HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報538号(2011年5月11日)

教養学部報

第538号 外部公開

〈後期課程案内〉 総合社会科学科
現代社会と世界の可能性を探求しよう――真の教養人、国際人をめざして――

古城佳子

三月に発生した東日本大震災により、東日本の人々や社会は特に大きな打撃を受けました。また、この 未曾有の震災の影響は限られた地域に留まらず、経済、政治、社会、文化、教育など日本社会の様々な面にこれまでにないほどの課題を突きつけています。ま た、世界経済への影響、エネルギー問題へ投げかけた課題、国際的な協力のあり方など国際社会へも大きな影響を与えました。この事態は、国内だけでなく国際 社会まで社会が複雑に結びついていることを改めて示しました。

 現代社会は、国内だけでなく国際的にも様々な分野が複合的に関連することにより成長し発展してきたのですが、それゆえに多くの問題を抱えています。複雑 な社会を確かに生きていくには、社会への積極的な働きかけが大切であるのはもちろん、社会の現実を具体的に分析し、その変化の方向を的確に捉え、より良い 問題解決の道筋を発見していくことが必要です。

 総合社会科学科は、「相関社会科学」と「国際関係論」 という個性的な二つの分科からなりますが、ともに社会諸科学を横断的に学ぶことを基本としています。現代社会が直面する諸問題は複合的で、国を超え、分野 を超える複雑さをもっており、その解明には総合的な研究が必要だからです。本学科のスタッフは、そのような研究に必要な理論と分析道具、そして考えるため のヒントを、多様な授業を通して皆さんにきめ細やかに提供する用意ができています。  「相関社会科学分科」の対象は広く「社会」であり、社会科学の総合的動員によって諸問題に対する考察と理解を深め、さまざまな社会現象を解明することを目 的としています。具体的な開講科目には、「相関社会科学基礎論」、「現代社会論」の選択必修科目に加えて、「比較社会思想」、「社会意識論」、「社会シス テム論」、「社会経済学」、「公法研究」、「公共政策」、「環境社会科学」や、さらに地域のフィールド調査を主体とする演習や実習まで、豊富なメニューが 用意され、「社会調査士」の資格を取得することも可能です。

 広範な学問領域と多様なアプローチによる問題探求という特徴を反映して、本分科の卒業生が、研究職から各省庁、地方自治体、マスコミ、多岐にわたる業種の企業まで、多様な分野に進路を選び、その第一線で活躍していることは、「相関社会科学科」ならではの実績といえます。

 「国際関係論分科」は、国際関係論という学問における日本の草分けであり、外務省をはじめとする各省庁に加え、国際機関や国際的企業にも数多くの人材を 輩出してきました。その伝統と実績は、激動の国際社会において活躍できる柔軟な思考と深い洞察力を備えた国際人の養成という側面も重視されてきた結果で す。カリキュラムをみると、「国際政治」、「国際経済」、「国際法」が必修科目として設定され、選択科目としては「国際関係史」、「国際機構」、「国際協 力」、「経済発展」、「国際環境関係」、「世界モデル」等が配置されています。しっかりとした「根」と「幹」(必修科目)を基礎に、「大枝」とさまざまな 方向へ「枝葉」(選択科目)を茂らせ、立派な花(卒業論文)を咲かせ、美しく豊かな「実」(人生)を実らせる、というのが本分科の基本理念です。

 本学科生は進学後にいずれか一つの分科を選択しなければなりませんが、私たちスタッフのあいだには垣根がなく、相互に選択科目を組み合わせるなど、両分 科の内容をさらに総合させて学ぶことも可能です。しかし、研究とは元来、孤独なものです。それは自由が何でありうるのかを自分自身の達成のうちに知ること でもあるでしょう。社会への深い関心と幅広い視野をもつと同時に、自らの頭で考えることのできる、成熟した探究心が求められます。既成の狭い枠のディシプ リンに満足せず、広く柔軟に社会科学を学び、世界にひらかれた現代社会の様態とその未知の可能性を探求しようとする、意欲ある皆さんの進学をお待ちしてい ます。

(国際社会科学専攻/国際関係)

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