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教養学部報

第561号 外部公開

〈時に沿って〉 スポーツを「見る・する」から「科学する」へ

小笠原理紀

2013年10月に総合文化研究科に助教として着任しました。博士学位取得後、駒場に来る前には滋賀県草津市にある立命館大学総合科学技術研究機構に所属し、専門研究員として約一年半勤務していました。研究興味は、運動をすると骨格筋が機能的・形態的に変化する仕組みを探ることです。特に骨格筋量の変化に注目して、その変化の分子メカニズムの解明とその応用としてメカニズムにもとづいた効果的な運動方法や栄養摂取方法の開発を行っています。今回は、まだまだ短い研究人生ですが、少しだけ今日に至る過程を振り返ってみたいと思います。

幼稚園の頃からサッカーをしていた私は、サッカーはもちろんですが、その他のスポーツも全般的に好きで、多くのスポーツ好きの方々と同様にオリンピックなどが欧米で開催されると昼夜が逆転し寝不足になるタイプの人間です。大学では一番好きなスポーツの勉強がしたい、そして将来はスポーツに関わる仕事がしたいという思いで大学選びをしました。ただ、十数年前の当時はスポーツ系の学部と言えば体育教師を養成するための体育学部が主流で、教員養成を目的としないスポーツや健康に関する学部は少なく、純粋にスポーツを学びたかった私は大学選びに苦労しました。そんな時に早稲田大学にスポーツを学ぶことが出来る新設学部が出来るとわかり、自然と新設されたスポーツ科学部に一期生として入学することになりました。

大学に入学すると新鮮なことの連続でした。一番新鮮だったのは、様々なスポーツや身体動作が科学的に解析されていたということです。それまでの私のスポーツ経験の中で定量化されたものといえばせいぜい体力テストなどでの記録ぐらいでしたので、身体動作を力学的に解析したり、血液や筋肉を採取して生化学的な解析をしたりすることで競技力向上や健康づくりに結びつくような研究分野があることを知ったことはとても驚きでした。まだまだ現在でも経験則に基づいたことの多いスポーツ界ですが、スポーツを科学するということには大きな魅力を感じたことを今でも覚えています。当時研究者になりたいと思ったかは覚えていませんが、今思えばその時に魅力を感じたことが研究者になろうと思った原点かもしれません。

それからは早いもので、あっという間に学部、大学院(新領域創成科学研究科)、ポスドク時代が過ぎていきました。その過程でスポーツを科学する術を学びましたが、することを忘れた(正確にはすることを忘れかけて、飲み食いを覚えた)私は約10年間で約10kgの増量を果たしました。途中で多少の増減はありましたが、最近は安定してしまっている気がします。体育実技を担当する教員としては説得力がないので、もう一度することを思い出したいと思います。私を見かけたら運動しているかと声をかけてください。最後になりますが、先日2020年オリンピック東京開催が決定しました。スポーツはもちろんですが、日本そのものが注目されるかと思います。みなさん、一緒に盛り上げていきましょう。

(生命環境科学系/スポーツ・身体運動)
 

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