HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報538号(2011年5月11日)

教養学部報

第538号 外部公開

〈後期課程案内〉 地域文化研究学科 国境を越え、世界の諸地域を知る

斎藤文子

東日本大震災が起きて数日後にこの原稿を書いています。これが読まれるはずの今から数十日後には、この衝撃と混乱が少しでも収まり、痛みがいくぶんか和らいでいることを祈ります。

このような大規模災害でも明らかなことですが、一地域に生じた問題はその範囲内にとどまることなく、国境をも越えてさまざまな影響を与え合います。あら ゆる問題がグローバル化している現代社会では、諸地域の多様性を尊重しながら、お互いにどのように協力し、共生をはかるかということが、大きな課題です。 それに応えるために、世界のさまざまな地域の歴史、文化、社会、そして言葉に精通し、柔軟に物事に対処できる人間が必要とされています。本学科は、そうし た人材を育てる教育プログラムを用意しているところです。

学科を構成する分科を眺めてみれば、自ずとこの学科がどういうところか理解されると思います。学科全体は七つの分科と三つの履修コースから成り立っています。アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、ロシア・東欧、アジア、ラテンアメリカの各分科と、ヨーロッパ、ユーラシア、韓国朝鮮の各コースです。コースというのは、七つ分科のどれかに所属しながら、この三つ地域に特化した科目を履修するプログラムです。この他にも、オーストラリア研究や、フランス語圏アフリカ研究もできますので、地球上のじつに広範囲をカバーしているといえます。

それぞれの分科やコースでは、各地域の特質をいくつかのディシプリン(学問分野)を使って多角的に学び、広い視野に立って全体像を捉える姿勢を育成する ということをめざしています。具体的には、対象地域の歴史、政治、経済、社会、文学、思想、芸術、言語などについて、専門的な研究方法に基づいて知識を獲 得し、アプローチの仕方を身につけていきます。

地域ごとの分科にわかれてはいますが、対象地域を学際的、総合的に理解するという意味で、本学科全体は有機的な一体性をもっています。また、学生と教員 の分科を超えた交流がさかんに行われています。他地域や異なるディシプリンを学ぶ人たちと日常的に交流することは、大きな刺激になるはずです。世界的視野 に立って地域の問題を眺める発想も生まれてきます。

今述べたことを制度的に支えるものとして、本学科では他学科にはない「副専攻」という制度を設けています。主専攻(各自が所属する分科・コース)の他 に、本学科や他学科のあるひとつの分科を副専攻と定めて、そこで指定された科目を履修することができる、というものです。たとえばアメリカ分科の学生が自 分の分科の科目を履修しながら、国際関係論分科の科目をまとまった形で履修することによって、二つの分科の学問を身につけて卒業することができます。この ユニークなシステムに魅力を感じている学生は多くいます。

また重点をおいていることのひとつに、外国語の習得があります。地域文化を理解するためには、その地域のことばに熟達することが不可欠だからです。それ ゆえ、取得すべき単位数が他の学科よりも多く、外国人の教員による授業が豊富に展開されています。さらにどの分科でも二カ国語以上を学ぶことを課していま す。駒場の短期留学制度AIKOMや学外の奨学金を利用して、海外に留学する学生が毎年たくさんいるのも、この学科の特徴です。多くの分科では卒業論文を 外国語で書くよう定められていて、サポート体制が整っています。

卒業生の進路については、約半数が大学院に進み、その多くは、同じ駒場キャンパスにある総合文化研究科の諸専攻に進学します。残りの半数は就職ですが、 製造業、商社、金融、マスコミ、官公庁など職種は多岐にわたります。いずれの場合でも、本学科で培われた学術的専門性と国際的視野、加えて高度な外国語運 用力は高く評価されています。  ぜひガイダンスをのぞいてみてください。

(地域文化研究専攻/スペイン語)

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