HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報600号(2018年5月 8日)

教養学部報

第600号 外部公開

〈後期課程案内〉工学部

副研究科長 浅見泰司

世界最古の工学部で世界最前線の教育研究

http://www.t.u-tokyo.ac.jp/

世界最古の総合大学はイタリアにあるボローニャ大学、日本で最古の大学は東京大学です。一八八六年に東京大学の前身である帝国大学が設置されましたが、その際に工科大学が設置されました。これが工学部の前身であり、工学分野では実は世界最古の大学なのです。土木工学科、造家学科、機械工学科、造船学科、電気工学科、応用化学科、採鉱及冶金学科の七学科体制で始まりましたが、爾来、時代の工学技術のニーズに合わせて拡大発展し、現在では十六学科を擁するに至っています。その間、日本における産業技術の中核を担う卒業生を輩出し、また、その基礎技術を牽引する研究開発を行ってきました。

工学部のwebやガイダンス資料を見ていただけるとわかりますが、工学部には様々な学問領域を対象とする学科があります。工学は量子、原子単位のミクロな操作技術から、大規模構造物、国土、地球、宇宙を対象とするマクロな構築・探査・制御技術までを対象としています。建築・都市・国土を構築・維持管理していく方法を追求する社会基盤学科・建築学科・都市工学科、様々な領域で社会に役立つ機械を創造し発展させていく機械工学科・機械情報工学科・航空宇宙工学科・精密工学科、電磁気学や量子物理学を基礎に情報化社会の礎を築く電子情報工学科・電気電子工学科、最先端の数学や物理学をベースに新たな学問や産業を切り拓く物理工学科・計数工学科、新たなマテリアルの創製やその生産プロセスや循環までも設計するマテリアル工学科、化学や生物学をベースに新たな物質のデザインに挑戦する応用化学科・化学システム工学科・化学生命工学科、理学・工学に加えて社会科学も応用し社会の要請に応えるシステムを創造するシステム創成学科があります。その際に用いられる専門的知識としては、高等学校の科目で言えば、数学、物理、化学、生物はもとより、地学、地理、歴史、政治経済、そして基本的な素養でもある国語、外国語があります。つまり、工学部全体を見渡せば、中等教育で習ったほとんどすべての科目が必要とされているのです。

ただ、高等学校までの教育では、工学は入学試験の主要科目に明示的には含まれておりません。むしろ、技術・家庭のように主要科目以外で断片的に教えられているだけなので、工学の学問体系が十分に理解されていないかもしれません。そこで是非、前期課程の間に工学関連の講義も受けていただいて、工学という分野の面白さ、奥深さ、そして工学研究の重要性を知っていただければと思います。学部前期課程の学生の皆さんの約三分の一にあたる約千人の方が工学部に進学することになります。その際に、自分の適性にあった学科やコースを選んでいただくことは、ご自身の今後のキャリアパス設計にとって極めて重要です。

工学研究で求められることは、真理の探究や基礎技術の開発に加えて社会実装化です。原理原則を突き詰めるだけではなく、それを実現していくための技術開発も求められるのです。これが、工学を実学ならしめている大きな理由です。もちろん一人の研究者が基礎から実装までを担当できるわけではありません。しかし、全体の中で自分がどのパートを担っているのか、そして、実装に向けてどのような成果をバトンタッチしていくべきなのかを常に意識する。これによって、工学研究全体として実装化に向けた流れを醸成できるのです。

環境、エネルギー、インフラ、資源、水・食料、安全・安心、健康・医療、情報など現代社会では様々な問題を抱えています。国際連合が掲げた十七個の持続可能な開発目標(SDGs: Sustainable Development Goals)は、まさに地球規模における現代社会の課題を表しています。これらの問題は相互に絡み合い、多くの分野に関わります。しかし、その解決に向けて、工学という学問領域は不可欠であり、今後も多大な貢献が求められています。そのような専門性を涵養し、様々な分野で社会のイノベーションを先導していける人材を育成したい。これこそが工学部が目指す教育であり、また、研究活動の源でもあります。

国際的なコミュニケーション能力は、これからの社会を切り拓く上で必須の能力です。幸いにも、工学部は千人以上の留学生がおり、学内に居ながらにして、国際感覚を養うことができます。インターナショナル・フライデー・ラウンジにおいてフリーで留学生と英語で議論できるほか、スペシャル・イングリッシュレッスン、オンライン学習システム、英語での論文やプレゼン指導の講義などが用意されています。

未来社会を創生する工学部。是非、皆さんもその一員となり、我々と共に工学知のプロフェッショナルとして社会に貢献していきましょう。

(副研究科長/都市工学)

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