HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報565号(2014年5月14日)

教養学部報

第565号 外部公開

〈本郷各学部案内〉人の営みを支える農学

鮫島正浩

http://www.a.u-tokyo.ac.jp

565-H-6-2.jpg
農学部のある弥生キャンパス
農学という言葉から、皆さんはどのようなイメージを持たれるでしょうか。おそらく、田舎の風景やそこで農業、林業、水産業を営む人たちの姿を想い浮かべる方も少なくないでしょう。そのイメージを良いと捉える人も多いかもしれませんが、一方、そのようなイメージよりも自分は都会的なほうが好きだと思う人はさらに多いかもしれません。ただ、そのような都会派の人たちにも、自分たちの日常的な生活の営みが農学と深い関わり合いを持っていることには気づいてもらいたいと思っています。

農学の身近さを最も実感しやすい例は毎日の食事です。人は食物を取らないと生きていけません。食物にはバランスの取れた栄養、美味しさ、そして健康を維持していくための機能が備わっていなければなりません。また、食物は安定かつ持続的に供給され続けなければなりません。このような食機能、食生活、そして食社会を支えている学問が農学なのです。さらに、私たちの生活を見渡してみてください。普段は何気なく見ている町、家、そして部屋の風景の中にも生物を起源とする材料で作られた物が実は非常に多いことに気づくはずです。

これらの製品を提供する技術にも農学は多くの関わりを持っています。また、最近では、自動車やOA機器等に使われるプラスチックにも生物起源の材料が利用されるようになってきています。この動きは、石油等の化石資源に依存しない生物資源(バイオマス)の利用を推進することで持続可能な社会を構築しようとする考えに基づいています。このように人の営みを支える食品や製品を作る技術や流通のあらゆる場面において、農学は大きく貢献しています。また、それに関わる様々な産業界で、数多くの農学部の出身者が活躍しています。農学に対する皆さんのイメージは少し変わりましたでしょうか。

農学に対して少し別のイメージを持たれた方は、是非、農学部のホームページにアクセスしてみてください。「概要」をクリックすると、農学部の教育の目的について次のような記載があります。「人の営みと関わりの深い植物、動物、微生物を中心とした生命現象を、分子・細胞レベルから、個体・群集レベルにわたるまで幅広く理解し、これを人類の生活向上のために応用できる人材の育成を目的とする。」すなわち、農学部では、植物、動物、微生物等を対象とする生命科学(ライフサイエンス)と様々の生物が織りなす社会の成り立ちとその持続性を捉える生態学や環境学(エコロジー)を基礎学として位置づけ、さらに生物が作り出す様々な資源を人類の生活向上のために応用できる人材の育成をミッションとしています。

このような多彩な農学の顔を支えるためには多様な専門分野が必要です。そのため、農学部では、合計15の専修を構えて専門教育にあたっています。一方、農学は多様な専門分野の上に成り立つ総合的な学問とも言えます。そこで、農学部では、農学が取り扱う共通分野と基礎学を広く学ぶことを目的に、応用生命科学、環境資源科学、そして獣医学の三つの課程を組織して横断的な教育を併せて行っています。このような課程・専修制に基づく教育システムを利用して、農学部では、生物資源と生物機能を多面的に活用することで豊かで健康的な持続可能な社会の構築する担い手を育てたいと思っています。多くの皆さんに興味を持っていただけることを期待しています。

(大学院農学生命科学研究科・副研究科長/生物材料科学専攻)
 

第565号一覧へ戻る  教養学部報TOPへ戻る

無断での転載、転用、複写を禁じます。

総合情報