HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報537号(2011年4月 6日)

教養学部報

第537号 外部公開

駒場の飲食店案内(全面改定版)

井上健

駒場でほとんど飲食しない筆者はこの記事を書くため、寒いさなか、食の荒野=駒場をさ迷い歩き、必死で食べ回った。もちろん、すべて自腹である。難行と自腹の成果たる本文中で、触れられなかった店も多々ある。別掲地図を参照されたい。

【キャンパス内】
 遠い昔、一度だけおそるおそる試食してみた駒場寮食堂のカツ丼は、到底人体で消化できる代物ではなかった。そんな学生食堂の過去の実態を知る者にとっ て、今の生協食堂〈1〉の洒落た、開放的な雰囲気はまさしく隔世の感がある。ただ残念ながら、わが学食の偏差値は昔も今も、大学の偏差値には遠く及ばない ようだ。カフェJr.〈2〉は喫茶メニューも豊富で、パスタ・ランチもあり、空間もゆったりしていてくつろげる。日曜も開いているのは有り難い。立ち食い 蕎麦コーナーを併設したスタバ、といった感覚で利用すべきか。

 ルヴェソンヴェール&橄欖〈3〉の一階のフランス料理ルヴェソンヴェールは、昼食時、近隣の中年女性客の聖地と化す。本店は京都の百万遍。筆者は京大教 員時代、このどこにでもある普段着フレンチでよくランチを食べた。まさか正装して気取った昔馴染みに、駒場で再会することになろうとは思わなかった。

 カポ・ペリカーノ〈4〉は、先端科学技術センター内にある家庭的イタリアン。パスタ・ランチ、八四〇円なり。医学部研究棟一三階にある本郷店の方で二度 ランチを食したが、エレベーターで地上に降下する間に、どんな味だったか、きれいさっぱり忘れてしまったので、何も論評できない。

【キャンパス外】
 たまには混雑したキャンパスを後にして、外に出てみるのも悪くない。まずは、ガード下から駒場公園の方へ。満留賀&楓〈5〉は一階が蕎麦屋で、二階がお 好み焼き屋。開店以来の電灯である盛りの良さは健在である。駒場教職員御用達の店なので、これ以上のコメントは差し控えよう。

 Dora〈6〉は今や絶滅の危機に瀕している、典型的学生街型喫茶店の貴重な生き残りで、長時間滞在可能な、居心地の良い空間を提供してくれる。

 カフェ・コロラド〈8〉は珈琲専門店チェーンの老舗だが、今やエクセルシオールなどともにドトール・グループの一翼を担う。フード・メニューも多様。酸味系コーヒー中心。いつも空いている。

 宮川支店〈11〉は渋い店構えの鰻屋。創業百余年「築地宮川本店」の支店なら「宮川駒場店」となるはずなので、別カテゴリーの暖簾分けか。しっかり蒸してから焼き上げた鰻なので、関西出身の人には物足りないかも? ご飯の炊き具合にばらつきあり。

 食の砂漠=駒場のオアシス、あるいは飛び地した表参道か自由が丘。それがル・ルソール〈10〉とCafe farfa〈9〉である。前者はかの有名なメゾン・カイザー立ち上げに関わった方がパンを焼く店。材料も吟味され、どれを食べても外れはないが、やはり ハード系がお奨め。ランチ系のパンは学生にはやや高めの価格設定である。Cafe farfaは、有機と国産素材にこだわったカレー、ケーキを供するカフェ。チャイ、ハーブティー、コーヒーなど飲み物も充実。一口食べただけで素材の良さ が納得されるケーキは、キャンパス内で添加物まみれの弁当やパンを常食している者には、空気清浄機のような効果も併せ持つ。

 いったんガードまで戻って、淡島通りに向けて坂を上った右側の半地下に卯(うさぎ)〈13〉がある。料理から明確な個性や主張は感じられないものの、食 の凍土=駒場には貴重な本格的イタリアンである。パスタ・ランチ九八〇円はお奨め。有名女優の母親が経営しているとの噂あり。

 淡島通りにぶつかって右折してすぐに看板が見えてくるのが音楽喫茶カフェアンサンブル〈14〉。ドリップ・コーヒーもケーキもランチもあるが、ここの何 よりのご馳走は、名機タンノイ・エジンバラから流れる楽の調べである。英語Ⅰ授業で、ガヤガヤと他人のワークシートを書き写している諸君が、まかり間違っ ても足を踏み入れることを許されぬ、禁断の空間がここにある。

 ガードまで戻って、駒下商店街を渋谷方向へ。Lucy〈17〉は半地下にあるカレー屋で、夜はスナックとなる。カレーはインド風とタイ風の二種。どれも量が多く、トッピングの設定が妙に細かい。

 キッチン南海〈21〉、菱田屋〈20〉は、駒場では老舗に当たる洋食屋、定食屋で、値段相応のものが安心して食べられる。「まだあった」と形容したくなるのが喫茶室イーグル〈25〉。学生街の喫茶店らしからぬ、しっかりした定食を出す。

 リスブラン〈21〉は喫茶から、パスタ、リゾットなどの食事、ワイン、ビールまで楽しめる、使い勝手の良いケーキ屋。色々な絵の具を混ぜ合わせて灰色に なってしまわないことを願う。千正〈22〉、さわやか〈23〉、英香〈24〉、かこ〈26〉など、駒場の居酒屋は平田オリザ主宰「こまばアゴラ劇場」周辺 に集中している。

 英香は魚料理が売りでランチもあり、さわやかではコンパもできる。まあ、三分も電車に乗れば、渋谷、下北沢なのだが……。

 裏門を出て、山手通りを渡ったところに、食の墓場=駒場にあっては希少価値の、そば処絆〈27〉がある。蕎麦はどのメニューも三種(手打ち、田舎、石臼 挽き)から選ぶことができて、味は濃いめながら、創作系の料理メニューも充実。日本酒、焼酎の品揃えも豊富で、ランチに、食事に、酒宴にと用途も広い。蕎 麦つゆのレベルアップが課題。

 ビストロ、シャンブル・アヴェク・ヴュ〈29〉は千円のワンプレート・ランチ(限定○食)がお奨め。夜のプリ・フィックスは二六〇〇円からと良心的な値 段設定で、少し遅めの時間帯にはワインバーとしても使えそうだ。塩加減に繊細さを欠くのが難点。  裏門から駒場公園あたりまで歩いてきてしまうと、戻る気がだんだんと失せてくる。昼食後はキャンパスに引き返す必要などさらさらないので、あたりを気ま まに散策したらよい。BROT LAND & B・L Cafe〈31〉は一階が焼き立てパン屋さんで二階がカフェ。パンは種類が多く、当たり外れはあるものの、どれもボリューム十分である。B・L Cafeではカレーなど料理も用意されているが、迷うことなく一階のパンを持ち込むことをお奨めする。

 CAFE pour mardi〈32〉はジャズが流れるお洒落なカフェで、ランチもいろいろと用意されている。ランチ・セットのドリンクとしてビールもワインもあるのが、歩き疲れたおじさんたちにはうれしい。

(超域文化科学専攻/英語)

〈7〉  ripple(カフェ)
〈12〉 嚆矢(ラーメン・酒)
〈15〉 マクドナルド
〈16〉 Oaks(焼き鳥・定食)
〈18〉 みしま(たこ焼)
〈22〉 千正(居酒屋)
〈28〉 ラーメン山手
〈30〉 Freshness Burger

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