HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報601号(2018年6月 1日)

教養学部報

第601号 外部公開

前期TLP修了を記念して

渡邊日日

「東大力検定」の試験範囲になりそうなくらい英文略称が周囲にあふれていますので、改めて申し上げますと──トライリンガル・プログラム(Trilingual Program、略称TLP)は、二〇一三年度から教養学部で行われている言語教育の一つです。本学で展開されているグローバルリーダー育成プログラム(GLP)の一支柱─筆者は単なる一支柱というよりは大黒柱と考えたいですが─をなしているTLPは、第一言語と英語以外にもう一つの言語を集約的に習得することで、「公正な社会の実現、科学・技術の進歩と文化の創造に貢献する、世界的視野をもった市民的エリート」(東京大学憲章、前文より)をさらなる高みへと育成することを目的にしています。なお、TLPは前期TLP(前期課程でのプログラム)と後期TLP(後期課程でのプログラム)に分かれていますが、運営が大きく異なります。ここでは前期TLP(以下、TLPと略します)のことを述べていきましょう。

中国語から始まったTLPは、二〇一六年度よりドイツ語、フランス語、ロシア語が加わり、昨年度、ドイツ語一二名、フランス語二八名、中国語二八名、ロシア語九名の計七七名の修了生を送り出しました(修了要件は言語間で少し違いがあるのですが、大体は英語はG1クラス在籍やIELTS七・〇相当の成績、当該言語では全優の成績を取得することになっています)。それに伴い、今年の二月一日、21KOMCEE East K011にて、国際シンポジウムに引き続き、TLP修了生、内外の関係者が出席するなか、TLP修了式が行われました。

最初に筆者のほうで開会の挨拶を述べさせていただいき、TLPの上位組織を代表する方としてグローバルコミュニケーション研究センター(Center for Global Communication Strategies、略称CGCS)・センター長のトム・ガリー先生により広い視野から見たTLPの意義についてお言葉を頂きました。次に、来賓として石田淳学部長、森山工副学部長にご多用中にもかかわらず出席していただき、石田学部長からは記念のスピーチをしていただきました。続いて、学部長より、各言語の代表の学生に修了証の授与が行われました。

ここまでは、よくある「普通の」セレモニーであったかもしれません。圧巻であったのは、各言語の代表がそれぞれの言語で約五分ほど行ったスピーチでした。資料として原語と日本語対訳が配付されたうえで、ほとんどの人にとって全てが聞きとれる訳ではないその言葉たちの響きに耳を傾けることになったのですが、もちろん、その前には周到な準備や予行演習があったと思うのですが、学生代表が流暢に暗唱する様子に深く感銘を受けたのは、TLPに関わった教員だけではないでしょう(少なくとも筆者にとっては、なにかと業務が多い委員長としてその気苦労の多くが報われたとこのとき感じ、良い意味で脱力したのは確かです)。本学の関係者ではない聴衆から後ほど賞賛の声をいただいたのも特にこのスピーチでした。見事に大勢の前で暗唱した学生代表の皆さん、今回のことは大きな誇りとしてください。

筆者による閉会のことばの前に、修了生全員で、また言語別に、記念撮影が行われました。大きな何事かを一つ成し遂げたことを喜び合う姿は、彼ら彼女らの多くが約二年後に迎えるであろう卒業式での表情を予期させ、学生を迎え入れ、そして送り出すという大学のポンプのような役割を再認識させるものでした。

修了式はこのようにして執り行われましたが、現在抱えている問題はその次です。言うまでもなく語学の勉強は一年半(TLPで規定されている勉学期間)で終わるものではありませんし、さらなるレベルを目指しての継続も必要です。しかるに、後期TLPは現在、中国語しか展開されていません。前期TLPを終えた学生に、さらにどのような言語教育が望まれるのか、それをどのように実現していくべきなのか、取り組むべき課題が残されたままであるのも確かです。以上の拙文が皆様のTLPのご理解につながれば幸いです。

昨年度、時には荒波を頼りない手さばきで乗り切らなければならない局面もありましたが、多くの方のご協力、ご尽力を得てのことでした。特に羽田正理事・副学長、寺田寅彦先生(前TLP委員会委員長・当時)、教育・学生支援部学務課教育改革推進チームの朝原淳子氏、教務課前期課程係の小島悠平氏・石光愛氏(当時)、CGCS事務室の横山加奈子氏に深くお礼を申し上げて、この小論を閉じたいと思います。ありがとうございました。

(超域文化科学/ロシア語)

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