HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報534号(2010年12月 1日)

教養学部報

第534号 外部公開

GENKI BOOKS 始まりました!

瀬地山 角

B-4-1.jpg駒場図書館の入り口を入って左奥のところに、新しいコーナーができているの、ご存じですか? ジェンダーに関して、大学図書館の予算では買えないものを含めて、学生さんたちの生活に直結する本を集めたコーナーです。Gender Equality No-nonsense Knowledge and Informationの頭文字を取って、GENKI BOOKSと名付けられました。ブルーとオレンジの明るいロゴは、駒場博物館の折茂克哉さんに作っていただいたものです。

社会・社会思想史部会の山本泰先生の発案のもと、駒場図書館の職員の方々と会合を持ちました。一部は国立女性教育会館から本を借り受ける形になっており、これは二ヶ月単位で先方にお返しします。

一方駒場友の会が多額の予算を出してくださることになり、大学図書館っぽくない本も入れられるようになりました。この場を借りて、図書購入等の支援をいただいた駒場友の会に厚く御礼を申し上げます。

で、私は新たに購入する本の選書を仰せつかることになったのですが、二百冊以上の本のリストを作るのは大変な作業です。そこで、九〇〇番教室で開いていたジェンダー論の講義で、選書委員のボランティアを募りました。その結果、金禧庭(キム・ヒジョン)、中村文香、中村杏奈、半田ゆり、福益博子、増﨑勇太、渡邊耕大のみなさんに大学院の小田麻奈美さんと匿名希望のお一人を加えた、総勢九人のメンバーが集まりました。

性別や科類、セクシュアルマイノリティへの目配り、といった面で、とてもバランスのとれたメンバー構成になったと思っています。分野ごとに街中の本屋を覗いたり、東京ウィメンズプラザの図書館を見学したりした上で、それぞれのリストを持ち寄り、研究室で遅くまで議論をしました。みなさん献身的に協力してくださっただけでなく、帰省すると毎食のように家族の食事作りを担当する、なんて男子学生がいたりして、集まり自体も楽しいものでした。

正直に言って、タイトルだけ見ると、「ジェンダーの観点からこれはまずいんじゃない?」という感じのものも含まれています。でも担当したメンバーに説明を求めると、「いやこれは実態調査としてすごく資料的な価値があるので、タイトルだけで判断しないでほしいです」ときちんとした回答があり、そういうものはなるべく尊重して残すようにしました。

超初心者向けの料理の本、女性が安全にひとり暮らしをするためのハウツーもの、女子学生向けの就職情報、話題となった「東大生の性」に関する本、確実な避妊のためにカップルが知っておくべき知識を集めた本、家庭生活と調和した働き方を実現するための本などなど、大学の図書予算では買えないけれど、学生のみなさんの視点から見たときに、必要不可欠な情報を、学生さんたち自身の視点から集めた本が満載です。

もちろんジェンダー論は学問の一分野ですから、男が料理ができるようになるかどうかなど、研究とは関係ありません。そして駒場図書館には、学問的なジェンダー関係の本もたくさん所蔵されています。関心のある方はぜひそれらも手にとってください。

一方で、たとえば環境問題を学ぶ人が、自分のゴミの分別はしない、なんて許されるでしょうか。それと同様に「ジェンダー論で、日本では夕食をほぼ毎日つくる人は女性で九割に達するのに対して男性では三%しかいない、と学んだけれど、自分は家事は何にもやりません」では何のために学んだのか、と問われてしまうでしょう。

「就職で性差別があるのはわかったけど、そんな目に遭わない職業を選ぶには、具体的にどうすればいいの?」と悩む人もいるでしょう。

そんな自分の生き方に関わる部分のお手伝いをしたい、というのが、このコーナーの一つの狙いです。

女性と男性のよりよい関係のために、GENKI BOOKSをぜひ活用してください。

(国際社会科学専攻/中国語)

第534号一覧へ戻る  教養学部報TOPへ戻る

無断での転載、転用、複写を禁じます。

総合情報