HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報600号(2018年5月 8日)

教養学部報

第600号 外部公開

〈後期課程案内〉医学部

副医学部長 山岨達也
健康総合科学科学科長 松山 裕

医学部の紹介:医学を志す皆さんへ

大学院医学系研究科・医学部 http://www.m.u-tokyo.ac.jp/
医学部健康総合科学科 http://www.hn.m.u-tokyo.ac.jp/

東京大学医学部は、生命科学・医学・医療の分野の発展に寄与し、国際的指導者になる人材を育成することを目的としています。これらの分野における問題を的確に把握し、その解決のために創造的研究を遂行し、臨床ではその成果に基づいた全人的医療を実践する能力の涵養を行います。これから医学部に進む皆さんには、未来の医学・医療を背負う、志の高い医療人・医学研究者を目指してほしいと願っています。

医学部は、人体の仕組みや病気の発症機序を学び、医師免許を取得することを目指す「医学科」(定員一一〇名)と、病気の予防や、社会、環境との関係で疾患を考える分野、さらに介護や健康の科学を創造する「健康総合科学科」(定員四十名)の二つから構成されています。

医学科では、ヒトの身体の構造・機能、病気の発症機序や病態を学ぶ「基礎医学」、疾患の診断や治療を学ぶ「臨床医学」、集団や社会としての健康を守る「社会医学」をバランスよく学ぶことになります。最初の一年半は基礎医学と社会医学の講義と実習を主に学び、二年生から臨床医学の講義と病院実習を学びます。臨床医学では患者さんに接して臨床実習を学びますので、その質を担保するために二つの共用試験(OSCE1)とCBT2))に合格することが必須です。この試験により、十分な知識、技術、態度を備えていると認定された学生はスチューデント・ドクターという呼称のもと、医療チームの一員として参加型の臨床実習に携わります。また、学部学生時代に研究を積極的に行いたい学生の皆さんには、PhD-MDコース、MD研究者育成プログラム、臨床研究者育成プログラムの三つのプロジェクトを提供しています。PhD-MDコースは医学科で二年生または三年生を修了後、医学科を休学して医学博士過程に進んで医学博士号を先に取得し、その後医学部に戻って医学士を取得できるコースで、早くから研究を行いたい学生のために用意されています。

健康総合科学科では、健康にかかわる様々な問題をグローバルな視点から見出し、解決していく「ヘルス・サイエンス」を世界に発信しています。具体的には、分子・細胞・臓器レベルでの人間の生物学を学ぶ「環境生命科学」、社会格差や医療倫理など、社会との関係の中で健康課題を分析して疾病予防や健康増進につなげる「公共健康科学」、健康の増進・維持・回復を支援する看護援助を科学し実践する「看護科学」の三つの専修で学びます。これらの専門領域を統合し、さらに情報科学、社会科学、人文科学ともつなげて、一つの学際的学問体系である健康総合科学を確立すること、さらにこの領域での専門家の育成を行うことがこの学科の目的です。特に国際社会に貢献できるグローバルな人材の育成を重要視し、学生の海外研修や海外教員による特別講義を積極的に推進しています。健康総合科学科の卒業生は約半数が大学院(公共健康医学専攻、国際保健学専攻、健康科学・看護学専攻)へ進学しさらに高度な知識を学んでいます。大学院進学者以外では、健康科学の知識を活かして保険会社、製薬企業、コンピュータ関連企業、外資系企業などへ就職します。看護学専修の卒業生は、医療施設や地方自治体、企業に、看護師の資格を持って活躍しています。

多くの学問の中で医学の大きな特徴は、自然科学であると同時に人間を対象とし、社会との接点が大きい学問であることです。臨床医学はもちろんのこと、基礎医学・社会医学・健康科学に従事する者にとってもこのことが重要であることは、医学・医療の大きな課題となっている遺伝子検査・治療、再生医療、少子・超高齢社会の医療・介護などの例を見るまでもありません。医学の進歩は近年とみに加速しており、例えば「がん」の治療は過去には手術が中心的役割を果たしていたものが、化学療法や放射線治療の進歩により治療成績が向上しました。近年では分子標的薬やがん免疫療法が導入され、大きな変革の時代を迎えています。また、ゲノム医療が次世代シーケンサーの開発などを受けて大きく発展し、従来は臓器ごとに治療方針を立てたのに対し、がんゲノムに応じて治療法を選択する、臓器を横断する治療の時代も迎えようとしています。

医学・医療においては、専門の勉強だけでなく、人間としての成長、社会とのつながりを認識する姿勢が大事であり、また常に新しい知識を得る必要があります。本郷ではもちろんのこと、社会に出ても生涯学習を続けることが求められます。その下地を駒場で養うようにお願いします。

(副医学部長/外科学)(健康総合科学科学科長/公共健康医学)

1:OSCE(Objective Structured Clinical Examination)
客観的臨床能力試験のこと。医療面接、胸部診察、呼吸音聴診、神経診察、救急、頭頚部診察、バイタルサイン等が課題として出される。
2:CBT(Computer Based Testing)
臨床実習開始前までに修得しておくべき必要不可欠な医学的知識を総合的に理解しているかどうかを評価する試験。試験問題はモデル・コア・カリキュラムの項目と内容に準拠して出題される。

第600号一覧へ戻る  教養学部報TOPへ戻る

無断での転載、転用、複写を禁じます。

総合情報