HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報535号(2011年1月 5日)

教養学部報

第535号 外部公開

第61回駒場祭について

山口泰

二〇一〇年度の駒場祭は十一月二一日から二三日の三日間で開催された。開催期間中の来場者数は、駒場祭委員会の公式集計によると、昨年度比で五%増の約九万九千人とのことである。このように盛況な学園祭を無事に成し遂げられたことについて、駒場祭委員会を始めとする学生の皆さんに対して、まずは喜びを述べたい。私自身は学生委員として、今年度の駒場祭に関わることになったので、その観点からコメントを書かせていただく。

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学生委員としての駒場祭への関心は、①(特に学外団体の)強引な勧誘、②盗難、③混雑等に伴う事故などであった。①の勧誘については、駒場祭自主規律でも「学外者や学外団体の意思に基づく企画・宣伝・勧誘行為を行わない」とうたわれており、実際にきちんと遵守されていたように思われる。しかし、まったくの学外者が駒場祭の会場に入り込んで勧誘などを行おうとした場面もあったと聞いている。これは招かれざる客のなせる業ではあるが、あまりに目に余るようであれば、今後は何らかの対策が必要になるかもしれない。

②の盗難については、特に屋外の模擬店テント周りが気になった。

テントの中に風が入らないように、正面以外の側面と背面の三面にシートを張るテントが多くある。このシートがテント地と同様の不透明のシートであることが多く、テントの裏側が見えなくなっており、ここに私物を置いているケースが問題である。周囲から見えない場所であり、見栄えは良いのだが、自分たちの目も届かなくなっている。会場を見回った際に「置引きに会うから後ろの荷物はテントの中に入れた方が良いよ」と声をかけたところ、「ここからでは裏が見えなくてどの荷物のことを言っているのかわかりません」という返事があったのには閉口した。

実際に、このような荷物を狙う置引き常習者が外部から来るらしく要注意である。これもまた招かれざる客に由来するものと言えるが、当事者の意識によって被害を防ぐことは可能である。

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③の事故については、大規模な演奏会や著名人を招いた講演会などでの混乱が懸念された。

特に今年度は初日に大きなイベントが多く、重点的に様子を見ることになった。おそらく最大の観客を集めたイベントは「はやぶさ」の講演会であったと思われるが、講演会開始予定時刻の三〇分前には、約五百名収容の会場が一杯になり入場停止となった。

主催者である駒場祭委員会の対応は優れており、観客の整理や札止めなど、すべてが整然と運営されていた。一方、その他の講演会の中には、若干の混乱が見られたものもあった。

学生支援課を始めとする職員の方々の協力なくしては、やや危なかったのではないかと感じさせられた。これは、ひとえに事前準備の差にあると感じざるをえない。人員整理を始めとする担当者の配置計画、標識などの道具類の用意、観客整理のシミュレーション、担当者全員での予行演習など、本番までになすべき準備はたくさんあるはずだが、それらの違いが現れたものと思われる。

学園祭は、得難い経験を得られる貴重な機会であると思うし、だからこそ大学の公式行事として認められているのだと個人的には理解している。しかし、学園祭に向けての参加態度や姿勢によって、その意義は大きく変わってくる。本番の一発勝負では、真に有意義な経験を積むことは難しく、事前準備やシミュレーション、予行演習などを経ることによってこそ、経験の価値はより高まる。音楽やパフォーマンス系のサークルであれば、演奏や演技の練習を繰り返して、当日に望むであろう。

しかるに、演奏や演技自体だけでなく、会場整備や資材の準備、観客整理なども、普段では得られない重要な経験である。駒場祭に限らず初めての試みや新たな経験の機会には、事前に時間をかけて多面的に検討し、十分な準備を心がけることが大切である。

来場者の目で見るならば、東京大学らしい企画の充実が求められているように感じられる。たとえば、模擬店や喫茶などの企画が多いが、別に駒場祭でなくとも構わないものであり、来場者の需要を超えた供給量になっていたように思われる。実際には、来場者の移動を妨げるという負の側面の方が強いくらいであった。大学ならではの企画、たとえば講演会や公開講座、学術企画、ガイドツァーなどは、来場者の満足度も高く好評を博しているように見受けられた。東京大学の学園祭らしく、大学の紹介や大学での活動を反映した企画の充実を望みたい。

準備と同様に後片付けも大切な作業である。駒場祭の翌日からは(正確には翌日の午後からだが)、通常の大学生活が行われる。普段どおりの学生生活を送るためにも、清掃と原状復帰は欠かせない。残念ながら、一部の企画には不完全なものや予定より遅れるものもあったようである。一方で、夜遅くまで片付けに励む人達もいた。なかには帰るのが遅れたところを、駒場祭委員会から要請されて予定外の後片付けをすることになった(不幸な?)人達もいたようである。

いずれにしても、清掃や原状復帰に向けて駒場祭委員を始めとする学生の皆さんの活動があったことも確かであり、翌日から平常状態に戻れたことは喜ぶべきであろう。最後に、学生支援課などの事務職員の方々が駒場祭期間を通じて、様々な形で支援してくださったことを指摘しておきたい。今年度の駒場祭をつつがなく終えることができたのは、この支援を抜きに語ることはできまい。学生委員会の一員として厚くお礼を述べ、このコメントの締めとしたい。

(広域システム科学系/情報図形/学生委員長)

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