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最終更新日:2019.04.12

教養学部報

第591号 外部公開

オトナのコマメシ

堀田知佐

駒場人のごはん~コマメシ~この伝統的なannualコラムを今年なぜかお引き受けすることになってしまったが、普段誰もがマンネリ化しがちなゴハン処に少しスパイスを効かせられたらと思いながらつらつらとかいてみたい。

キャンパスⅠ内の①②の周りをぐるりと見渡すと、駒場東大前駅にむかって梅林門を抜けて駒下③~⑤、駅から坂を上がって⑥、右に折れ、日本民芸館や駒場公園、キャンパスⅡあたり⑦〜⑨、駒裏⑩〜⑪をめぐって裏門から再びキャンパスへ、と地図にナンバリングしたような幾つかの領域がある。皆さんが意外と散策したことがないところもあるだろう。

まずはカフェから。本好きにはたまらない⑨「BUN DAN cafe」、壁一面に棚から溢れ出んばかりに並んだ文庫本、行くたびに「鴎外」コーヒーを片手に読み進める、ひそやかな空間。新しい一冊との出会いがあるかも。男子には一寸物足りない量かもしれないが、文人にちなんだメニューもおもしろい。

お天気の日に少し普段の空間を離れてPC持参で一仕事したいときは⑩「BONDI」で。木のベンチに座ってオープンスペースでリラックス、リッチ感漂わせるサンドイッチと素朴なスープの味をお供にいいアイディアが浮かぶかもしれない。帰りに「roast works」でコーヒー豆を仕入れようか。

ゆっくりおしゃれで美味なランチを楽しみたいなら⑤「Pesca Bianca」は外せない。ちょっとした感動を味わえる。お客さんが来たときなんかはぴったりだ。少し砕けたエスニック調の⑧「Jam」も雰囲気満点、キャロットラペやリエット、パテなどが盛沢山のブランチセットはもちろん、スタンダードながら小洒落たお肉料理のランチも充実。夜なら体育館の横から裏に出て⑫「Peace oven」でラフにフレンチもいいだろう。レトロモダンなヴィンテージ風の隠れ家でなぜか落ち着く、手作りのパンもおいしい。キャンパスⅡに行ってみれば⑦「ape」、広い天井の開放的な空間で窯焼きピザが食べられる。よりきちっとまとめるなら⑪「Chambre avec vue」、ランチも意外なお手頃価格、季節ごとに仕入れた素材を使ったメニューも魅力だ。キャンパス内の②Lever son Verreや橄欖とともにあちこちからこられる奥様方の人気スポットだ。

お魚定食が食べたくなったら北門へ、⑪「うしお」のいいにおいが迎えてくれる。ちょっと足を延ばして、⑪「むぎ」に行っても外れはない。帰りに⑪「岬屋」によってお口直しに和菓子でも。洋菓子なら⑧「西光亭」、一九八二年創業の老舗だそうだ。

駒下にもいくつかお菓子屋さんが。④「IL BIGNE」、お店の前のシュークリームのイラストに足を止めた人も多いだろう。クリーム別添え、たしかにおいしい。一仕事をした自分へのご褒美にプチ贅沢もよかろう。その前に、行きすがら、LUCYのカレーの匂いに思わずトラップされてしまうかも。
⑧「Piatti」には日本ではめずらしい舶来モノのハムやチーズが充実。「Jam」の隣にあるパン屋さんでパンでも買って一緒にどうだろう、タルトやスコーンもあっておすすめだ。⑥「Le Ressort」もここと同じくすごいパンを焼いている、使うのはバターだけ。さすがに香り高い。ここまでが筆者がオトナになって開拓したコマメシたちだ。

XX年前のうら若き頃は、もちろんそんな余裕はあるわけがない。お昼時間は短いし、先立つものも言うまでもなし。①カフェテリア銀杏と若葉は、相変わらず込み合っているが遠い昔に比べれば驚きの充実ぶり。それすら並ぶ暇がないときは駒下に二、三軒あるお弁当屋さんに駆け込むか。「太田屋」はお肉屋さんのお弁当で学生に人気。そんな若者だってガッツリ食べたいときもある、三限がないときはさぁ駒下の定食屋さんへ。④「菱田屋」はいわずとしれたこの界隈の横綱格だ。お刺身からお肉まで充実メニューに充実量。はらぺこでいかないとおなかいっぱいで死にそうになるけどなぜか完食できてしまう。④「キッチン南海」のカツカレーと「満留賀」の大盛りそばはずっと変わらない伝統の存在。卒業して何年か後にふと駒場に訪れることがあったら思わず立ち寄ってしまうだろう。「中華井上」も然り、下町の台所的存在だ。

研究室御一行様が大勢でぞろぞろ駒下を徘徊するランチ難民になったとき必ず救ってくれるのがインドカレー③「MUSKAN」。夜にだれかと一杯、というときは「さわやか」や「英香」。駒場スタッフの常連も多いだろう、内緒話は気を付けて。

ラーメン好きの学生諸君には、いくつかチョイスがある。伝統的な⑫「山手ラーメン」や④「駒鉄」に加え、いつも行列の⑧「千里眼」、新しくできた⑫「一信」も。日本蕎麦派には、信号を渡ったところに意外や意外、人知れず一軒⑫「絆」あり。

駒場には知る人ぞ知る不思議空間も存在する。駒裏には喫茶Barの⑪「粋」。そのパンチの利いたカレーは、一度食べたら鮮明に記憶に残る。喫茶⑥「ドラ」もなかなかだ。夜に足を踏み入れるのはためらわれる人形の数々。

さて、この中に皆さんのお気に入りはあっただろうか、或いは新しいお気に入り候補は。ときとともにコマメシも進化・変貌する。あるお店は惜しまれつつ消え、また別の何かがそっと現れるだろう。毎日見ているはずの風景の一角である建物がなくなったとき、ここに何があったんだっけ、と思うことがある。だがなぜか街そのものがもつにおいや空気は変わらない。コマメシもそんな存在なのだろう、だがそれらの中にもいろいろな出来事やいい思い出と重なって忘れられない味は存在する。

(相関基礎科学/物理)

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