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最終更新日:2017.06.23

教養学部報

第568号 外部公開

駒場図書館トークイベント 「外国新聞で拓く世界――グローバル化と大学図書館の将来」

酒井哲哉

568-B-1-1.jpgいささか旧聞に属する事柄になってしまいましたが、四月二五日(金)午後六時、駒場図書館一階ラウンジにて、「トークイベント「外国新聞で拓く世界―グローバル化と大学図書館の将来」が、駒場図書館主催、総合図書館・柏図書館共催、附属図書館共同企画で行われました。このイベントは、大学図書館の国際化対応を推進するために、Library PressDisplayというデータベースに収録された世界百ヶ国以上の外国新聞を紙面大で読むことができる大型端末が、本年三月に、駒場・本郷・柏の東京大学の三つのキャンパス拠点図書館に設置されたことを記念して行われたものです(写真参照)。

このあと引き続き行われた柏・本郷での関連イベントに先駆け、駒場図書館が先陣を切ってこのイベントで、外国新聞で拓く世界を開示することになりました。

当日は、石田英敬・東京大学附属図書館副館長・東京大学大学院総合文化研究科教授(言語情報科学専攻)の司会のもとで、まずジャーナリズム論がご専門の林香里・東京大学大学院情報学環教授から、各国の国際報道の比較調査をもとに、日本のメディアの現状が解説されました。日本では、新聞・テレビなどメディアへの信頼度が高い反面、報道は国内向けの傾向が強く、その偏りをただすためにも、外国新聞を読む必要があることが示されました。

次に川島真・東京大学大学院総合文化研究科准教授(国際社会科学専攻)は、実際にデータベースを操作し各国新聞記事の横断検索をしながら、各国新聞報道の差異に注意を喚起しつつ、ご専門のアジア政治外交史の観点から、日本語で閉じた感覚が世界から見るとどのように映るのかを知ることで、自分が自明としていることを疑う一助として、外国新聞を活用する重要性を説かれました。最後に、ロバート・キャンベル・東京大学大学院総合文化研究科教授(超域文化科学専攻)は、ご自身の近代日本文学研究を踏まえて、古新聞史料を挙げながら、明治初年の岩倉使節団訪米の際の現地での報道を解説し、同時代の事柄だけではなく、時代を遡り歴史的に事象を捉える視点の大切さを論じられました。

このあとメディア論を専門とされる司会の石田教授から、外国新聞を読むことで空間的にも時間的にも視野が拓かれることの意味について各報告者に質問がなされたあとで、フロアからも挙手があり、活発な質疑応答がなされました。日本の新聞はこれからどのようなグローバル化対応をとっていくのか、各国の新聞論調のあいだで構成される言説空間を解釈する枠組をどのように作り上げていくのか、読み手のメディアの解析能力を養うにはどうずればよいか、といった鋭い質問がなされ、聴衆の関心の高さが窺われました。なおイベントの様子は、総合図書館、柏図書館の会場に同時中継され、それぞれ熱心な視聴者に恵まれました。この種のイベントとしては予測を上回る参加者で、盛況でした。

とかく大学主催のイベントは、「有難くはあるけれど、少々堅苦しくて……」、という印象をもたれがちですが、今回はそのような感じはなく、駒場キャンパスの開放性に富んだ明るさがよく表れたイベントだったと思います。ご報告いただいた先生のお一人からは、「ああいうカジュアルな感じはいいですね。街中で買い物客がふと足をとめて話を聞く、みたいな感じが新鮮でした」、とのお言葉を、後日いただきました。駒場図書館の雰囲気がよく伝わってくるコメントだ、と思いませんか。都会の雑踏の明るさのなかで、人と情報の交わりを深めていくことを、これからも課題としていきたいと思います。

(駒場図書館長/国際社会科学専攻/国際関係)

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