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最終更新日:2019.04.12

教養学部報

第550号 外部公開

飲酒死亡事故を二度と起こさないために

長谷川壽一

去る七月二十八日(土)、本学部所属の学生が、隅田川花火大会の場所取りに参集したサークルの仲間と飲酒した後、体調を崩して死亡するという痛ましい事故が起こった。本学部として、大切な構成員を失った悲しみとともに、亡くなった学生の冥福を祈り、ご家族の皆様に深い哀悼の意をあらためて表したい。

仲間との飲酒が引き金になった死亡事故という点で、多くの教養学部の構成員は、一九八四年に五名の死亡者を出した山中湖水難事故を思い出すことだろう。実際、二つの事故には通じる点が少なくない。未成年者を含む飲酒、学外での無軌道行為と明白な社会的迷惑行為、事故後の学生諸君の対応の未熟さなどである。

事故の詳細については、現在、学部内に事故調査委員会を設置し調査を進めている。同時に、このような悲惨なことが二度と起こらぬよう再発防止に向けて方策を詰めているところである。

教養学部としては、これまでも未成年の飲酒禁止および過度の飲酒防止については、入学ガイダンスやポスターを通じて注意喚起を繰り返してきた。入学ガイダンスで全員で視聴するDVDでは、飲酒事故の悲惨さについてドラマ仕立てで警告を発している。また、学内での未成年飲酒や学内外での飲酒に伴う不祥事が生じた場合には、その都度、厳格に処分してきた。にもかかわらず、飲酒が引き金になるトラブルが絶えないことに、深刻な憂慮と危機感を感じている。

今回の事故の直接の引き金は、大瓶に入った焼酎をいかに豪快に呑み、酔いつぶれるかを見せ合う行為にあった。仲間が車座になってマイムマイムを歌い踊り、一区切りしたところで誰かが中央に出て好きなだけの量の酒を呑む、これを大瓶が何本も空になるまで繰り返す、という呑み方である。呑む者も呑む量も自主性に任されているということで、飲酒の強要はなかったとされるが、誰かは呑まねばならず、呑む者は賞賛され、場を盛り上げる。当然のごとく酔いつぶれる者が続出する。参加する当事者にしてみれば狂喜の宴かもしれないが、冷静な傍観者からすれば狂気の沙汰である。若者に特権的な仲間との絆を深める勢いづけ行為、あるいは酒の限界量を覚えるためのある種の通過儀礼、というにはあまりにも代償が大きい、きわめて危険な呑み方である。

イッキ呑みと呼ばれる強制行為を伴う呑み方でないにせよ、今回と類似した無軌道な呑み方が、サークルに限らず学生諸君の集まりの中で常態化しているのではないか。この点についても、目下、学部として、実情の把握に努めている。

教員も若い時分コンパで呑んで騒いでいただろうと言われれば、私自身を含め、その通りと答えざるを得ない。しかし、飲酒のルールやマナー、飲酒トラブルをめぐる社会的情勢は、喫煙と同様に、かつてとは比較にならないほど厳しくなっている。理性と学術の府である大学としては、入学生に対して、アルコールおよび飲酒行動に関する科学的知識と社会的責任について、より体系的な教育プログラムを施す必要があると考え、早期の導入を目指している。

今回の飲酒事故と関連して、もう一つ浮かび上がった大きな問題は、学部と課外活動の関係である。旧制第一高等学校の伝統を引き継ぐ教養学部は、学生諸君の自主性と自律性を信頼し、課外活動を意義あるものと捉えて、課外活動については出来るだけ介入しないという基本姿勢を維持してきた。新入生のオリエンテーションにしても、オリエンテーション委員会の自治を尊重し、限られた学事日程の中で少なからぬ時間を提供してきた。その他、サークル勧誘活動、学友会費の徴収、施設利用など多くの面で、学生支援という大義のもとで、過度の口出しを控え便宜供与を行ってきた。

しかし、こうした自主、自律を重んじる姿勢が、逆に、言うべきことを言わないという雰囲気を作り出してきたのではないか。一例として、女子だからという理由だけで東大生が入会できないサークルが多く存在することに対して、学部は伝聞では知りつつも口をつぐんできた。未成年が主催者の過半数を占める駒場祭での酒販売もしかりである。

誤解のないように付言すると、学部が課外活動に対する規制を強化すべきであると主張しているのではない。自由には必ず責任が伴うというごく自明のことを、課外活動を行うすべての学生諸君に改めて自覚して欲しいのである。

駒場祭の企画運営や学生会館や運動施設の自主管理など、学生諸君の活躍ぶりに日頃エールを送るものではあるが、今回のような不幸な事故を二度と起こさないためにも、学部からの課外活動に対する適切な関わり方について再考し、とりわけ飲酒ルールについては注意喚起を徹底していく決意である。

(付記)本稿脱稿後、大学本部武藤理事(学生担当)から教養学部長宛に、飲酒事故再発防止にむけて、学生サークルに対し適正な指導を行うようにという勧告文書が手交された。

(教養学部長)

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