HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報609号(2019年5月 8日)

教養学部報

第609号 外部公開

<後期課程案内> 教養学部 統合自然科学科

学科長 平岡秀一

進路選択のポイント
http://www.integrated.c.u-tokyo.ac.jp/

みなさんは将来どういう仕事に就きたいですか?大学に入ったばかりで、そんな先のことは、まだわからない、という人もいるかもしれません。また、具体的に詳しくはわからないけれども、世の中に役に立つことや、人助けになる何かに携わりたいという人も多いでしょう。そのために、世の中に直結する研究を思い浮かべるかもしれませんが、一見関わりが薄いと思われる基礎研究も大きく貢献していて、基礎研究における意外な発見が発端となって、今では身近で必要不可欠な技術となってることもあります。このような従来の枠にとらわれない、意外な発見こそが、世の中で本当に役に立つものとなったら素晴らしいですね。こういう発見には、もちろん偶然も一つの要因ですが、これに加えて偶然を引き出し、大切に拾いあげるために、広い興味を涵養する環境が大切です。統合自然科学科は基礎研究に軸足を置く分野の大きく異なる四つのコースと一つのサブコースから構成された、東京大学の中でもユニークな学科です。学科の学生の中には、興味のある一つの分野を中心にその周辺まで学ぶ人や、一見関わりが薄そうな複数の分野に興味を持ち、コースをまたいでこれらを学ぶ人もいます。いずれの場合も、コース間の垣根が低いために、否応がなしに、広い分野に触れることになります。平成二十九、三十年度に当学科から「東京大学総長大賞」受賞者が選出され、このような理念が形となって現れたことに喜ぶと共に、この理念の大切さを再認識しています。それでは、このような教育を支える各コースの特色を紹介します。
数理自然科学コース
数理自然科学コースでは、様々な数理的概念の理解を深めるとともに、広く自然現象の背後にある数理的構造を学びます。そして、自然科学を統合的に理解しようとする動機のもとで学んだ高度な数理的考えや手法を様々な分野に生かせるようにします。例えば、熟成した研究分野が対象としないような現象に対しても、柔軟に立ち向かえるような基礎知識を身につけることができます。
物質基礎科学コース
様々な階層の物質の物理学あるいは化学を、それぞれ個人の志向に応じて、深く、且つ広く学べ、現代のニーズに対応できる専門性を深めるのが目的です。従来の物性物理学、原子核物理学、素粒子物理学、物理化学、有機化学、無機化学、超分子化学などの分野をカバーする教育プログラムに加えて、領域横断的な科目が用意されており、新時代をリードするユニークな人材を育てることができます。
統合生命科学コース
統合自然科学コースでは、分子、オルガネラ、細胞、組織、個体における生命の成り立ちを階層や生物種を横断して理解し、さらにそれらを統合する生命システムの成り立ちを理解することで、生命科学のフロンティアを開拓できる人材を育成します。特に、DNAから微生物、植物や人間まで多くの階層を統合的に学ぶことで生命の本質に迫り、新しい概念を産み出すことを目指しています。その理解と異分野との融合で新たなバイオ素材を開発する生命科学の新しい応用研究も進められています。
認知行動科学コース
本コースは、理系カルチャーに半身を置きつつ心理学の人文的問題全般を扱い、二十一世紀型の心の学びの場を提供します。心の働きを統合的に把握するとともに、発生と適応の観点からも学びます。文科、理科生が半々である特徴を生かし、予備知識の多少によらず心の実証研究の本質が自然にわかるような教育研究を展開します。小人数で心理学実験法と実践を学び、最先端の手法を身に付けることができます。
スポーツ科学サブコース
スポーツ科学サブコースは、東京大学の中で唯一、スポーツと身体運動及び健康に係る教育と研究を行います。統合自然科学科に進学した学生で、このコースに興味があれば、卒業研究をスポーツ科学で行うことがでます。主な研究テーマとしては、身体運動に係る運動生理・生科学、バイオメカニクス、トレーニング科学、健康スポーツ医学などがあります。
本学科は、科目選択の自由度が高く、他コースやサブプログラム、文科の科目も柔軟に取得できます。研究室の数は所属学生に比べて多く、一定の基準を満たせばコース外の研究室で卒業研究を実施できますので、広い選択肢があります。また、所属コース以外の科目やサブコース科目を二四単位以上取ると「副専攻」を取得でき、実際、毎年多くの学生が「副専攻」を取得して卒業しています。
卒業生は、駒場(総合文化研究科)や本郷の大学院への進学者が多く、最終的には大学教員や公的機関の研究者、官公庁の専門職をはじめ、製造・金融・商社・コンサルタント・情報通信・製薬・マスコミ・出版など各種企業に就職し、多彩な活動をしています。
以上、統合自然科学科と各コースについて紹介しましたが、この紙面で全てを語れるものではありません。統合自然科学科の教育理念やコースの内容に興味をもった方は、是非、関係のある教員がこの駒場キャンパスにいますので、遠慮なく気軽に話しかけてみてください。今では駒場で恒例の、昼休みに開かれるランチョンセミナーもあります。この続きの楽しい話を聞けるはずです。

(統合自然科学科長/相関基礎科学/化学)

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