HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報584号(2016年6月 1日)

教養学部報

第584号 外部公開

FLY Program
平成27年度活動報告会・平成28年度交流会から

月脚達彦

毎年、大型連休明けの土曜日に開かれている「初年次長期自主活動プログラム(FLY Program)」の活動報告会が、今年も5月9日(土)に21KOMCEE Westのレクチャーホールで開催された。本プログラムは、学部教育の総合的改革の一環として平成二十五年度入学者から開始されているから、この日の報告会に臨んだ学生は、三期の修了生ということになる。会場では、三期の修了生とともに、早くから集まった数名の一期・二期の修了生が、それぞれが担当する司会進行の打ち合わせや、会場の受付・案内にあたっていた。

報告会は午前10時30分、プログラム修了生の司会のもと、担当理事の南風原朝和理事・副学長の開会の挨拶によって始まり、続いて五神真総長の挨拶があった。五神総長は、与えられた問題を解くのではなく、答えがあるかわからない問題を見つけるために挑戦する、という本プログラムに込められた東京大学の想いを再確認するとともに、20世紀に戦後復興などの目標をなしとげた日本が、戦後70年を経た21世紀の今日、解決のための明確な目的や答えを見出しにくい問題に挑まなければならなくなっている状況を挙げて、本プログラムに挑戦した学生たちへの期待の言葉を贈った。

3期の修了生4人は、3月の活動終了後にまとめた報告書、およびこの日のために用意したスライドをもとに、それぞれ15分の持ち時間で活動の目的と成果、活動を通じた自らの変化などについて報告した。4人の修了生の活動テーマを紹介すると、次のとおりである。

・「幼児教育の最先端を学ぶための世界一周の取材旅行」─アメリカ・イギリス・ドイツ・タイ・マレーシア・シンガポール・ベトナムでの先端的な幼稚園への訪問と園長・経営者・先生などへの取材、幼児教育研究者らへの取材。

・「いまの時代を考える~あの戦争は何を変え、何をもたらしたのか」─広島・長崎、沖縄など国内の戦跡や資料館の見学と学芸員・研究者・戦争経験者へのインタビュー、およびハワイ、韓国など海外の戦跡や資料館の見学とインタビュー。

・「演劇を中心にした芸術的教養、見聞の進化、拡大」─国内での高校演劇祭へのサポートスタッフとしての参加、自身の演劇の自主公演、ロンドンの演劇学校への通学と劇場での観劇、シェークスピアの生家などへの旅行。

・「ボランティアとバックパッカーを通して考える将来の自分の在り方」─エストニアの農場でのボランティア、ベルギーでの音楽祭設営のボランティア、ドイツでの建物修復のボランティア、およびバックパッカーとしてのヨーロッパ・アメリカ旅行。

プログラムへの参加を決める時点で興味や活動終了後の方向性が比較的はっきりしていたケースもあり、なかなか計画を固めきれずに何度か計画書を修正したケースもあり、それだけに活動報告のまとめ方も、一定の結論を導き出したものがあったり、活動を終えての想いや自分の変化が報告の主となったりと、それぞれのプログラムへの参加の目的や活動の形態によって特徴が現れたように思われる。いずれにしても、一年前の交流会での活動計画発表の様子を知る者としては、一年のあいだの成長を感ぜずにはいられなかった。

修了生の報告を受けて総括に立った中村尚推進委員会委員長も、まずは活動を通じた成長の跡を強調し、修了の祝福の言葉をかけた。中村委員長は、3期にはボランティアとバックパッカーによって自らを見つめなおすというオーソドックスな活動とともに、これまでにない分野での活動があったこと、そうして、大学も社会も多様性が重視されるなか、修了生は復学後の勉強のみならず、社会に出た後も本プログラムで積んだユニークな経験を活かしてほしいと述べて、報告会を締めくくった。

こうして午後12時10分、司会による閉会の宣言ののち、五神総長より4人の修了生それぞれに修了証が授与された。なお、報告会には、この4月に本プログラムに採用され、特別休学の手続をとったばかりの4期生8人が参加しており、午後1時からは場所をルヴェ・ソン・ヴェールに移して、こんどは平成28年度の交流会が開催された。交流会では、小川桂一郎教養学部長の開会挨拶ののち、4期の採用者が修了生や教職員との交流を行うとともに、活動計画を発表した。まだ荒削りなところがあるものの、計画書のブラッシュアップを経て、充実した活動をしてくれるだろう。FLY Program運営委員長として、活動を終えた3期生の1年間の成長をたたえるとともに、来年の大型連休明けの報告会で、一回り成長した4期生に再び会うことを、今から期待してやまない。

(FLY Program運営委員長/言語情報科学/韓国朝鮮語)

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