HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報535号(2011年1月 5日)

教養学部報

第535号 外部公開

〈時に沿って〉学生のころを振り返って

島田奈央

初めまして。昨年九月より広域科学専攻相関基礎科学系の助教に着任しました。皆さんとは学生実験でお目にかかれるかもしれません。よろしくお願いします。

私はこの大学出身ではないのですが、駒場キャンパスの雰囲気は緑が多く公園のようで好きです。道行く学生をみていると笑顔が多くて、日々若さのエネルギーをもらっています。実は昨年三十歳になった直後にこの執筆のお話をいただきまして、自己紹介がてら今までを振り返ってみるのも良い機会なのではないかと思い、書いています。

私の大学での専攻は生物学で、なぜそれを選んだのか記憶をたぐりよせると、確か中学校の頃に私に理系進学を勧める理科の先生がいて「大学時代の研究室は楽しかった、もう一度戻ってもいいくらい」とキラキラ話すので、大学の研究室はそんなに素敵なところなのか、と研究室自体に興味を持ったことが最初のように思えます。その後高校では化学が得意だったのですが、なぜか「生物学=人と地球に優しい」という漠然とした良いイメージがあったので生物学を選びました。本来このような先入観を払拭するために教養や科学というものがあるのだと思いますが、なにせ高校生の思うことですので、大目にみてやってください。

卒業後、東邦大学理学部生物学科に進学したものの、同級生には「こういった研究をやりたい」という明確な目的意識をもった人が多く、漠然と進学した自分に焦りました。かといって、すぐにやりたい研究テーマが見つかるでもなく時間は過ぎていきました。卒業研究を選ぶ際に、キイロタマホコリカビという微生物を使った細胞の分化の研究をテーマに選びました。基礎研究の内容なので地味ですが、やってみたら意外にも楽しくてあっという間に時間は過ぎました。

自分は割と何に対しても面白さを見いだすことができ、エネルギーをつぎ込める性格なのかもしれません。その後大学院進学を決めてから今まで、自分の職業について深く考えることなく勢いだけで走ってきてしまいましたが、今のところ飽きていないので、結果として私に合っているということなのかもしれません。ただ、本当に忙しいときは、私は生物を扱った研究をしているにもかかわらず、自分が生物であることを忘れてしまいがちになります。人間としての感覚や感性がパサパサになって失われていかないように心がけたいと思います。

みなさんは、学生の頃は目の前のレポートや答案の空白を埋めることに必死で勉強に窮屈を感じるかもしれません。しかし本当は、たくさんのことを知れば知るほどできることが増え、自由に自分の発想を表現することができるようになるはずです。答案を「埋める」のではなく「埋める枠を創造する」ような楽しさにいつか出会えるように、頑張ってくださいね。

(相関基礎科学系/相関自然)

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