HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報550号(2012年10月10日)

教養学部報

第550号 外部公開

国際環境学プログラム(Graduate Program on Environmental Sciences: GPES)

増田茂

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GPESのロゴマーク
平成二四年十月より、国際環境学プログラム(GPES)とよばれる大学院プログラムが、東京大学の全学的協力のもとに総合文化研究科広域科学専攻でスタートしました。本プログラムは、入学から修了まで教育・研究がすべて英語で行われるという大変ユニークな試みであり、以下では、その概要を紹介したいと思います。

東日本大震災・原発事故後、環境・エネルギーが今ほど問われている時代はありません。また、現代社会は食の安全など身近なものから、生物多様性の喪失、成層圏オゾンの減少、大気中温室効果ガスの増大など地球規模のものまで様々な環境問題に直面しています。増加の一途をたどる人間活動から自然環境を守り、持続可能な社会を築くには、どうすればよいのでしょうか? 科学計測によるメカニズムの解明やシミュレーションによる将来予測を行い、最終的には国内あるいは国際的な政策に反映させなければなりません。その過程では、経済的・社会的・文化的な相克を乗り越えた取り組み(コンセンサスの形成や世界観の創造など)が極めて重要となります。このような環境という複雑で多岐にわたる問題を正面から捉えようとするのが「環境学」であり、本プログラムでは、文理包括した形で多面的に研究することを目指します。

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国際環境学教育機構
本プログラムの主な特徴は次の二点です。まず、従来の学問体系に囚われない学際的な教育・研究内容を挙げることができます。本プログラムでは、「<B>環境原論・倫理」、「環境管理・政策論」、「環境影響評価論」、「物質循環論」、「エネルギー資源論」、「食と安全論」、「社会基盤防災</B>」の七つの学際領域を設定しました。広域科学専攻の教員(二七名)および東京大学の各部局(理学系研究科、農学生命研究科、新領域創成科学研究科、情報学環・学際情報学府、生産技術研究所、先端科学技術研究センター、大気海洋研究所)において環境・エネルギー問題に携わる教員(三一名)が担当します(図参照)。学生は右記の七領域の中から一つの専門領域を選択し、指導教員のもとで先端的な研究を行うとともに、七領域で開講される講義、演習、フィールドワークなどを通して環境問題に関する広範な知識を習得することができます。

第二の特徴は、本プログラムが世界に開かれたプログラムであることです。『東京大学行動シナリオ』には、「世界から人材の集うグローバル・キャンパスを形成し、構成員の多様化を通じ、学生の視野を広く世界に拡大する」という重要テーマが謳われています。平成二四年十月よりスタートした教養学部英語コース(PEAK)やその延長にある本プログラムは、このテーマを具体化したものです。したがって、本プログラムは世界各国からの留学生が主な対象となりますが、日本人学生にも開かれたものになっています。日本人学生と留学生とが共に学び、先端研究に取り組むとともに、文化的背景の異なる集団の中で相互の価値観を理解し得る場が本プログラムであると言えるでしょう。

本プログラムの修了者には、環境学の研究者や技術者、国際的な舞台で環境・エネルギー問題解決のための経済的・政策的提言や立案を行なうリーダー、環境学と社会を結ぶコミュニケーターなどが想定され、環境学のプロフェッショナルとして政治機関、民間企業、NGOなどでの活躍が期待されています。以

上のように、本プログラムは斬新なコンセプトに基づいてスタートしました。教育・研究の陣容や体制も整いました。今後、世界各国から学生や研究者が集う拠点形成への発展が期待されています。
(修士・博士課程の入学に関する情報は、http://gpes.c.u-tokyo.ac.jp/introduction/index-jp.htmlをご覧ください。)

(相関基礎科学系/化学)



 

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