HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報565号(2014年5月14日)

教養学部報

第565号 外部公開

〈後期課程案内〉教養学科

アルヴィなほ子

http://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/academics/fas/dhss/
http://www.c.u-tokyo.ac.jp/guidance/depart01.html

駒場キャンパスには、文系の後期課程として教養学部教養学科があります。一九五一年の創設以来多くの人材を輩出した伝統ある学科ですが、二〇一一年に再編されました。急速にグローバル化する現代社会では、専門の高度化・細分化が進む一方で複数の領域を横断し統合する力が求められます。今年度の四年生は、そのような力を涵養する様々な学問的手法を組み込んだ新しいカリキュラムの一期生です。また、今年度から駒場の後期課程にはPEAK生も進学し、文系の新カリキュラムとPEAK後期のカリキュラムの両方が展開されています。「学際性」、「多様性」、「グローバル化」の観点から、教養学科は、文系の学生にとって大変魅力的な学びの場となっています。(多様性の中には女子学生も入ります。昨年度の卒業生の女子の比率は約五割でした。)

教養学科が目指しているのは、広い視野と専門性を併せ持ち、様々な学問領域を果敢に横断して問題を発見し創造的なアプローチができる人の育成です。そのために、教養学科には専門の根幹となる三つの分科とその分科の垣根を超えて学ぶためのシステムがあります。(海も超えたい学生のためには、教養学科では一九九五年に始めた独自の短期留学制度AIKOMの輝かしい実績があります。)

様々な領域の横断のためには、まず一つの専門領域に軸足を置かねばなりません。教養学科に進学すると、学生は三つの分科――超域文化科学分科、地域文化研究分科、総合社会科学分科――の一つを選び、その分科の中のコースに所属します。超域文化科学分科は、哲学から舞台芸術まで文字テクストを含む様々な媒体で表現される文化的現象を研究対象とします。伝統的な学問の枠組みを超えてあらゆるジャンルをダイナミックに把握し、古今東西の文化的事象に新たな視点から取り組みます。七つのコース、文化人類学、表象文化論、比較文化比較芸術、現代思想、学際日本文化論、学際言語科学、言語態・テクスト文化論があります。

地域文化研究分科は、一つの地域をトータルに複眼的に扱い、歴史、文化、政治的側面を横断しながら研究対象を多角的に検討します。グローバル化する社会の「他者」への理解と共生に不可欠である高度な外国語学習も特徴であり、コースによっては当該外国語で卒論を書きます。イギリス研究、フランス研究、ドイツ研究、ロシア東欧研究、イタリア地中海研究、北アメリカ研究、ラテンアメリカ研究、アジア・日本研究、韓国朝鮮研究の九つのコースがあります。

総合社会科学分科は、法学、政治学、経済学、統計学、社会学の全てを研究領域としています。現代社会が直面する諸問題の複雑化と相互関係の核心を見据えて問題と取り組むために、既存の枠を超えて社会科学の専門領域を横断し、理論、実証、実践のあらゆる面からアプローチします。相関社会科学と国際関係論の二つのコースがあります。

教養学科は一学年百名ちょっとで、学生は三つの分科の十八のコースに分かれて所属しているので、多くの授業は、他のコースから参加者がいても少人数クラスです。授業の準備や発表、議論や講義、卒論の執筆、友人や先輩や先生との交流を通して、専門分野に真剣に取り組む大変さと共に確かな手ごたえを得ることができます。専門を知れば知るほど、隣接諸分野へも目が開かれるでしょう。映画を研究したいが背景となる文化や政治も本格的に勉強したい、クリミアの歴史を専門としたいが国際紛争への介入、調停などについても専門知識が必要である等の事態が生じるかもしれません。教養学科では、このような場合、一定数の科目を他の分科から取るサブメジャー・プログラムを組むことができます。(サブメジャー・プログラムを選択しなくても、関心の幅が広がって自分の所属したコース以外のコースの授業を取るということも日常的にあります。)

「教養学科」という名称をリベラル・アーツの伝統に結びつけるなら、教養学科の「自由な(liberal)」学問とは、精神を広げることを目指す学問です。専門の軸足と他の領域へ知の越境をするフットワークを持つことは、創造的に/批判的に考える力を涵養し、自己形成をすることにつながります。その過程で解剖台の上のミシンと雨傘のような偶発的な(衝撃的な/美しい)出会いがあるかもしれません。見え隠れしていた未知の地平が拓け、世界が全く新しい姿を見せるかもしれません。真摯に自由な学問を追求し、果敢に領域を横断したいと思う学生の皆さんは、是非、教養学科に来て下さい。

(地域文化研究専攻/英語/教養学科長)

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