HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報573号(2015年4月 1日)

教養学部報

第573号 外部公開

アメリカ太平洋地域研究センター(CPAS)

遠藤泰生・橋川健竜

新入生のみなさん、入学おめでとうございます。駒場キャンパスの研究教育施設を活用し、柔軟な視野から、さまざまな問題を深く考える経験を積んでもらいたいと願っています。それを支援する組織の一つとして、アメリカ太平洋地域研究センター(CPAS)を紹介します。駒場キャンパスの中央を走る銀杏並木の西端近く、一四号館に接続する二階建ての建物にそのセンターはあります。

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このセンターは、北米とオセアニア地域に焦点をあてながら、アメリカ太平洋地域の政治、経済、文化を研究する専門組織です。アメリカ合衆国に関する国立大学唯一の研究機関として一九六七年に設立され、本年度は四八年目に入ります。近年はアメリカ合衆国の政治や文化だけでなく、中南米諸国やアジア太平洋諸国と合衆国との関係を強く意識しながら、世界に占めるアメリカ文明の意味をグローバルに捉える研究を数多く展開しています。二〇一〇年にはこのセンターを基盤にグローバル地域研究機構という組織を立ちあげ、ヨーロッパ、アフリカ、アジアの諸地域および人間の安全保障を専門とする学内の研究者に共同研究の場を提供するよう努めています。たとえば昨年は、アメリカ、オーストラリア、スペインにおける移民のあり方を比較対照する「移民国家のつくられ方」、TPP(環太平洋パートナーシップ)など新たな地域的経済枠組みを作ろうとする現在進行中の動きをさまざまな角度から検討する「アジア太平洋の経済秩序とアメリカ」、という二つの公開シンポジウムを開催しました。

もちろんそうしたシンポジウムに参加して大学の教員が何を日々研究しているのか耳を傾けてみるのも楽しいのですが、新入生の皆さんには、毎月開催されるCPAS公開セミナーに参加して、大学における研究の最前線を味わってみることをお勧めします。この公開セミナーは、国内外の一流の講師を招き、現在学術の世界で話題になっている問題を自由に討議してもらう場です。とくに初夏から秋にかけては、米欧豪亜の各国からセンターを訪れる研究者が数を増し、地域文化研究や国際関係論を志す院生・学部生を交えたオーディエンスと活発な議論を重ねています。昨年は、映画に見るオーストラリア人の国土像、検索エンジンのグーグルと民主主義の実践の関係、一八世紀に挑発的な政治思想を展開したトマス・ペインの橋梁設計家としての活動など、多様なテーマを取り上げました。ほとんどの場合使用言語は英語になりますが、決して流暢な英語でなくとも構わないのです。自分の疑問を率直に伝え、納得いくまで話を聞く練習をする、格好の場にセミナーはなっています。学部新入生の皆さんも積極的に挑戦してみてください。

アメリカ太平洋地域に関する情報文献を収集し、全国の研究者や学生にひろく公開することも、本センターの重要な活動です。アメリカ合衆国の政治・歴史・文化に関する専門書を中心に七万冊を越える蔵書を有するセンター図書室は、誰でも自由に利用できます。皆さんも学生証さえ見せれば図書を借り出せますので、ぜひ利用してみてください。マイクロフィルム、DVDを含む視聴覚資料も充実しています。休講で時間が空いた時にそれらの資料を眺めてみるのも楽しいでしょう。

現在センターは、南太平洋島嶼諸国やオーストラリアを含むオセアニア地域に関する図書資料を意識的に増やしています。多文化共生の実験の場とも称されるアメリカ太平洋地域の過去と現在を考え、未来を予測する、活発な研究空間へとセンターを育てていきたいのです。詳しくはセンターのホームページ(www.cpas.c.u-tokyo.ac.jp)を見てください。上に紹介したセミナー、公開シンポジウム、図書室の利用規程他、いろいろな情報が掲載されています。

(グローバル地域研究機構/英語)
 

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