HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報592号(2017年5月 2日)

教養学部報

第592号 外部公開

<後期課程学部案内>教養学部(学際科学科)

学科長 増田 建

総合的な視点での人材育成
http://www.ids.c.u-tokyo.ac.jp/

現在の先端科学における問題の多くは正解のない問題です。実際、世界が直面している困難な問題の多くは、問題の所在が一見どこにあるのかさえ分からないようなものです。例えば、気候変動やエネルギー問題、地域間格差問題、科学技術や情報技術活用のあり方など、複雑かつ地球規模の問題に対応していくためには、一つの専門性だけでは不十分であり、多様な尺度からのアプローチが必要になります。すなわち、これらの複雑な問題の解決には、異なる学問分野を繋いで包み込む学際的な構成力、そして、それを基にした判断力が求められています。こうした既成の細分化された個別の学問領域によっては扱えない現代社会の重要な課題に対し、文理を問わず柔軟な思考と適切な方法論を用いて新しい課題に総合的な視点をもって対処できる人材の育成が、今まさに求められています。こうした要請に応えるべく、文理融合の教育研究を実現する新学科として誕生したのが学際科学科です。
学際科学科は、対象とアプローチの異なる五つの特色あるコースと一つのサブプログラムからなります。

科学技術論コース
「自然科学の基礎的な理解と人文社会科学に関する幅広い知識に基づき、科学技術が現代社会に提起している問題を深く検討し、積極的な提案をなしうる人材を養成して」います。すなわち、科学哲学、科学史、科学技術社会論等を修得したうえで、それらを統合して、現代の複雑な問題を学際的に解決できる人材の育成を目指しています。

地理・空間コース
地理学をはじめとする空間諸科学を基礎に、地理情報システム、フィールドワーク、空間デザインといった調査、分析ツールを修得させつつ、空間による社会の制約、社会による空間の構築・再編という視点から現代社会の諸問題を論理的に思考し、政策や計画立案といった実践的・応用的能力を備えた人材の育成を目指しています。

総合情報学コース
「コンピュータネットワークやプログラミングなどの情報科学・工学の知識を修得するとともに、ICT技術を駆使しながら、文理を横断した、さらには文化芸術までをも包含する総合的な情報学を体得することができます。すなわち、情報学の理論や方法論に立脚しつつも学際的に、これまでは理系の守備範囲外だった問題や事象にまで分析のメスを入れることのできる人材の育成」を目指しています。

広域システムコース
自然界が持つ階層性を多面的に捉え、広い視野と高度な専門性、政策立案能力などを身につけた人材を養成します。具体的には数理科学やシステム論的思考に基礎を置き、地球や太陽の成り立ちを理解するための基礎科学、生物多様性を理解するための生態学や系統学、進化学、さらに物質やエネルギーなどを理解するための基礎科学を修得します。また、本コースでは、さまざまな国際的課題の解決に必要な幅広い知識の習得が可能なカリキュラム構成になっており、国際的に活躍できる人材が育つことを期待しています。

国際環境学コース
環境という複雑な問題を多面的に研究する文理融合系の英語コースです。環境政策、倫理学、法学に加え、生物多様性保護、地球化学サイクル、地球物理学、最新の環境技術等を、先端科学および工学の観点から学びます。地球規模に拡がる環境問題に多様な視点からアプローチすることによって、持続可能な社会の構築と発展に寄与することを目標としたコースです。そのために、本コースでは自然科学と人文・社会科学をともにカバーする「文理融合」的なカリキュラムを提供し、両方の分野に通じた幅広い人材の育成を目指しています。

進化学コース(サブプログラム)
単に生物進化について学ぶのみではなく、基礎科学としての進化学や生態学を骨格として履修した上で、現代生命科学の重要テーマとなっているゲノムや遺伝子を、情報学を用いて解析を行う生物情報学、さらには人工生命理論を含んだ複雑系科学に至るまで、学問的な広がりをもった学際性の高い教育を目指しています。
学際科学科では、その特色を理解し、分野を横断する問題意識を共有するための高度教養科目を設けています。科目選択の自由度が高く、他コースやサブプログラム、文系の科目なども柔軟に取得することが出来ます。また、フィールドワークや実験、少人数による演習を多く取り入れることにより、学生のコミュニケーション能力を高め、柔軟で力強い人材を養成しています。卒業研究も重視しており、所属するコース以外の教員からも指導を受けることができます。
卒業後の進路としては、まず大学院進学が挙げられます。本学科のような分野では、修士課程における研究が有意義であり、修士課程までの研鑽が通常広く望まれています。また、科学・技術に関する広い見識と基本的素養を活かして、社会で活躍する実務的専門家への道があります。その場合、製造業のみならず、官公庁、商社、ジャーナリズム、国際機関等の計画・企画・調整部門で、問題発見の能力と分析力にその真価を発揮しています。そして、大学院修了後、学際的領域における研究者やプロジェクトリーダーなどの高度な実務的専門家への道があります。通常の研究・教育機関の他に、シンクタンク等の総合調査機関においても高い評価を得ています。
新しい領域を意欲的に切り開こうとするチャレンジ精神旺盛な学生が学際科学科の扉を叩いてくれるのを期待しています。

(学際科学科長/広域システム科学/生物)

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