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最終更新日:2016.12.07

新任教員紹介

林 少陽(リン ショウヨウ)

所属 専攻超域文化科学専攻
学科教養学科
部会中国語
職名 教授
発令年月日 2017年6月16日

 

略歴 ■最終学歴
東京大学大学院・総合文化研究科
■学位
■前任職
東京大学大学院総合文化研究科 准教授

 

担当科目 ■前期課程
中国語
■後期課程
■大学院

 

研究活動 ■研究分野
表象文化論
■研究業績
  1. 『「修辞」という思想:章炳麟と漢字圏の言語論的批評理論』 東京:白澤社、2009年
  2. 『「文」與日本学術思想——漢字圈・1700-1990』(中国語) 北京:中央編訳出版社、2012年
  3. 王中忱、林少陽編『重審現代主義: 東亜的視角及漢字圏的提問』 北京:清華大学出版社、2013年
  4. 「漢字圏文脈のモダニズム文学――近代修辞批評系譜の中の横光利一の批評理論について」 『比較文学研究』92号「横光利一特集号」、東京大学比較文学会(2008年11月、47-64頁)。
  5. Lin Shaoyang,“Romanticism History and Aestheticized Politics: Yasuda Yojurō and the Discourse of ‘Overcoming the Modern’ in Wartime Japan.” Shisoshi Kenkyu(『思想史研究』) 13 (March 2011) 173-214
  6. 「「事件」としての『文学論』再発見:漱石『文学論』解読の思想史」 『文学』(“夏目漱石『文学論』特集”)、2012年5・6月号、岩波書店。
  7. Lin Shaoyang, “Japanese Postmodern Philosophy’s Turn to Historicity,” Journal of Japanese Philosophy (Initial Issue), The State University of New York Press, 2013, pp.111-136.
  8. 「黄侃の「文」解釈と章炳麟及びと劉師培との関連――黄侃の『文心彫龍札記』をめぐって」、『九葉読詩会』第4号、駒沢大学・九葉読詩会、2009年3月、54-81頁
  9. 「“勢”或“時勢”:一個重審現代與時間観之関係的概念」 、 『開放時代』、2010年8月号(第 218期)、広州:社会科学科学院、 ( 21-43頁)
  10. 「章炳麟と清末における「南」言説」、『華南研究』第1号、日本華南学会、2014年4月、47-72頁。

 

採用理由 林先生は、東京大学大学院総合文化研究科には平成25年10月に准教授として着任しました。着任前は香港城市大学准教授として活躍されており、博士号の学位は総合文化研究科において取得されていました。

着任後は、その専門である日中の文学・批評・思想研究を活かし、大学院では表象文化論コースにおいて、また学部では現代思想コースにおいて、学生への教授と指導を行っています。

さらに、平成25年度に始まったIHS(東京大学大学院博士課程教育リーディングプログラム「多文化共生・統合人間学プログラム」)にも、着任後すぐに参加し、平成27年夏からはそのなかのプロジェクト2「共生のプラクシス──市民社会と地域という思想」にある「東アジアユニット」の代表を務めました。

このように教育に情熱を注ぐとともに、同時に、精力的に研究を行ってきました。柄谷行人と章太炎に関する研究は、着任前からの一貫した関心のもと継続して行っておりましたが、前者に関しては、今年の夏に日本の出版社から『「贈与」と「帝国」論:柄谷行人について/通して』(仮題)として刊行が決まっており、また後者に関しても、中国の出版社からやはり今年の夏に『士、革命與“文”——章太炎與清季復古的新文化運動1903-1911 』(仮題)として出版される予定です。

論文も数多く刊行しており、共著に収められた論文8本、雑誌に収められた論文6本、そして刊行予定の論文も数本あります。

林先生の研究は、大きな枠組みで言えば、日本と中国の比較研究を、文学・批評・思想の領域において行い、それを日本語・中国語・英語によって発信するということになります。とはいえ、この比較研究は容易なものではありません。なぜなら、林先生が考察の主軸にしている柄谷行人と章太炎は、単なる日本の批評家や中国の思想家ではなく、アジアという文脈を循環する思想的な遺産として捉えられているからです。

『日本近代文学の起源』が中国語に翻訳されて以降、中国語圏では柄谷行人は大きな影響力を持つことになります。西脇順三郎のようなモダニズムをもともとの研究対象にしていた林先生にとって、柄谷は重要な参照項となりました。ところが、近年の柄谷の言説は、その帝国論や交換・贈与論に注目が払われるようになり、それが現在の中国における帝国論や経済論さらには共同体論と大きく共鳴するようになります。こうした言説の循環状況に、林先生は、単なる記述を越えた、いわば批評的な介入を行い、日本と中国さらには東アジアの来たるべき思想の枠組みを構築しようとしています。

章太炎に関しては、近年英語圏や中国語圏で一種の章太炎ブームが生じていますが、林先生はそれをリードしている学者の一人として知られています。章太炎は日本にも亡命したことのある、実に複雑な思想家で、中国の古典学や仏教の大家であると同時に、近代中国の革命とりわけ清朝の満州族を排する民族革命を鼓吹しました。林先生はこの複雑さを丁寧に読み解き、その思想的な可能性を探っていきます。数本の論文の中でも「章太炎“自主”的聯亞思想——『民報』時期章太炎與日本早期左翼運動及亞洲主義、日英同盟、印度獨立運動的關聯」は秀逸で、国家の「自主」の手前に、人の「自主」が必要で、その上でのアジア的連帯を章太炎が探ろうとしていたことを明らかにしています。それは、章太炎自身が、日本滞在の経験を通じて、アジアをその構想力に組み込んでいる以上、やはり今日の思想状況を念頭に置いた批評的な介入を通じた読解が必要であることを、わたしたちに告げています。

それ以外にも、日本近代文学・思想研究において、林先生は、岡倉天心、中村正直、横光利一、夏目漱石を取りあげて論じています。当然ではありますが、いずれの人をも、林先生は日中の比較研究という文脈に置き直し、その読解の可能性をできるだけ広げようとしているのです。

以上のように、林先生の研究は、アジアという文脈を循環する思想的な遺産に焦点を当て、それを批評的な仕方で、比較研究するというものです。こうしたアジア横断的な研究は、日本語・中国語・英語を駆使することではじめて可能になるもので、表象文化論という学問にとってはきわめて大きな貢献をなすものです。

林先生のお人柄については、その温厚さと篤実さ、そしてその明朗なリーダーシップは、すでによく知られているところです。また、学生指導も親身に行っていると側聞しております。学内委員としても、学生委員、総合研究棟管理運営委員、紀要委員などを担当され、熱心なお仕事ぶりも評価されるべきでしょう。

 

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