HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報592号(2017年5月 2日)

教養学部報

第592号 外部公開

<後期課程学部案内>教育学部

学部長 小玉重夫

東京大学の未来を先取りする学部
http://www.p.u-tokyo.ac.jp/

十八歳選挙権によって新しい段階に入った日本の教育
選挙権年齢を「十八歳以上」に引き下げる改正公職選挙法が、二〇一五年六月に成立し、二〇一六年夏の参議院議員選挙から十八歳以上による投票が実現しました。十八歳選挙権の実現は日本の政治史上きわめて大きな制度変更であるだけでなく、戦後の教育においても、大きなターニングポイントとなるものです。一九六九年以降、日本の高校生は文部省(当時)によって政治活動を禁じられてきましたが、十八歳選挙権の実現を契機に、二〇一五年に文部科学省はその禁止を解除し、高校生が政治と直接向き合う時代に突入したのです。
新入生の皆さんの多くは、まさにこの、十八歳選挙権を行使した最初の世代となります。十八歳選挙権の時代を担うフロントランナーとして、社会や政治に積極的に参加していって欲しいと思います。
東京大学教育学部でも、このような十八歳選挙権によって新しい段階に入った日本の教育を正面から見すえ、そこに横たわる課題と今後の展望を明らかにするために、多様な方法からアプローチしています。そして、東京大学が日本の教育改革おいて先導的な役割を果たせるように、ビジョンと指針を示したいと考えています。以下ではそのために教育学部が特に重視していることを二つ述べたいと思います。一つは附属中等教育学校との連携であり、もう一つは国際交流です。

附属中等教育学校との連携
東京大学教育学部には、附属中等教育学校(以下、東大附属と表記)があります。東大附属は、一九四八年に旧制の東京高校を改組して創設され、その二年後の一九五〇年に教育学部が誕生しました。つまり、東大附属は教育学部よりも長い歴史を有し、東大に教育学部をつくる重要なきっかけをつくった学校です。以来、同校は教育学部の研究と教育を育て、支えてきました。東大附属の特徴は、卒業のための必修科目として卒業研究を生徒全員に課し、高校生が探究的な研究を完成させて卒業することをめざしている点です。このような東大附属の取り組みは、大学入試や学習指導要領が大きく変わる二〇二〇年代へ向けて、日本の教育を牽引する役割を果たそうとしており、二〇一六年度からは文部科学省の研究開発学校に指定され、十八歳選挙権の時代にふさわしいディープ・アクティブラーニングを通じた「探究的市民」の育成に取り組んでいます。教育学部では、そうした東大附属の取り組みを全面的に支援し、附属学校と一体となった研究と教育の推進をめざしています。

ストックホルム大学との交流
十八歳選挙権の実現やセンター試験の廃止など日本の教育が大きく転換しているなかで、その進むべき道を考えるうえで一つの重要な参照点になるのが、北欧の教育です。OECD(経済協力開発機構)が実施している国際学習到達度調査(PISA)でフィンランドが高い成果をあげ、日本の教育界にショックを与えたこと(PISAショック)は記憶に新しいところです。教育学部ではそうした点などをふまえて、スウェーデンのストックホルム大学と学術交流協定を締結し、毎年、交換留学生を派遣しています。また、合同の国際セミナーを定期的に開催し、学生や院生が交流を深めています。今年(二〇一七年)の二月にストックホルムで行われた国際セミナーは、東大とストックホルム大学に加えてフィンランドのユバスキュラ大学も参加し、三大学の院生と学生が研究発表を行い、議論をしました。
このように、教育学部に進学すると、ストックホルム大学への交換留学が可能となるだけでなく、ストックホルム大学・東京大学・ユバスキュラ大学共同国際セミナーなどにも参加することができ、グローバルな視野から研究を深めることができます。

東京大学の未来を先取りする学部に
教育学部・教育学研究科の学生の男女比は、学部、大学院共に、ほぼ男女半々で、東京大学のなかで、もっとも女性の比率の高い学部です。また、教員の女性比率も、東大の中で最も高くなっています。この点でも、教育学部は東大がめざす未来へ向けて、その一歩先を行っていると言えるでしょう。
東京大学の皆さんは、教育学部や教育学研究科に進学する以外にも、教師になるための教員免許を取得する課程を受ける際に、教育学部の研究と教育に触れる機会があります。

教育学部の建物は、本郷キャンパスの赤門を入って左手すぐのところにあります。この三月に建物の耐震補強改修工事が完成し、大幅にリニューアルされました。赤門の近くに来た際には、ぜひいちど、教育学部を訪れてみて下さい。

(教育学研究科長/教育学部長)


東大附属の生徒たちと五神総長(2015年撮影、『2016教育学研究科・教育学部案内』から転載)
2017年2月にストックホルム大学で開催された、ストックホルム大学・東京大学・ユバスキュラ大学共同国際セミナーの集合写真

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