HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報595号

最終更新日:2017.10.25

教養学部報

第595号 外部公開

<時に沿って>テコンドーとヒトの不思議

木下まどか

二〇一七年四月に総合文化研究科身体運動研究室の助教として縁あって着任し、駒場で体育実技を教えることになりました。専門は、スポーツバイオメカニクスで、テコンドー競技の動作分析、シミュレーションを通じて、良い前回し蹴りとは何かを日々追及しています。ヒトを含む動物の形態(カタチ)にも興味があるので、追々研究していく予定です
大学から始めたテコンドーでしたが、すっかり魅せられてしまい、もっと強くなるためには、強い選手の動きがどうなっているのかを研究するしかないと思ったことがこの世界に入ったきっかけでした。現在も、強くなりたい気持ちもありますが、研究すればするほど、ヒトって不思議で面白いなあと感じることも多くなりました。
たとえば、最近感じた、ヒトの不思議は、パラテコンドー選手の動きを初めて見たときのことでした。

パラテコンドーは二〇二〇年の東京パラリンピックから正式種目として加わります。パラテコンドーは上肢の障がいを有するアスリートを対象とした競技ですが、切断や先天性の形成不全の選手が多いです。ルールはオリンピック種目に採用されているテコンドーとは、頭部(上段)への蹴りが禁止になっている以外は概ね同様で、フルコンタクトでの蹴り合いが主です。日本の選手はまだ多くありませんが、東京パラリンピックに向けて、普及、強化を進めています。もし、パラテコンドーに興味がある方がいれば、お声掛けください。テコンドーをやってみたい方ももちろん歓迎です。

と、最初は、パラテコンドー選手たちが前回し蹴り動作を行っている姿の想像がつきませんでしたが、実際に国際大会を観てみるとパラテコンドー選手もこれまで私が分析してきたようなテコンドー選手と同じような蹴り動作を巧みに操り、加えて競技レベルも高く驚きました。

また、動作を実際に分析してみると、「同じように」みえていた蹴り動作も、やはり上肢が欠損している分、その他の身体部位によって動作を補償することで、前回し蹴り動作に必要な身体の制御を行って動作が成り立っているということがわかり、ヒトは身体の機能の一部を失ったとしても他の部分で補うことによって、同じような動きを行なえるというのは、当たり前ではありますが、不思議でおもしろいなあと思います。

これから先、ヒトの生活が変化して、たとえば身体に対する四肢の比率が変化したら歩行様式はどのように変化するのだろうか? そもそもカタチが変化するから動作が変化するのか? 動作が変化するからカタチが変化するのか? 考えれば考えるほどやっぱり、不思議です。

今後、ヒトの不思議の解明の一端を担えるような研究者になりたいなあと思っていますが、とりあえず、最強の研究者になれるよう身体も鍛えて頑張りたいと思います。

(生命環境科学/身体)

 

第595号一覧へ戻る  教養学部報TOPへ戻る

無断での転載、転用、複写を禁じます。

教養学部報