極の地に着いたとき、氷に覆われた広大な海と、澄み切った青空と、遠くでかすかに動くペンギンやアザラシを見て、大自然の中での自分の存在の小ささを思い知りました。しかし、このスケール感は、ミクロからマクロまで何十桁にも亘る宇宙のほんの一部に対するものに過ぎません。そして、様々なスケールにおける構造や運動、変化の様子にはそうであることの必然性があるに違いないという確信が私たちにはあり、それを知りたいという欲求があります。理学はこのような自然の原理を探究する学問です。東京大学理学部には、自然科学のほぼすべての分野、すなわち、数学、情報科学、物理学、天文学、地球惑星物理学、地球惑星環境学、化学、生物化学、生物学、生物情報科学を担う十の学科があり、ゆるやかに連携しながら堅固な基礎教育と世界最先端の研究を行っています。

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研究室セミナー風景



理学は社会に深くかかわる学問でもあります。地震・津波・台風などの自然現象のメカニズム解明はもとより、生活を豊かにする技術や医療、食料の基盤ともなっています。二〇一一年三月の東日本大震災時には、科学者と社会の関わりについての議論や調査等の様々な取り組みが学科を超えて行われました。

理学部で養われるもっとも大きな力は「ゼロから価値を創り出す力」です。原理を理解し応用するだけでなく、本質を究め理論をつくるのも理学だからです。その手法には、紙と鉛筆だけでなく、最先端の装置による実験や観測、スーパーコンピュータによる数値計算、そして膨大なデータ解析など様々なものがあります。理学部は、社会の基盤を支えるだけでなく、頭脳を鍛え、社会に役立つ人間の育成を目指しています。

理学における新しいアイディアや研究成果は世界で共有されるべきものです。したがって、理学部は国際性豊かな学部です。世界に発信し、世界の中で議論し、時に論破するためには日常会話とは異なる英語力が必要となります。そのため、理学部では科学英語の教育に力を入れています。卒業研究の成果を国際学会で発表する人も多く、大学院の博士課程では多くの方が留学を経験します。また、UTRIPという海外の大学生を受け入れるサマースクールも行っています。

理学部生のほとんどは大学院修士課程に進学し、修士の約半分が博士課程に進学します。就職希望者はほぼ百%就職しており、男女の差もありません。キャリア支援室では就職・進学に関する個別相談や各種ガイダンス、企業説明会等、きめ細かい支援を行っています。

女子学生の割合は1割強です。理学部の女子学生や女性教員はどのように過ごしているでしょうか? 共通することは、研究や勉強をとても楽しんでいるということです。実は女性であるためにできないというのはほとんどありません。むしろ、理学は成果の客観評価が可能なのでフェアな学問といえます。理学部では女子学生が孤立しなくて済むように、女性同士がゆるやかにつながりを持てるような会合が、自主的にまた学部主催で行われています。

理学部は、自分の興味ある分野に真摯に取り組む人たちの集まりなので、根本的に明るく楽しい雰囲気があります。それでも家族や恋人のこと、研究室での人間関係など、一人で解決できない悩みを持つこともあるかもしれません。そのような時は専門スタッフのいる学生支援室を利用してください。理学部は学生を大切にする学部です。私たちはみなさんが自分の興味を育み、失敗を恐れず挑戦し、志を高く持って新しい理学を開拓していってくださることを願っています。

(地球惑星科学)

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