HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報600号(2018年5月 8日)

教養学部報

第600号 外部公開

〈後期課程案内〉経済学部

学部長 持田信樹

経済社会への学知のフィードバックをめざして

http://www.e.u-tokyo.ac.jp/

わが国の経済社会はいま巨大な変化の渦中にあります。経済成長や物価問題、所得と富の分配問題、人口減少と高齢化、産業構造や雇用の急激な変化に直面しています。ダイナミックに変貌する時期にあっては目の前の現象に惑わされず、本質を見抜く力が求められます。例えば保護貿易主義がつよまる中、経済学の果たす役割はますます大きくなるに違いありません。また資本主義の本質を解き明かす知的な営みや経済学の巨人とよばれる先人たちの思想に触れることはますます重要になりつつあります。近年ではエビデンス(証拠)に基づく政策評価を重視する必要性も高まっています。経済学部でも平成二十九年十月一日に政策評価研究教育センター設立して、政府・地方自治体・企業と協働し高度な政策評価を行うとともに、政策評価を担う人材を育成することに着手しています。経済学という学問領域は世界を眺めて経済活動を理解するための「プリズム」といえます。

経済学部はこうした社会的要請や皆さんの夢や希望に応えられるだけの条件を十分に備えていると自負しています。経済学部には経済・経営・金融の三学科があります。経済学科では経済社会を国際的視野から把握し、産業、国際貿易、財政、金融、労働の領域を分析する能力を養うことを目的としています。経営学科は経営戦略やマーケティング等の企業活動や経営組織における人間行動を分析する能力を養うことを目的としています。さらに金融学科は資産運用・リスク管理などの金融戦略と金融システムのデザインやマクロ金融政策を統一的に把握・分析することを目的にしています。

実際、経済学部は文系学部でありながら理系的要素をもっています。十年前より進学選択では全科類枠を採用しており、文科二類以外の文科三類、理科一類、理科二類からの進学者が約四分の一を占めています。経済学部へはどの科類からも進学可能ですので、理系の皆さんも是非、進学を検討していただきたいと思います。

ゼミや少人数講義が充実しているのも経済学部の教育の特色です。そこでは原則二年間、大教室の授業では味わえない教員による密接な指導を受けることができます。それに加えて平成二十七年度からは教員の監督およびティーチング・アシスタントの補助の下、論文検討会、企業の検討会、ディベート等を行い、レポートを提出することによって単位を認定するプロアクティブ・ラーニングセミナー(先回り学習)がはじまりました。

さらに近年、経済学部が力を入れているのは「卓越プログラム」です。国際社会で皆さん方が活躍するためには今後、修士の学位をもつことは必須となります。経済学部は大学院との相互乗り入れをこれまで以上に強化しています。すなわち学部時代より大学院との合併科目を計画的に履修すれば、一年間で修士課程を修了できる卓越プログラムを整備しました。さらに学修一貫で始めた本プログラムを博士課程教育につなげて発展させる学修博一貫の教育課程を検討中で、平成三十一年度の開設を目指しています。また経済学部では海外の一流大学との交流協定による学生派遣を積極的に行っています。留学先での取得単位を認定できるため、四年で卒業できるメリットがあり、多くの学生が参加していますので是非、チャレンジしていただきたいと思います。

最後に財政学・地方財政論の研究者として個人的な所感を少し述べさせていただきます。財政学は金融論と並んで現実の政策的課題にどう対処するかを考える実践的な学問領域です。こうした性格のためか霞が関の官僚と話をすると「赤門の財政学」ではないかと揶揄されることがあります。たしかに情報は役所がもっていて、政治的合意をうることに長けています。しかし、行政、政治は既得権益をそこなわないかたちでのリフォーム志向であるのに対して、大学の研究者は、長期的視点から、白紙の上に理想像を描くようなデザイン的発想をするという違いがあります。

東京大学経済学部はこれまで日本の経済学や経営学の研究・教育をリードし、国内外で活躍する人材を多く輩出してきました。来たる平成三十一年四月一日に東京大学経済学部は創立百周年を迎えます。創立以来、経済学部が社会に輩出してきた卒業生の累計は約三四、〇〇〇人に達し、実業界、官界、学界など各界に数多くの有為な人材を供給してきました。百周年を機に東京大学経済学部を日本、さらにアジア、世界における経済学の研究・教育の拠点として発展させ、日本社会経済の発展に対する貢献を継続したいと考えています。経済・経営・金融に関心のある人は是非進学先として経済学部を検討してください。

(経済学部長/財政学)

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