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最終更新日:2017.12.12

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トピックス 2015.09.14

【研究発表】固くて柔らかいオリガミ展開構造物

1.発表者:

エフゲニ・フィリポフ(イリノイ大学 アーバナシャンペーン校 工学部 大学院生)
舘 知宏(東京大学 大学院総合文化研究科広域科学専攻 助教 、JSTさきがけ研究員)
グラウシオ・ポーリーノ(ジョージア工科大学 工学部 教授)

2.発表のポイント:

◆折紙の数理を用いて、折り畳み・展開ができて非常に固い構造物を開発し、その構造的固さと変形の柔らかさが両立する構造的特性を解明した。
◆新規構造物は展開時に従来の100倍の固さを持ち、端部を駆動するだけで全体形状が展開する。
◆仮設建築物や可動式の屋根など建築分野での応用や、ロボット・アクチュエータ、航空宇宙等への応用が展望される。

3.発表概要:

折紙(注1)を応用するとシート材料をポータブルに折り畳んで収納し、必要に応じて三次元的に展開して用いる展開構造物へ応用できることが知られており、宇宙構造物などに応用されてきました。しかし従来の折紙構造物は、シート材料自体が曲がることで意図しない変形が容易におき、展開時に構造的な固さが得られないという制限がありました。
東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻の舘知宏助教、イリノイ大学アーバナシャンペーン校工学部エフゲニ・フィリポフ大学院生、ジョージア工科大学工学部グラウシオ・ポーリーノ教授の研究グループは、折紙に基づく変形可能な立体構造を組みあわせることで、展開時に従来の100倍の固さを持つ折り畳み構造を開発しました。この新しい折紙構造物は、変形可能な柔らかさと構造的な固さを両立するため、ロボットのアクチュエータ(注2)、航空宇宙分野の展開構造物、可動式の屋根や折り畳める建築などの応用に適切であるほか、マイクロスケールで実現すれば収縮膨張が可能で固さが自在にコントロール可能な材料などへ応用の展望があります。

4.発表内容:

シート材料を折紙のように折り畳むことで、ポータブルに収納し、必要に応じて三次元的に大きく展開できる構造物が作れます。このような構造物は、ミウラ折り(注3)を使ったソーラーパネルなど宇宙構造物などで応用例があります。しかし従来の折紙を使った展開構造物は、シート材料自体が曲がることで意図しない変形が容易におき、展開時に構造的な固さ(剛性)が得られないという制限がありました。また展開収縮を駆動するためにアクチュエータを配置すると、従来の展開メカニズムではアクチュエータ周辺での部分的な展開が起きてしまい、展開動作が意図通りに制御できないという課題がありました。大きな荷重のかかる可動式の建築や、動きの精密な制御が求められるロボットで折紙式の展開構造物を応用するためには、剛性の担保が課題でした。これまで、剛性を確保するために、厚みのある剛体パネルと蝶番で組み立てる方法が提案されていますが、全体の構造物の重量が増えること、体積が大きく折り畳んだときに十分にコンパクトにならないことが課題でした。

東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻の舘知宏助教、イリノイ大学アーバナシャンペーン校工学部エフゲニ・フィリポフ大学院生、ジョージア工科大学工学部グラウシオ・ポーリーノ教授の研究グループは、折紙に基づく変形可能な立体構造を組みあわせることで、展開時に従来の100倍の固さを持つ折り畳み構造を開発しました。本研究グループは、この新しい折紙構造物の性質を固有値解析(注4)によって明らかにしました。設計上の折り畳み変形を得るのに必要な力はなるべく小さく(剛性が低い)、それ以外の変形に対しては大きな力を必要とする(剛性が高い)構造が理想的な展開構造物となります。これを評価するために、構造の変形モードとその変形モードに対する剛性を比較することで解析しました。既存の折紙の筒型構造では、設計上の折り畳み変形に対する剛性と、意図しない変形に対する剛性の間に4倍程度の比しかありませんでしたが、筒型構造を特定の方法で組み合わせると設計上の折り畳みに対する剛性はほぼ変化しない一方、意図しない変形に対する剛性が400倍以上となることを確認しました(図1)。さらに歪みの分布と幾何的な解析を通して、薄くて容易に曲がるシートで構築しても面の曲げ変形が起きない構造となることを確認しました。この構造は部分的な展開が起きず、全体形状が一様に変形するため、端部を駆動すると変形が全体にすみやかに波及して展開が可能となります(図2)。この構造的性質は形状のみによって決まるため、さまざまなスケールでの応用が可能です。軽くて構造的な剛性が得られることと、一様で制御しやすい展開機構を持つことから、可動式の屋根(図3)や折り畳める建築、航空宇宙分野の展開構造物、ロボットのアクチュエータなどの応用に適切であるほか、マイクロスケールで実現すれば収縮・膨張し、固さがコントロール可能な材料(図4)などへ応用の展望があります。

本成果は、JSTさきがけ(舘助教)、アメリカ国立科学財団GROWプログラム・日本学術振興会外国人特別研究員事業(フィリポフ大学院生)、アメリカ国立科学財団グラントCMMI 1538830および、レイモンド・アレン・ジョーンズ・チェア(ポーリーノ教授)の支援を受けたものです。

5.発表雑誌:

雑誌名:「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」2015年9月(オンライン版)2015-09465R
論文タイトル:Origami tubes assembled into stiff, yet reconfigurable structures and metamaterials
著者:Evgueni T. Filipov, Tomohiro Tachi, Glaucio H. Paulino
DOI番号:10.1073/pnas.1509465112
アブストラクトURL:http://www.pnas.org/content/early/2015/09/04/1509465112.abstract

6.問い合わせ先:

東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻
助教 舘知宏
http://origami.c.u-tokyo.ac.jp/
tachi[at]idea.c.u-tokyo.ac.jp
メールアドレスの[at]は@に置き換えてください。

7.用語解説:

(注1)折紙:折紙(Origami)は、一枚の紙を折って様々な形状に造形をする遊戯・芸術を超え、折りの原理に基づいて、数学・科学・工学・デザインなどの領域を横断して発展する国際的な研究分野です。
(注2)アクチュエータ:駆動機構のこと。例えば油圧を加えることで一方向の伸展運動に変換するものがあります。
(注3)ミウラ折り:折り畳み展開できる折紙のパターンの一つ。東京大学三浦公亮名誉教授による研究で知られ、地図の折り畳みから宇宙構造物まで応用されています。
(注4)固有値解析:構造物の振動的な特性を分析する数値解析の一つで、無数にある変形パターン(モード)の可能性の中から、最も変形しやすいモードとそのモードの剛性を順に得る分析手法です。

8.添付資料:

以下の図および関連動画はこちらに掲載してあります。
http://origami.c.u-tokyo.ac.jp/ZipperTube/#images

20150914topics-fig01.jpg
図1:AおよびBは既存構造、Cは新規構造において、展開状態に対する固有値(剛性)の変化。グレーの領域の上下幅が広いことは、設計上の変形モードの剛性に対して意図しない変形の剛性が大きく、理想的な構造である事を表す。A、B、Cの構造の上位3つの固有モードと固有値=剛性(λ)をD、E、Fに示す。

20150914topics-fig02.jpg
図2:端部を駆動することで全体形状がすみやかに展開する様子

20150914topics-fig03.jpg
図3:折り畳み式屋根のイメージ。新規立体構造によって構造強度が期待できる。

20150914topics-fig04.jpg
図4:新規構造を繰り返した異方性を持つ材料。下段は3Dプリントによって得られた材料。

 

 

 

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