HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報573号(2015年4月 1日)

教養学部報

第573号 外部公開

〈辞典案内〉フランス語

松村剛

初心者は電子辞書ではなく紙媒体の辞書を使うべきであろう。基本的な語彙については項目全体を何度もよく読み、必要に応じて書き込みをしながら多様な用法を身につけることが望ましいからである。項目の前後で似た形の単語や同じグループに属す単語などに目を向けることも、紙の辞書のほうが容易にできるであろう。

学習用の仏和辞典としては、①『プログレッシブ仏和辞典』(大賀他編、小学館、2008年第2版、1650頁、3888円)と ②『プチ・ロワイヤル仏和辞典』(倉方他編、旺文社、2010年第4版、1792頁、CD付4320円)が優れている。フランス語を使って文章を作る場合に何に注意したらよいかという点に詳しい説明をつけている。

ある程度フランス語になじんできたら外国人向けに作られた仏仏辞典をよく読むとよい。③『ラルースやさしい仏仏辞典 Niveau 1』(Jean Dubois 編、駿河台出版社、1999年、917頁、3024円)は、基本的な単語について豊富な例文と詳細な解説がついており、それらを何度も読み頭に入れることで、何が自然な表現なのかが徐々に理解できるであろう。単語のレベルについての指示、同義語や反意語のニュアンスに関する解説なども貴重である。さらに進んだ段階では、フランス語を母語にしている人を対象に作られた ④ Le Petit Robert de la langue française 2015 (Alain Rey 編、Le Robert, 2014年、2880頁、59ユーロ)を使うとよい。③ほど基礎的な説明は載っていないが多様な語彙を理解するためには大いに役立つ。単語の語源、初出に関する簡単な指示が与えられている点も重宝する。フランス語をさらに歴史的、地理的な広がりで理解するには、25巻本の ⑤ Französisches Etymologisches Wörterbuch (Walther von Wartburg 編、Zbinden, 1922〜2002年)を使う必要がある。駒場図書館に備えてある。いわゆる「語源辞典」として素人が想像するものとは異なり、フランス語の起源から現代まで、標準語だけでなく地方語や方言も含めて多様な歴史を簡潔な仕方で提示している。これが使いこなせるようになれば一人前である。

(言語情報科学専攻/フランス語・イタリア語)
 

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