HOME総合情報ニューストピックス

最終更新日:2019.10.10

ニュース

トピックス 2014.09.19

【研究発表】暴力的なテレビゲームが脳に与える影響

暴力的なテレビゲームが脳に与える影響
―表情認知に与える長期的影響と攻撃性への短期的影響―

1.発表者:

玉宮 義之(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻 特任研究員)
松田 剛  (東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻 特任研究員)
開 一夫  (東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻 教授)

2.発表のポイント:

◆暴力的なテレビゲームで長時間遊ぶことが、成人の表情認知に関連する脳活動に長期的な影響を与える一方で、攻撃性に与える影響は短期的であることが明らかとなった。
◆暴力的なテレビゲームで長時間遊ぶことの長期的な影響を認知神経科学的な手法によって明らかにした。
◆テレビゲームで遊ぶ際のガイドライン作成などへの貢献が期待される。

3.発表概要:

攻撃行動や流血場面を多く含む暴力的なテレビゲームで遊ぶことの影響について、これまでにさまざまな研究が行われてきたが、長時間遊んだときの影響や、その影響の持続期間については明らかになっていなかった。

東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻の玉宮義之特任研究員、開一夫教授らは、暴力的なテレビゲームで長時間遊ぶことの長期的な影響を検討するため、他者の表情を判別する力(表情認知、注1)に関する脳波の計測と攻撃性に関する質問紙を用いた実験を成人男性と女性を対象に行った。

その結果、表情の中でも怒り顔の認知に関する脳活動に遅延が見られ、怒り顔の認識に時間がかかることを示唆した。この影響はゲームで遊ぶことをやめても長期間にわたって持続することを明らかにした。一方で、質問紙によって測定した攻撃性については、テレビゲームの影響は短期的なものであり、男性においてのみ見られた。表情認知に関する脳活動と攻撃性の変化に相関関係は見られず、それぞれ独立した影響であることも示唆された。

社会的な関心が高いテレビゲームの長期的な影響・効果というものを実証的に示すことによって、適切な使用方法・ガイドラインなどの作成に貢献することが期待される。

4.発表内容: 

青少年による凶悪犯罪などとの関係から、暴力的なテレビゲームの悪影響に対する社会的関心は非常に高い。国内外でこれまでにさまざまな実証研究が行われ、いくつかの一貫した結果も得られている。たとえば、暴力的なゲームで遊ぶことにより攻撃性が上昇したり、表情認知が変化したりすることが報告されている。ただし、これらの先行研究は、テレビゲームで20~30分ほど遊んだ直後の短期的な影響を検討したものが多く、長期的な影響については質問紙を用いた調査研究が主流である。そのため、長時間ゲームで遊んだときにどのような影響があり、それはどのぐらい続くのかという社会的により重要な疑問については不明なままである。

東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻の玉宮義之特任研究員、開一夫教授らは、暴力的なテレビゲームで長時間遊ぶことの長期的な影響について、成人男性と女性を対象に実験を行った。参加者は、市販の暴力的、または非暴力的なテレビゲームのどちらかで約1ヶ月間(合計16時間)遊んだ。ゲームで遊ぶ前と遊んだ後1週間以内、さらに3ヶ月後の計3回、脳波測定と質問紙調査を実施した。脳波測定では、表情写真(怒り顔・恐怖顔・悲しみ顔・喜び顔・無表情)を呈示した際の脳波を記録し、表情認知に関連する事象関連電位成分(注2)を分析した。質問紙は、心理学で広く用いられている個人の攻撃特性に関するものであった。

脳波測定の結果、暴力的なテレビゲームで遊んだ成人において、怒り顔写真によって誘発される事象関連電位の後頭部におけるP2成分(注3)に遅延が見られ(図1、2)、怒り顔の認識に時間がかかることを示唆した。そしてこの影響は、ゲームを終了した直後だけでなく、3ヶ月後においても保持されていた。質問紙調査の結果から、攻撃性は男性成人においてのみ、暴力的なテレビゲームを終了した直後に増加していたが、3ヶ月後にはゲームで遊ぶ前の水準に戻っていた(図3)。また、怒り顔に対するP2成分の遅延と攻撃性の変化に相関関係は見られず、それぞれ独立した影響であることも示唆された。

本研究によって、暴力的なテレビゲームが表情認知に与える影響は長期的である一方で、攻撃性に与える影響は短期的であることが示唆された。ただし、本結果の一般化にはさらなる研究が必要とされる。近年、テレビゲームの遊び方は多様化しており、ゲーム専用機ばかりでなく、スマートフォンやタブレットでも遊ばれている。また、テレビゲームの暴力描写・内容にも幅があり、写実的なものからアニメのようなもの、現実性の高い行為から低い行為までさまざまである。テレビゲームで遊んでいる年齢層も幅広く、それぞれの発達段階における影響についての検討も重要である。これら複数の要因が互いに影響する過程については不明な点が多く、今後のさらなる研究が期待される。

近年、テレビゲームで遊ぶことによって加齢による認知機能の低下を防ぐ効果が報告されるなど、これまでに明らかにされていなかったテレビゲームの効果・影響が実証研究によって明らかにされつつある。さらなる知見の蓄積によって、適切な使用方法・ガイドラインなどの作成が期待される。

5.発表雑誌:

雑誌名:「Psychology」(オンライン版:9月10日(水)0時00分(日本時間)
論文タイトル:Relationship Between Video Game Violence and Long-Term Neuropsychological Outcomes
著者:*Yoshiyuki Tamamiya, Goh Matsuda, Kazuo Hiraki
DOI番号:10.4236/psych.2014.513159

アブストラクトURL:
http://www.scirp.org/journal/PaperInformation.aspx?PaperID=49551#.VBd00VcVmF8

6.用語解説:

(注1)表情認知:
他者の表情を目にした際に、それを「怒り」や「喜び」などにカテゴリー分けすること。

(注2)事象関連電位成分:
脳波の一種で、写真や音などの感覚刺激に反応して誘発される脳の誘発電位を脳波計によって記録し、加算平均したもの。

(注3)P2成分
事象関連電位の1つで、刺激呈示から約220ミリ秒後に後側頭部で記録される陽性成分である。刺激呈示から成分の振幅が最大となるまでの時間が頂点潜時である。

7.添付資料: 

20140919-2f1.jpg

図1.暴力的なテレビゲームで遊んだ成人に怒り顔の刺激を提示した場合に後頭部で観察された事象関連電位成分P2成分と分析対象電極の位置(左後頭部)

20140919-2f2.jpg

図2.事象関連電位成分であるP2成分の頂点潜時の変化。ゲーム開始前からゲーム終了1週間以内と3ヶ月後それぞれの変化を示し、値が大きいほど脳活動が遅延していることを表す。

20140919-2f3.jpg

図3.攻撃性の変化。ゲーム開始前からゲーム終了1週間以内と3ヶ月後それぞれの変化を示し、値が大きいほど攻撃性が増加していることを表す。

 

前のページへ戻る

総合情報