HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報589号(2017年1月 6日)

教養学部報

第589号 外部公開

駒場祭を振り返って

長谷川まゆ帆

第六七回駒場祭は平成二八年十一月二五日(金)〜二七日(日)に開催された。テーマは「めしあがれ」。駒場祭委員会作成の冊子によると「作り手の自信と受け手の期待が織りなす特別な雰囲気で駒場祭を表現しよう」との意味がこめられていた。前日に珍しく雪が舞い、日中の冷え込みが懸念されたが、最初の二日間は抜けるように澄んだ青い空、まさに秋晴れで風もなく、絶好のお祭り日和となった。来場者数は十二万六千人と、昨年の十三万、一昨年の十一万人と並んだ(数字は駒場祭委員会による)。最終日は午後三時頃から小雨がぱらついたが、連日、学内外の若者や学生、子連れの家族でにぎわい、大盛況のうちに幕を閉じた。

開催中、大きな事故もなく、けが人が一人も出なかったことが幸いであった。今年は十一月六日に明治神宮外苑でのアートイベント「東京デザインウィーク」で展示中の木製ジャングルジムが燃え、遊んでいた五歳の男の子が焼死するという痛ましい火災事故があり、これを受けて目黒消防署から火器の扱いと安全についての厳重な指導がなされ、前日二四日(木)には実際に立ち入り検査(安全指導)も行われた。駒場祭委員会も、屋台の見回り人員を例年よりも大幅に増員し、万全の体制を整えて臨んだ。学生委員会委員および学生支援課職員も事務部の協力を得て、例年のことながらキャンパスをABCと三つのブロックに分けて繰り返し巡回を行った。

催し物は学術企画、体験・展示企画、講演、公開講座など四六六件に及んだ。駒場祭委員会学術企画として数理科学研究科棟で行われた脳科学者の茂木健一郎氏の特別講演「真の知性とは何か、若者よ、疾走せよ」や、21Komcee West地下レクチャーホールでの公開講座─松村剛教授による「マザリナード集成」展の意義、前島志保准教授による大衆的婦人雑誌と出版革命、ロバート・キャンベル教授による占領期「銀座」の日本文学や川島真教授による中国の外交と東アジア情勢─が、多くの観客を集めた。また学生企画や研究室企画も多彩で、ロボット操縦体験やカエルとヒトiPS細胞の実物展示などどれも好評を博した。

この時期、キャンパスは見事な紅葉で一年で最も美しい季節である。そこにテントや売り子、仮装した学生たち、外来者があふれ、耳なれない楽器の音色やメロディ、呼び声や歌声がどこにいても聞こえてくる。テンポの速い音楽に合わせて踊るダンスパフォーマンスは躍動感があり、まぶしくもあった。ステージは「正門広場」「いちょう広場」「グランドフェスティバルステージ」のみならず、九○○番教室や各号館内の一部の教室も何らかの演奏や上演の会場となっている。銀杏並木でもテントの脇にピアノやドラムスがもちこまれていて、合唱団や軽音楽の路上ライブが出現。一号館、七号館、十一号館、十二号館、十三号館、21Komcee West & East、体育館などの主要な教室はほとんど展示や体験企画で埋めつくされている。屋台は屋台で多様で、牛串や焼き鳥、焼きそばやたこ焼きなどの定番のほか、おにぎり、餃子、わらびもち、お汁粉、から揚げ、中華まん、ケバブやボルシチ、タコス、クスクス入りスープと、まことに幅広い。随所で駒場祭委員とすれちがったが、男子も女子もみな同じ赤色の法被やジャンパーを着ている。その数は総勢一三三人と聞くが、よく見ると、第六五回や第六六回と書かれた法被もある。OBや先輩経験者が協力し経験を伝えているのである。携帯で連絡をとりながら忙しく歩き回る駒場祭委員たちの姿は頼もしくもあり、その表情は明るくさわやかだった。

今年度も酒類の取扱い・持込及び飲酒を全面禁止とし、全面禁煙となっていたが、違反者はいなかった。また終了後の機材や道具類の撤収、片付けやトイレその他の掃除、製図室を含む借用した教室、設備等々の原状復帰も無事、終了した。これもこの半年間よりよい駒場祭実現のために模索を重ねてきた駒場祭委員会の努力の賜物であり、企画に主催者として関わった学生たちの自覚の高さによる。と同時に、ここに至るまで何度も協議を重ね、安全面と衛生面に心を砕き、準備段階から愛情をもって見守りバックアップしてきた学生支援課の職員の方々、守衛さん、学生委員会の先生方など、関係者一同のご尽力のおかげである。心より感謝を申し上げたい。ほんとうにご苦労様でした。

(学生委員長/地域文化研究/歴史)

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