HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報584号(2016年6月 1日)

教養学部報

第584号 外部公開

GFD主催シンポジウム報告
Faculty Development and the Global University: A student-faculty vision of the future of higher education

笹山尚子

Global Faculty Development(GFD)は、2015年度に始動したばかりの取り組みで、東京大学駒場キャンパスにおいて日本語以外の言語で行われるプログラムの教育の質向上を目指し、教員・大学院生を対象に教育に関するサポートを提供しています。このGFDの記念すべき第1回目のシンポジウムが2016年1月30日に行われました。当日は、あいにくの雨にもかかわらず、北は北海道から南は沖縄まで、日本全国から約100名の参加がありました。シンポジウムは、①ファカルティ・ディベロップメント(以下、FD)の分野で著名な3名の先生方の基調講演、②グローバル・アンバサダーとして世界中の大学から選ばれた学生によるプレゼンテーション、③学生と教員によるパネルディスカッションの3部構成で行われました。

【第1部】

渡邊雄一郎副研究科長による開会のご挨拶のあと、Judith Miller先生(ニューヨーク大学アブダビ校Arts and Humanities学部長)に「高等教育の国際化とリベラルアーツ(一般教養教育)」についてご講演いただきました。Miller先生は、ご自身の体験談を通して、アラブ首長国連邦で西洋の教育スタイルを取り入れることの難しさとその成果についてお話しされました。続いて、カリフォルニア工科大学Center for Teaching, Learning, & OutreachディレクターであるCassandra Horii先生は、優れた大学教員育成のためには「研究と教育の架け橋」を築くことが大切であることを強調され、ご自身がカリフォルニア工科大学で取り組んでこられたFD活動についての実践例を共有してくださいました。最後に、NAFSA(アメリカを拠点とする国際教育交流推進団体)の会長であるFanta Aw先生は講演の中で、高等教育の国際化は教員や学生一人ひとりの努力に加え、大学側のサポートが重要な鍵になると話されました。来聴者が熱心に耳を傾ける姿が印象的で、質疑応答時間中には講演者と来聴者の積極的なやり取りもあり、とても有意義な学びの場となりました。

【第2部】

このシンポジウムの最もユニークな点ともいえるのが、日本国内外から15名の学生を招き、国際化する高等教育機関における「理想の教育」について彼らの意見を発表してもらったことでした。シンポジウム参加にあたっては、500を超える学生からの応募があり、その選考に際しては、英語圏以外の国で英語で実施されているプログラムに参加していること等を条件に、各自の教育経験をまとめた2分間のビデオを提出してもらいました。GFDに参加する教員がすべてのビデオを審査し、応募者の中から15名の学生をグローバル・アンバサダーとして選出しました。このグローバル・アンバサダーたちは、シンポジウム前日にワークショップに参加し、学生間での交流を深めるとともに、グループに分かれ、シンポジウムで披露する発表の準備を行いました。また、シンポジウム当日には、文化、教育・サポートに関するニーズ、キャリアについてグループごとに発表しました。学生目線で教育のグローバル化について議論した彼らの発表は、とても興味深く、今後のGFD活動にも大いに参考となるものでした。

【第3部】

シンポジウムの締めくくりは、基調講演者と学生たちに加え、グレゴリー・プール先生(同志社大学)と矢口祐人先生(東京大学)を交えてのパネルディスカッションでした。ここでも、グローバル・アンバサダーが大いに活躍してくれました。彼らが先生方に質問し、議論に積極的に参加することで、登壇者だけでなく、来聴者も巻き込んだ有意義な議論の場になりました。このセッションを通して、日本において英語でプログラムを提供している大学が、これまでどのような方策をとってきたかのかを学び、また今後の課題について話し合うことができました。シンポジウム後に行ったアンケートによると、このさまざまなステークホルダー(専門家、教員、学生等)が意見交換することができたパネルディスカッションがシンポジウムのハイライトであったという声が多く聞かれました。

私自身、今回のシンポジウムを通じて、高等教育についての議論を深めていく上で、教育活動のまさに核心をなす「学生」の声を聴くことの重要性を再確認しました。現状を踏まえ、学生が今何を必要としているのかを知ることで、効果的なFD活動を計画し、適切なサポートを提供していけるのではないかと感じました。また、このシンポジウムは国内外の大学でこれまでに行われてきたFD活動の例について学ぶよい機会でもあり、他部局、他大学と情報共有をしていくことの重要性を改めて学びました。GFDの活動は始まったばかりですが、これからも多言語でより良い教育を提供出来る環境作りを目指して、さまざまな活動を行っていく予定です。今度もGFD活動へのご支援をよろしくお願い致します。

(国際交流センター)

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