HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報529号(2010年5月 6日)

教養学部報

第529号 外部公開

〈後期課程案内〉 地域文化研究学科~自分の中にどれだけ引き出しをもてるか

斎藤文子

地域文化研究学科は本学のなかでもユニークな進学先です。あるひとつのディシプリン(学問分野)について深く学ぶというより、ある地域をいくつかのディシプリンを使って学際的、総合的に学ぶことを特徴としています。

現在、世界の一元化はいよいよ進み、文化も経済も社会問題もグローバル化していますが、だからこそ、世界の諸地域の多様性を尊重することが必要になって きます。そのうえで、どのように共生をはかるかということは、現代社会の大きな課題です。それに対応するために、さまざまな地域の歴史、文化、社会、そし て言葉に精通した人間が求められています。また各地域の個別理解にとどまらず、地域間の比較や、世界的視野に立って地域を眺めることのできる人材が必要と されています。

本学科は、そうした学問的かつ社会的要請に応える教育プログラムを用意しています。学科全体は七つの分科と三つの履修コース、すなわちアメリカ、イギリ ス、フランス、ドイツ、ロシア・東欧、アジア、ラテンアメリカの各分科と、ヨーロッパ・コース、ユーラシア・コース、韓国朝鮮コースから成り立っていま す。分科の名称は国名と地域名が混在していますが、国名を冠しているところでも、実際は広い地域をカバーしています。

たとえばイギリス分科では、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、アイルランドも射程に入ります。
フランス分科は、アフリカやカリブのフランス語圏も研究対象です。
また地域名を冠した例えばラテンアメリカ分科では、ラテンアメリカ・カリブ地域だけでなく、ヒスパニック系米国人社会や、日本で働くラテンアメリカ出身の日系人社会についての卒業論文が提出されています。

つまり、分科の関心地域はゆるやかに広がり、分科間の垣根は高くありません。分科を超えた学生と教員の交流もさかんです。また三つあるコースは、七分科のどれかに籍をおいて、ヨーロッパ、ユーラシア、韓国朝鮮に特化して科目を履修するプログラムです。

それぞれの分科やコースは、有機的な一体性を保っていて、各地域の特質を多角的に学び、しかも広い視野に立って全体像を捉える姿勢を育成することをめざ しています。具体的には、対象地域の歴史、政治、経済、社会、文学、思想、芸術、言語などについて、多様なディシプリンの研究方法に基づいて学んでいきま す。

重点をおいていることのひとつに、外国語の習得があります。地域文化を研究するためには言語に熟達することが不可欠だからです。取得すべき単位数が他の 学科よりも多く、外国人の教員による授業が豊富に展開されています。またどの分科でも二カ国語以上を学ぶことを課しています。駒場の短期留学制度 AIKOMや学外からの奨学金を利用して、海外に留学する学生が毎年たくさんいるのも、この学科の特徴です。多くの分科では卒業論文を外国語で書くよう定 めていて、その支援体制も整っています。

卒業後の進路としては、大学院に進む場合、本学科構成教員が所属する総合文化研究科の諸専攻に進学します。本郷の大学院を選ぶ学生もいます。しかし多く の卒業生は就職して社会に出る道を選んでいます。就職先は、製造業、商社、金融、マスコミ、官公庁など多岐にわたりますが、本学科で培われた学術的専門性 と国際的視野、そして高度な外国語運用力は高く評価されています。

将来がうまく見通せない現在、環境変化に立ち向かって生きていくためには、自分のなかにどれだけ引き出しをもっているか、ということが大事になります。 壁にぶつかったときに、別の引き出しを開けて中を探ってみる柔軟性が求められます。地域文化研究学科は、たくさんの引き出しを皆さんのなかに作ってくれる ところです。

(地域文化研究専攻/スペイン語)

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