HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報607号(2019年2月 1日)

教養学部報

第607号 外部公開

<時に沿って>〜守→破離〜

山田一斗

二〇一八年九月一日付で大学院総合文化研究科に着任しました助教の山田一斗と申します。所属は広域科学専攻相関基礎科学系増田研究室です。簡単に自己紹介させていただきます。私は生まれも育ちも大阪で、年齢と同じく二十七年間大阪に住んでいました。なので、初めての東京暮らしの研究生活となります。新しい研究室のこれまで使ったことのない装置を見て興奮し、今後どのような研究計画を立てようか、現在妄想を膨らませている段階です。
私は、学生の各課程を違う研究室で過ごしました。学部は、近畿大学の理工学部遺伝子工学研究室にて、タンパク質変異体による立体構造安定性への寄与を評価していました。修士課程では、京都大学の化学研究所分子集合体研究室にて、有機半導体が凝集した薄膜を対象に、その凝集形態が与える電子構造への寄与を調べていました。博士課程では、京都大学の理学研究科分子分光学研究室にて、パルスレーザーを用いて、有機固体の集合形態と光応答ダイナミクスの相関について研究していました。違う研究室を通じて、多くのことを得ることができました。一つは、どの分野でも研究の考え方の根幹は同じであること、また、多様な研究分野とのコミュニケーションにより思考範囲の制約が少なくなること、なにより、多くの恩師に出会えることでした。だれでも研究室のボスの考え方に似てくる、時には口癖さえも似てくる経験があると思います。師匠たちから学んだ研究の姿勢が、今の私の糧になっています。
そして、今回は四回目の研究室になります。しかし、今回は今までと大きく違う点は、学生ではなく、先生(師)という立場に変わりました。そのため、より一層、研究者・教育者という自覚をもって取り組もうと思います。私は、学生の間は、単に最先端の未開拓の問題を解決する研究を行うだけでなく、科学の考え方や技術を習得し、研究者としての型を学ぶ場、いわゆる「守破離」でいう型を守る─「守」の部分と考えています。守破離とは、茶道や武術、芸術における師弟関係の在り方からきた言葉だそうですが、研究でも同じことがいえると思います。新たな学術分野の開拓や他分野の融合とは、これまで各研究室で学んできた型の中で重要なものを残し、これまでの型を破り、さらに離れた境地に達することであり、この過程をできることが、研究者としての自立だと考えています。
今所属する研究室にて、これまでの経験を活かし、新たな分野を開拓することが今の目標です。副題は、今の私の位置づけを表現しました。まだまだスタートを切ったかわからないほどの状態で、未熟な私ですが、今後、「破」と「離」に到達できるように精進してまいります。どうぞよろしくお願いいたします。自己紹介というより所信表明のようになってしまいましたが、ご高覧いただきありがとうございました。

(相関基礎科学/化学)

第607号一覧へ戻る  教養学部報TOPへ戻る

無断での転載、転用、複写を禁じます。

総合情報