HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報609号(2019年5月 8日)

教養学部報

第609号 外部公開

<後期課程案内> 経済学部

経済学研究科長・経済学部長 渡辺 努

経済学部への招待
http://www.e.u-tokyo.ac.jp/

経済学は現代社会を成り立たせる経済の仕組みや多くの人々が日々の糧を得る企業活動、さらに金融などを中心にして、経済・経営・金融に関連する幅広い分野を探求する学問です。
平成の三十年間を振り返ると、バブル崩壊、人口構成の変化、ICTやAIなど急速な技術進歩を背景として、内外の経済環境が大きく変化する中で、日本経済は長期にわたる停滞を余儀なくされました。ここ数年は雇用環境が幾分改善するなど明るい面も見えていますが、財政、社会保障、金融、デフレなど日本経済の構造問題は解決しておらず、それらは令和の時代に持ち越されようとしています。
こうした激動の時代を生き抜くには、社会や経済の変化を的確に把握し、その先を見通す力が不可欠です。社会や経済の変化の予兆を検知する能力といってもよいかもしれません。これは企業経営者や政策担当者などすべての人に当てはまります。ここで予兆と言っているのは、神がかり的なひらめきのことではありません。まだ起きてもいない現象を「予言」するのとも違います。予兆の検知とは、既に起きている現象をつぶさに調べることにより、その中から将来の事象と密接に関係するものを抽出する作業を指します。「ナマズが暴れると地震が起こる」と言うのは確かに予兆の一例ではありますが、そこには科学的な根拠は乏しく、そのため多くの人を説得できません。機械学習などの科学的な根拠をもって予兆をつかみ、それを多くの人に説明し、納得してもらえる人─これが激動の時代を生き抜くリーダーの姿です。
経済学や経営学は、こうした意味での予兆を検知するツールを提供する役割をもっています。ただし、そのツールは現時点では残念ながら完全ではありません。例えば、二〇〇八年の世界金融危機の勃発を経済学者が予測できなかったことに象徴されるように、不備が多々あります。人々が安全に、そして安心して暮らせる社会・経済の実現に向けて、経済学や経営学の研究者は知見の蓄積を一層加速させる努力をしています。
東京大学経済学部はこうした経済学・経営学の最先端の知見を学生に提供しています。経済学部には経済・経営・金融の三学科があります。細分化された専門分野相互の垣根を低くして、幅広い勉強ができるようにカリキュラムが工夫されています。経済学部に進学すると数理的・統計的アプローチだけでなく、歴史的・思弁的なアプローチまで幅広い授業科目を履修できます。
また経済学部は文系学部でありながら理系的要素をもっています。十年前より進学選択では全科類枠を採用しており、文科二類以外の文科三類、理科一類、理科二類からの進学者が約四分の一を占めています。経済学部へはどの科類からも進学可能ですので、理系の皆さんも是非、進学を検討していただきたいと思います。
ゼミや少人数講義が充実しているのも経済学部の教育の特色です。そこでは一方通行の大教室の授業では味わえない教員による密接な指導を受けることができます。それに加えて教員の監督およびティーチング・アシスタントの補助の下、論文検討会、企業の検討会、ディベート等を行い、レポートを提出することによって単位を認定するプロアクティブ・ラーニングセミナー(先回り学習)も行われています。
経済学部が近年、力を入れているのは「卓越プログラム」です。国際社会で皆さん方が活躍するためには今後、修士の学位をもつことは必須となります。学部時代から大学院との合併科目を計画的に履修することにより、一年間で修士課程を修了できる卓越プログラムが整備されており、毎年優秀な学生が挑戦しています。また経済学部は欧米の大学と深いつながりを有しており、多くの学生が海外での就学経験を積んでいます。
経済学部は本年四月一日に創立百周年を迎えました。創立以来の卒業生は約三四、〇〇〇人で、実業界、官界、学界など各界に数多くの有為な人材を供給してきました。経済学部の次の百年を築く人材を求めています。経済・経営・金融に関心のある人は是非進学先として経済学部を検討してください。

(経済学部長/マクロ経済学)

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