HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報555号(2013年4月 3日)

教養学部報

第555号 外部公開

〈辞典案内〉ロシア語

安岡治子

①博友社ロシア語辞典(木村・佐藤・森安・栗原・中村・松井・桑野編,博友社,1995年改訂初版,1532頁,6000円)中型の学習辞典だが,ソ連解体後の特徴もよく反映されている.語数は変化形見出し約5500を入れて5万語くらいだが,現代ロシア語の語彙を中心にしている点に特徴がある.見出し語に国際音声字母による発音記号がつけられていること,巻末に和露索引が添えられていることなども,他の露和辞典に見られない特色である.重要語については,平易な用例が多数あがっており,活用辞典として作文に応用できるように配慮されている.レイアウト,印刷にも工夫がこらされており,初学者にとってはもっとも便利な辞書であろう.

②研究社露和辞典(東郷・染谷・石山・磯谷編,研究社,1988年版,2764頁,8000円) 最大の収録語数を誇る露和辞典.用例はきわめて豊富で,文法上の説明も詳しい.同義語,反意語もよく拾ってある.ただ,分量があまりにも多いために,必要な情報を引き出すのに時間と手間がかかり,初学者向きとはいえない.類義語の説明もある程度の基礎知識を前提としている.なお,人名や地名など百科事典的な項目を本文見出しに採用し,しかもそれに簡単な説明を加えたことは特徴的である.範としている同社の「リーダーズ英語辞典」とちがって,語源が添えられていないのが残念.

③岩波ロシア語辞典(和久利,飯田,新田編,岩波書店,1992年版,2239頁,7800円) ソ連解体後のさまざまな変化を反映させているだけでなく,これまでの辞書とは異なり,口語,俗語にも詳しい用例をあげている点に特徴があり,文学作品などを読む場合には便利.人名,愛称に関しても詳しい.また語数,用例,百科事典的情報なども大辞典に匹敵するだけの内容をもつ.

④コンサイス露和辞典(井桁貞義編,三省堂,2003年改訂第5版,1329頁,4000円)かつて外国語辞典の代名詞ともなっていた「コンサイス」シリーズの露和辞典.小型ながら,語数は大辞典に迫るほど(見出し語・派生語約10万6千)豊富である.そのために見出し語の一部が追い込みになるとか,用例が語義分け番号に照応しないなど,初学者にとっては使いにくい点もあるが,携帯に便利で愛好者は多い.2003年に大改訂がなされ新しいロシア社会の変化に対応し,新情報,新語彙,新語義が大幅に増強された.なお,各単語の語源略解は類書にない特徴である.

⑤和露辞典には研究社和露辞典(藤沼貴編,研究社,2000年版,1183頁,6800円)等がある.

(地域文化研究専攻/ロシア語)

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