HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報556号(2013年5月 1日)

教養学部報

第556号 外部公開

GENKI BOOKSを活用して下さい!

瀬地山角

556-B-2-2.jpg駒場図書館入り口のゲートのすぐ左手に、柱に沿って「GENKI BOOKS」というコーナーがあるのをご存じですか? 二〇一〇年に始まった、ジェンダー関係の本を集めるコーナーです。

Gender Equality No-nonsense Knowledge and Information の頭文字を取って、GENKI BOOKS と名付けられました。No-nonsense ってわかりますか?「遊びじゃない、真面目な」という意味です。NをNecessaryととっていただいてもかまいません。

このプロジェクトは、社会・社会思想史部会の山本泰先生の発案で、駒場図書館の職員のみなさんの援助と、駒場友の会からの資金提供を受けて、実現することになりました。ブルーとオレンジの明るいロゴは、駒場博物館の折茂克哉さんに作っていただいたものです。

一部は国立女性教育会館から本を借り受ける形になっており、これは三ヶ月単位で入れ替えをして、先方にお返しします。一方大半の本については、別途駒場友の会が多額の予算を出してくださることになり、大学図書館っぽくない本も入れられるようになりました。この場を借りて、関係のみなさま、特に図書購入等の支援をいただいた駒場友の会に厚く御礼を申し上げます。

プロジェクトの立ち上げに当たって、私はジェンダー論が専門ですので、新たに購入する本の選書を仰せつかることとなり、二〇一〇年に最初の選書が行われました。さらに今回その二度目の選書作業を終えて、ヴァージョンアップしたGENKI BOOKSがみなさんの前に並ぶことになりました。合計で四八三点になります。

今回だけでも約二〇〇冊が増えるので、その選書リストを作るのは簡単な作業ではありません。そこで大教室でやっているジェンダー論の授業でボランティアを募り、選書のお手伝いをお願いしました。結果として、五十嵐諒さん、沖田征吾さん、川口倖左さん、杉原勇磨さん、田中舞弥さん、水野日香梨さん、柳井優哉さん、矢野友理さんの八名の方が立候補して下さり、手弁当でいろいろな作業に関わっていただきました。

超初心者向けの料理の本、女性が安全にひとり暮らしをするためのハウツーもの、女子学生向けの就職情報、話題となった「東大生の性」に関する本、確実な避妊のためにカップルが知っておくべき知識を集めた本、家庭生活と調和した働き方を実現するための本などなど、大学の図書予算では買えないけれど、学生のみなさんの視点から見たときに、必要不可欠な情報を、学生さんたち自身の視点から集めた本が満載です。

特に選書をしながら感じたのは、やはり性の問題に関する学生さんたちの関心の高さです。それは同性愛や性同一性障害のようなセクシュアルマイノリティの問題であったり、多くの人が経験するようなセックスや避妊の問題であったり、性の商品化に関する問題であったり。テーマはさまざまなのですが、おそらく大学生になってはじめて、自分の問題として、もしくは自分のそばにいる人の問題として向きあうようになる事柄なのでしょう。

日本は高校までの性教育がろくになされていない社会です。モーニングアフターピルのような、意図しない妊娠を回避する最後の手段についても教えられていないというのは、危機的な事態だと考えています。

一方で大学生の間に性交経験率は急上昇します。女性はどうやって自分の体を守るか、自分の考える理想的な性のあり方とは何か、男性はどうやって相手の体や性的自己決定権を尊重するか。こうしたこと抜きに、大学生以降の恋愛関係はありえません。これは女子学生の比率の異常に低い東京大学にあっては、特に男子学生のみなさんに、自分の問題としてよく自覚してほしいことです。そうしたことに関する本も数多く所蔵されていますので、ぜひ手に取ってみて下さい。

もちろんジェンダー論は学問の一分野ですから、男が料理ができるようになるかどうかなど、研究とは関係ありません。そして駒場図書館には、学問的なジェンダー関係の本もたくさん所蔵されています。関心のある方はぜひそれらも参考にしてください。

ただ一方で、環境問題を学ぶ人が、自分のゴミの分別はしない、なんて許されないのと同様に「ジェンダー論を学んだけど、家事は何にもやりません」では何のために学んだのか、と問われてしまうでしょう。「就職で性差別があるのはわかったけど、そんな目に遭わない職業を選ぶには、具体的にどうすればいいの?」と悩む人もいるでしょう。そんな自分の生き方に関わる部分のお手伝いをしたい、というのが、このコーナーの一つの狙いです。

強い関心を寄せて下さった学生さんもいらっしゃり、コーナーにある本のタイトルを一覧できるように携帯でとっていたケースもあったそうです。ですが、そんなことをしなくてもOPACで簡単に検索をかけることができます。詳細検索の「文庫区分」でプルダウンメニューの中からGENKI BOOKSを選ぶと現在所蔵している四八三点の本の一覧を見ることができます。

女性と男性のよりよい関係のために、GENKI BOOKSをぜひ活用してください。

(国際社会科学専攻/中国語)

 

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