HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報557号(2013年6月 5日)

教養学部報

第557号 外部公開

〈本郷各学部案内〉薬学部 創薬を目指す学融合的なライフサイエンス研究の拠点

有田誠

http://www.f.u-tokyo.ac.jp

557-H-4-3.jpg薬学部は、社会の中で人が健康かつ快適に過ごせるように、薬を中心とした生命科学の理解を深めるための教育、研究を行っています。これまでにも新しい薬が開発されることにより、感染症や炎症、代謝性疾患など、当時有効な治療手段がなかった様々な病気が克服されてきました。また、鎮痛薬や抗生物質は、今日に至る外科医療の飛躍的な進歩には欠かせないものです。一方で、現時点で未だ有効な治療手段をもたない、がん、慢性炎症、認知症などについては、新しいコンセプトに基づいた創薬が求められています。

また、これからわが国が直面する高齢化社会に向けて、病気を発症する前の予防的な先制医療や、病気の予後を改善し健康な状態を長期間持続できる質の高い治療薬の開発が望まれています。このように社会における人の健康と薬のあり方について考え、そこから新しい薬を創出していくためには、多くの自然科学の知識を学び、研究成果が集約される必要があります。

薬学部では、広い意味での「化学」を基礎として、生命現象の解明と創薬への応用を目指す研究が、有機化学、生物化学、物理化学という幅広い専門領域で行われています。これらの異分野の研究室が必要に応じて協同し、また製薬会社との産学連携プロジェクトなどを通して、有用性の高い創薬に向けた基礎研究が日々行われています。また、大学発の創薬研究の拠点として、「創薬オープンイノベーションセンター」が薬学部内に設置されています。このセンターでは、約二一万の大型化合物ライブラリーを基盤とし、疾患に関連する標的生体分子に作用する低分子化合物を探索し、創薬シードを世の中に送り出すための研究が行われています。さらに、世界各国の研究機関との共同研究や人材交流なども盛んに行われています。このような一流かつ学融合的な教育・研究体制は、ライフサイエンスの分野でこれからリーダーとして活躍する人材を育成し、高度な見識と研究能力を身につけるのにふさわしい環境であると言えます。

薬学部には、創薬に関わる高い能力をもった研究者、および医療行政に貢献する人材の養成を目指す四年制の薬科学科と、医療の高度化に伴い、質の高い薬剤師の養成に主眼を置く六年制の薬学科の二つの学科が設置されています。薬科学科が全体の九割、薬学科が一割の定員となっていますが、教養学部からの進学時には学科の振分けはなく、すべての学部生が共通のカリキュラムで薬学部の研究内容について学びます。その後四年生になると各研究室に配属され、それぞれの卒業研究に取り組みます。ここで六年制の薬学科の学生は、病院や薬局での実務実習をこなしつつ、卒業研究にも取り組むことになります。

このように、薬学部の学生は学科を問わず、設備などとても恵まれた環境の中で教育を受けることができます。薬学部は一学年約八〇名とコンパクトであり、とくに三年生までは実習も講義も全員が一緒に行うので、同級生としての強い結束が得られます。また、春に検見川で行われる陸上運動会や、秋に戸田公園で行われる水上運動会、それ以外にも研究室対抗のスポーツ大会など盛りだくさんで、学問だけでなく様々なイベントを通して、教員や大学院生などと親しくなれる機会が多いのも薬学部の特徴です。

いかがでしょうか。皆さんはこのような充実した環境の中で、知的好奇心に満ちた学生生活を思う存分に過ごしてみたいと思いませんか。ぜひ薬学部を訪れて、学融合的かつ最先端のライフサイエンスの魅力を肌で感じていただければと思います。

(大学院薬学系研究科・衛生化学)

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