HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報555号(2013年4月 3日)

教養学部報

第555号 外部公開

駒場で学ぶ新時代の英語――「教養英語」と「ALESA」

中尾まさみ

新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。新たなスタートを切った皆さんが描く将来の自画像の中で、英語はどのような意味を持っているでしょうか。

今日の世界では、インターネットなどの情報網の発達により、私たちが手にすることができる情報の量は爆発的に増えました。それらを正確に理解し、適切に取捨選択して必要な情報を得るには、精密な受信力が必要です。また国際社会で議論を交わし、対話・交流することが求められる場面も日常的になっており、自在な発信力の重要性もまた強く認識されています。英語が(好むと好まざるとに関わらず)しばしばその主要なツールとなっていることは、言を俟ちません。大学で身につける英語受信力・発信力は、みなさんの将来の活躍や社会貢献の礎となるような堅固な能力でなくてはなりません。

東京大学では、そうした骨太な英語力の涵養を念頭に、二〇一三年度より二つの新しい授業、英語一列「教養英語」と英語二列「ALESA」がスタートします。「教養英語」は、一九九三年から二十年続いた「英語I」を発展的に継承する科目で、英語部会が本学の学生のために作成した新教科書『教養英語読本I・II』とこれに関連する音声教材を使用します。教材の内容が、文系理系を問わず、東大生の知的好奇心に応えるようなものであることは、「英語I」以来変わらぬ英語部会の一貫した方針です。みなさんには、あらゆる機会を捉えて新しい知識や視点にふれ、脳を刺激してほしいし、第一、その方が面白いからです。しかし、それだけではありません。

知的な内容には、それにふさわしい言語表現があり、その構造、語彙、レトリックなどの謂わば「からくり」を読み解く作業は、英語のエッセンスを学ぶのに、この上なく有効な手段なのです。『教養英語読本』に集められた文章は、一見するとそれほど難しいものには思えないかも知れません。しかし、深く理解しようとすれば、かなり手強いものが揃っています。これらを制覇する過程は、すなわち質のよい英語を吸収し、脳内に浸透させることにほかなりません。その意味で、「教養英語」は、精密な受信力をつける訓練であると同時に、発信力をつける上でも有効であることを強調しておきましょう。なぜなら、知的な言語の蓄えを持っていなければ、知的な発信はできないからです。

こうした学習をより効果的に行うために、「教養英語」は習熟度別クラス編成を採り入れています。受講者は三つのグループに分かれ、それぞれの英語力に合わせてきめ細やかな指導を受けることになります。教科書を読むスピードも授業方法も、グループごと、クラスごとに違いますし、クラス定員は四十名以内と、従来より大幅に少なくなり(すべて英語で行われるグループ1では、二十五名程度)、より双方向型の授業となります。学期末試験は、全グループで共通して扱った部分を指定して統一で行いますが、教科書以外の実力問題もありますから、一学期間頑張った成果を大いに発揮してください。

もう一方の新しい授業ALESA(Active Learning of English for Students of the Arts)は発信力に特化した実践的な授業で、すでに二〇〇八年度にスタートした理科生向けの英語論文作成の授業、ALESS(SS=Science Students)を文科生向けの内容で展開するものです。名前の一部にもなっているアクティブ・ラーニングは、授業内外での学生の積極的な学習活動を前提とした教授法で、十五名程度の少人数クラスでの授業はすべて英語で行われます。ほぼ一学期かけて自分で問題を設定し英語で論文を書いた後、プレゼンテーションと質疑応答を行うという、将来研究者を目指す人はもちろん、どのような分野でも多かれ少なかれ必要となる技能の第一歩を学ぶ科目です。理科生は授業時間外に実験を行い、これを利用して論文を書きますが、文科生の場合は、研究論文の読解・分析やディスカッションを通して論証の方法を学んだ後、自分の関心に沿った論文を作成します。

英語で自分の考えを論理的に展開し、説得力をもって表現することは、おそらく多くのみなさんにとっては、今まであまり経験のないことかも知れません。級友たちを前に英語で発表したり質問に答えたりするのに、最初は勇気が要ることでしょう。しかし、ここで第一歩を踏み出さなければ、より長く専門的な論文や発表に向けての二歩目は踏み出せないのです。その先を目指して、歩み出してください。アドバイスが必要な時には、KWS(Komaba Writers’ Studio)で大学院生のTAが親切に相談にのってくれます。

もちろん、英語で話す練習が回数を重ねれば重ねるほど効果的であることは、言うまでもありませんから、授業に出るだけでは物足りない、と感じる人がいるかも知れません。「教養英語」では、授業以外でも英語を話す機会を持ちたい人のために、週二回ディスカッションルームを設けています。教室でも教室の外でも、積極的に学ぶ方法を考え、実践して、揺るぎない英語力を身につけてください。

(地域文化研究専攻/英語)

第555号一覧へ戻る  教養学部報TOPへ戻る

無断での転載、転用、複写を禁じます。

総合情報