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最終更新日:2017.08.03

教養学部報

第594号 外部公開

<時に沿って>楽しみながら科学を

澤木佑介

二〇一七年三月に総合文化研究科の広域科学専攻に着任した澤木と申します。大学と大学院時代を東京工業大学で過ごし、その後海洋研究開発機構に研究員として一年間従事したのち、昨年度まで東京工業大学で五年間助教として在籍しておりました。名実共に日本を代表する大学に教員として着任出来た事は大変光栄であると共に身が引き締まる思いです。

学生にとって良い講義とは何か? 五年前に東京工業大学で教員になってから今日までずっと考えている課題です。知識の伝授にならないように、これは最近良く言われる事なので気をつけてはいますが、かと言って学生に議論を強要してもそれほど効果は無いように感じています。自分の学生時代を振り返ってみると、講義をしていただいた先生には大変申し訳ないですが授業内容そのものはあまり覚えていませんが、良かったと思える講義をしていた先生の共通点は楽しそうに講義をしていた事です。内容が分からずとも先生が楽しそうに喋っていると、きっと面白い事があるんだろうと興味をそそられ、自発的に勉強する事がありました。私の場合、未だに何故地球科学を専攻しようと思ったのかについて明確な答えが見つからずにいますが、一つには地球科学の先生の多くが楽しそうだった事がきっかけであったような気がします。一人でも多くの学生が将来的に地球科学を選択してくれる転機となるような講義をする事が大学教員側としての講義への動機の維持に繋がり、ひいては学生にとっても良い講義に繋がるのではないかと考え、講義内容を考えています。

前述のように学生時代から昨年度までの大半を理系大学である東京工業大学で過ごしてきた私にとって、文系の学生が入り混じる東大駒場での生活は非常に目新しく、刺激に満ちたものとなっています。レポート課題を採点していると、教員側が想定している筋道とは全く異なる切り口や観点からの意見が多数見受けられます。駒場が多様だと云われる所以でしょうか、学生らしい柔軟な発想に感心し、楽しませてもらうと共に、改めて多面的な考え方があるものだとこちらも勉強させてもらっています。

短期的な成果が過度に求められる現代社会にあって全てのものは効率化され、勉強内容や方法も最適化されてきました。この事自体が悪いとは思いませんが、一方で全く関係無い無駄だと思っていた事が、ある日突然自身の研究と結び付いて重要な概念の創出に役立ったという経験をされた方も多いと思います。散歩も同じですが、回り道の中にも新たな発見が潜んでいます。多種多様な知識や考えを必要とする地球科学に携わる一科学者として、個性あふれる斬新な科学を発信していきたい。そのために凝り固まった考えや概念から距離を置き、目先の成果のみに囚われず回り道を楽しんで、一歩一歩日々精進していければと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

(広域システム科学/宇宙地球科学)

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