HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報609号(2019年5月 8日)

教養学部報

第609号 外部公開

<後期課程案内> 薬学部

薬学系研究科 副研究科長 船津高志

サイエンスをきわめて創薬を目指す
http://www.f.u-tokyo.ac.jp/

みなさんは「薬学部」と聞いて何を連想しますか?「お薬」や「薬剤師」を思い浮かべる方が多いと思います。実際、薬学部では創薬研究者を養成するための薬科学科と薬剤師を育成するための薬学科を設置しています。薬学部を進学選択する際には、薬科学科と薬学科を選ぶことはありません。三年生までは同一のカリキュラムで、薬学がカバーすべき広範な基礎科学の教育が行われます。薬学部では実習を重視しており、三年次の午後に一年間にわたって、少人数の班に分かれて、薬学研究に必要な有機化学、物理化学、生化学、薬理学などの基礎的手法を身につけます。
薬学部に進学した学生は、三年次を修了するころに二つの大きな選択をします。一つ目の選択は、薬科学科と薬学科の選択です。創薬研究者や生命科学研究者を目指す人は薬科学科に進学します。薬剤師を志望する人は薬学科に進学します。薬科学科と薬学科への配属は、学生の希望と面接試験によって決定します。従来、東京大学薬学部は研究者の養成を重視して来たので、薬科学科の定員は七十二名、薬学科の定員は八名となっています。薬科学科の修業年限は四年、薬学科の修業年限は六年となっている点が大きな違いです。
薬科学科に進んだ学生は、四年次に卒業実習を行い、約九十七%は大学院修士課程に進学します。修士課程修了者の進路を見ると約四十五%が博士後期課程(三年制)に進学し、就職する学生の約七十%が製薬等の企業や研究所に研究者として就職しています。また、博士後期課程修了者の進路を見ると、約四十%が大学や研究所の博士研究員となる他、就職者の大半が製薬企業や公的機関・民間の研究所で研究者として活躍しています。薬学部・薬学系研究科の研究のアクティビティーの高さをお解りいただけると思います。
薬学科に進んだ学生は、薬剤師資格を有する医療従事者、研究者になるための教育を受けます。具体的には、四年次には、薬剤師の実務実習(薬局実習と病院実習)を行うための事前学習を行い、四年次と五年次に二十二週間の実務実習をします。さらに、六年次には卒業実習を行います。薬学科の学生の進路を見ると、約二十%が薬学博士課程(四年制)に進学し、約六十%が官公庁や企業等に就職し、約二十%が病院や薬局等で薬剤師資格が必要な職に就いています。
さて、薬学部に進学した学生が三年次を修了するころに行う二つ目の大きな選択は、配属する研究室を決めることです。薬を作るためには、様々な学問分野の研究を総動員する必要があります。実際に薬を合成するためには、合成化学や反応化学、天然物化学の研究が必須です。また、薬を作る前提として、生命の仕組みを知り、病気になる原因を明らかする必要があります。このために、生化学、分子生物学、生理化学、発生学、遺伝学、免疫学からのアプローチが必要になります。薬と生体との相互作用を理解するためには、分析化学、物理化学、構造生物学、薬理学の研究が必要です。また、薬を体の狙った部位に到達させるためには、薬物動態学や製剤設計が必要です。このように薬学は、本来、生命科学の学際領域研究を行う学問であり、基礎から応用に至る広範囲な学問領域をカバーしています。その結果、薬学部・薬学研究科内の共同研究もさかんに行われています。さらに、他分野との融合による新たな学際領域の開拓にも取り組んでいます。生命科学に関係するこれほど広範囲な学問領域をカバーする学部は他に無いでしょう。三年次までに、薬学がカバーする広範な基礎科学の教育を受けた学生は、自分に適した学問領域と、その研究を行っている研究室を選択できるでしょう。いずれの学科の学生も、薬学部の全研究室の中から自分が配属を希望する研究室を選ぶことができます(ただし、定員を希望者が上回った場合は、学生同士で調整していただきます)。また、研究しているうちに興味が変わった場合でも、進学の節目で、研究科の中で全く違った研究領域(研究室)に異動することが可能です。
このように薬学部では創薬研究者と薬剤師を育成していますが、最大の強みはその基となる科学研究の質の高さでしょう。薬学部ホームページのトップに掲載されている「サイエンスをきわめて創薬を目指す!」という言葉が、薬学部の理念を象徴的に表しています。薬学部・薬学系研究科にはスター研究者が揃っています。そのアクティビティの高さを、薬学部見学会(二〇一九年五月十一日)などで具体的に紹介したいと思います。

(副研究科長/生物物理学・生体分析化学)

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