人間・地域・社会への柔軟な構想力、そして世界を切り開く真の教養人を育てる

学部長からのメッセージ

教養学科は、駒場キャンパスの文系教員が結集して教育・研究を担う、学際的で先進的な学科です。1951年、教養学部後期課程が創立されたとき、学際的で高度な教養教育を行うとともに、駒場から新しい学問を創出しようという気概のもとで誕生しました。以来多くのすぐれた人材を輩出し、教養学科で育ち発展したといわれる学問領域も生まれました。1998年に後期課程の文系は、超域文化科学科、地域文化研究学科、総合社会科学科という三学科体制になり、教養学科という名称はいったん消えましたが、その後の時代と社会の大きな変化により新しい対応を求められ、2011年に三学科を統合して一学科とし、その名称として再び教養学科の名を冠することになりました。教養学科は装いも新たに、次なる一歩を踏み出したのです。

新しい教養学科の教育理念には、三つの柱があります。1)高度な教養教育、2)学際的な専門性をみがく教育、3)学生とともにある教育です。総合的な視点と柔軟な理解力、国境や地域を自在に横断する姿勢、分野をまたぐ創造的な問題解決力、そして現代社会の要請に対応しうる先鋭な問題意識をもつ人材を育成していきます。カリキュラムの特徴としては、少人数講義、学生が複数のコースを主体的に関連づけて履修できる制度などがあります。また国際化を念頭に、外国語を重視し、すべてのコースが2カ国語を必修にしています。主要言語では、前期課程で身につけた語学力をレベルアップし、さらに高度な運用能力を養成すべく、カリキュラムを工夫しています。

本学科は、対象とアプローチが異なる三つの分科、「超域文化科学分科」、「地域文化研究分科」、「総合社会科学分科」から成り立っています。それぞれ複数のコースを擁し、互いに有機的に連関する合計18の個性的なコースが、特色あるカリキュラムを組み、学際的な知の空間を作りだしています。

卒業生は、これまでの実績では、官公庁、国際機関、メディア、情報サービス、金融、商社、製造業などの分野における国内外のグローバルな諸機関、諸企業への就職、及び人文・社会科学系を中心とした関連する大学院へ進学し、各方面で活躍しています。混迷した社会を切り開く、見識ある国際人をめざす学生のみなさんの挑戦を私たちは待っています。


南シベリアでの儀礼の参与観察風景

南シベリアでの儀礼の参与観察風景

狂言師野村萬斎氏による『伝統芸能論』の実習の様子

狂言師野村萬斎氏による『伝統芸能論』の実習の様子

超域文化科学分科

超域文化科学分科は、学問領域・地域的境界・文化ジャンルなどを超え、文化とことばをダイナミックにとらえる教育研究ユニットです。そのコースには「文化人類学」「表象文化論」「比較文学比較芸術」「現代思想」「学際日本文化論」「学際言語科学」「言語態・テクスト文化論」の7つがあり、いずれにおいても横断的な学際的・総合的アプローチを重視するのがこの分科の特色です。伝統儀礼や民族芸能から、異文化間の交流、情報化社会における芸術や文化、それらの根底にある言語活動や思想にいたるまで、研究領域は人類の文化の総体が対象になっています。それゆえ、各コースは自律しながらも、コース間の連携や融和を図りながら、活き活きとした教育研究を実践することを目標としています。


 

地域文化研究分科

世界のさまざまな地域を対象として、学際的かつ先進的な研究を展開しています。「イギリス研究」「フランス研究」「ドイツ研究」「ロシア東欧研究」「イタリア地中海研究」「北アメリカ研究」「ラテンアメリカ研究」「アジア・日本研究」「韓国朝鮮研究」の9コースに分かれ、対象地域の特質を歴史学、政治学、経済学、社会学、哲学、文学など多様な研究方法を使って多角的に学べるのが特徴です。卒業論文を指定された外国語で書くよう定めているコースもあります。コースは互いに密接に繋がり、分科としての一体性を高めています。毎年、グローバルな視野をもち、高度な外国語運用能力をそなえた卒業生を多数送りだしています。

ザンジバル島(タンザニア連合共和国)における稲の脱穀風景 ザンジバル島(タンザニア連合共和国)における稲の脱穀風景

トリノ歴史的中心街、イタリア統一150周年記念のインスタレーション

トリノ歴史的中心街、イタリア統一150周年記念のインスタレーション

アーンドラ・プラデーシュ州(インド)農村でのビィーディ・メイキング(葉巻タバコ製造)の様子

アーンドラ・プラデーシュ州(インド)農村でのビィーディ・メイキング(葉巻タバコ製造)の様子

ペルー、アヤクチョ地方の先住民の教会

ペルー、アヤクチョ地方の先住民の教会


 

総合社会科学分科

本分科は「相関社会科学」と「国際関係論」の2つのコースからなり、毎年35名前後の学生を受け入れています。相関社会科学コースは、社会科学の諸分野を横断的にふまえて、多様な社会現象を総体的に理解することを、国際関係論コースは、複雑な国家間の相互依存関係を視野に入れて、グローバル化が進行する現代社会を複合的に研究することを、それぞれの目標としています。両コースは従来の社会科学の成果を尊重しつつも、その縦割り的な制約を超え、現代が抱える課題や問題に総合的にアプローチする点で共通しています。学生は、分科進学後に、自分の関心や適性に応じてコースを選びます。本分科では全ての教員が両コースの教育を担い、学生は必要に応じて両コースの授業を履修し、論文などの指導やサポートを受けることができます。


相関社会科学の構造/国際関係論の「樹」


 

PEAK・国際日本研究コース

国際日本研究コース(International Program on Japan in East Asia)は、PEAK後期課程に属します。東アジアの文化と思想、東アジアの歴史と地域、および東アジアを対象にした国際社会分析という、3つのテーマに沿ってカリキュラムが組まれています。世界各地から集まった学生と一緒に英語による授業を受けることで、グローバルに活躍するための知性とスキルを養うことができます。しばしば海外から教授を招聘し、また学生の海外留学も推奨しています。