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最終更新日:2019.04.12

教養学部報

第593号 外部公開

<時に沿って>東大生の体力

笹井浩行

二〇一七年四月より身体運動科学分野に助教として着任しました笹井浩行と申します。二〇一〇年に筑波大学にて博士号を取得した後、アメリカ国立衛生研究所(NIH)にて四年間、筑波大学医学医療系にて三年間研究員として経験を積み、現在に至ります。専門分野は健康体力学、運動疫学、身体活動評価法です。教養学部では前期課程の身体運動・健康科学実習とPEAK科目の講義を一部担当します。

東京大学では教育活動に邁進するとともに、研究面では身体運動科学教室が昭和三十六年(一九六一年)から五十年以上に亘って蓄積してきた体力テストのデータを解析することが仕事のひとつになります。教養学部前期課程では科類に関わらず、一年生全員が入学直後と十二月に踏み台昇降、反復横跳び、腕立て伏せ、垂直跳びの四種目にて各学生の体力を把握しています。
現在に至るまで五十年以上に亘り同じ形式で情報が蓄積されているのは本当に素晴らしいことです。長年に亘る教室教員の先生方の途方もないご尽力と、学生(卒業生)のご協力の賜物に他なりません。この種のデータは世界を見渡しても極めて珍しく、学術的な価値も高いといえます。

果たして東大生の体力はここ五十年で落ちているのか、それとも良くなっているのか。同年代の全国値と比べて高いのか低いのか。まずはそのような大局的な視点で解析し、結果を社会に発信していきたいです。
これに加えて、一九六一年から現在に至るまでわが国及び東京大学に起きてきた様々な事象と体力との関係も観察したいと考えています。一九六四年に開催された東京オリンピック、一九六八〜一九六九年は学生紛争とそれに伴う入試の中止、一九八〇年代のバブル景気、その後の失われた十年、これらは東大生の体力や体格にどのように影響を及ぼしてきたのでしょうか。そんな観点からも解析をすすめます。

また、体育授業を受ける前(入学当初)と後(冬季)で体力は改善しているのか否かもこの大規模データから検証することができます。体育授業に積極的に参加していた学生ほど、より高い成果が得られているのでしょうか。このような研究は、大学体育の意義を再認識する上でも極めて貴重な資料となります。

さらに、卒業生課の協力のもと、卒業生の追跡調査をおこなうことも計画しています。学生時に体力が高かった人は中高齢期に病気に罹りにくいのか。はたまた社会的に成功しているのか。その他、様々な視点から検証を進める予定です。このような研究は青年期に体力を高く保つことの重要性を社会に示すことにつながるでしょう。

私自身、このような世界に類をみない壮大かつ貴重な研究に関わらせて頂けることに対して、深い感謝と楽しみな気持ちでいっぱいです。
この研究は在学生、卒業生、関係各位のご理解とご協力があってこそ実現するものです。本研究は本学倫理委員会の承認を経て適切に実施されます。ぜひとも、皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。

(生命環境科学/身体)

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