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最終更新日:2021.02.03

教養学部報

第574号 外部公開

駒場ライターズスタジオ(KWS)「書き手を育てる学習支援」

中尾まさみ

574_01.jpg理系の実験スペースや講義室の多く入る21 KOMCEE East一階、オープンスペースに隣接したK111に、駒場ライターズスタジオ(KWS)はあります。緑色の地にペンの絵が描かれた看板や、大きな窓から光が差し込む明るい部屋で、勾玉を組み合わせたような不思議な形をした机を囲んで真剣に話し合う学生たちの姿を目にした人もいるかもしれません。KWSは、一年生の必修英作文科目ALESS(理科生)、ALESA(文科生)および三年生対象の共通英語科目、Advanced ALESAを履修しているみなさんの学習支援を目的とした施設です。

ALESSとALESAは、英語で学術論文を執筆したり、口頭発表を行うための基礎を学ぶ科目です。と言っても、多くの一年生にとって、学術論文を書くのは初めての経験かも知れません。ましてや英語で論文を書いたことのある人は、そうはいないのではないでしょうか。KWSは、そうしたみなさんが学問の世界への第一歩を踏み出すために、バイリンガル、マルチリンガルの大学院生チューターが手を貸してくれる場なのです。

では、チューターは、具体的に何をしてくれるのでしょうか。その疑問に答える前に、まずチューターが何をしてくれないか、からお話ししましょう。チューターは、悩むみなさんに答えを教えてはくれません。(え?)英語を直してもくれません。(ええ?)論文を構想し執筆するのは、みなさん自身で、他の人にはできないことだからです。チューターの役割は、書きかけの論文を読み、話を聞いてくれることなのです。
彼らは、その論文について、「ここはどういう意味?」などと質問をするでしょう。また、話を聞いて、「そこは面白いね」とか「この展開は、少し強引じゃないかな」などと感想を言うでしょう。すると、書き手、話し手であるみなさんは、自分の文章を少し客観的に見直し、どこが論理的に弱いか、どこが説明不足か、あるいはどの英文の表現が不自然か(文法的に間違っているか)に自分で気づくことになります。逆に、自分の論文の強みや魅力を発見することもあるでしょう。こうしてチューターと論文について話をする過程で、みなさんは、よりよい論文を書くためのヒントを見つけることができるのです。

つまりチューターは、みなさん自身の書くことに対する意識を高め、自分で文章をみがく能力を引き出す人たちなのです。ALESSとALESAは、学生が自分自身で考え積極的に学ぶ、アクティブ・ラーニングというやり方をその教育の中心に据えて来ました(頭文字のALのところですね)。KWSのこの方法も、まさにアクティブ・ラーニングを用いたサポートというわけです。
その際、大学院生がチューターを務めることには、大きな意味があります。教室でみなさんの論文を読んだり発表を聞いたりするのは先生と同級生ですが、チューターは、そのどちらとも違う、いわば少し先を歩く先輩学習者です。彼らは、すでに論文を書く経験は積んでいますが、初めて論文を書いたときの悩みや失敗もまだ覚えていますから、きっと親身になってみなさんの相談に乗ってくれるでしょう。また大学院生として知的訓練を受けていますが、専門分野はさまざまですから、論文の扱う事柄について熟知しているとは限りません。そういう読者を十分に説得できれば、みなさんの論文はかなり優秀、ということになります。
もちろん、そのような読者となるために、チューターたちは特別の研修を受けています。論文を読むだけでなく、必要な参考文献をどういう方法で探したらよいのか、口頭発表ではどのようなスライドが効果的なのか、声の大きさや表情はどうしたら伝わりやすいのかなど、さまざまなアドバイスをしてくれるでしょう。

二〇〇八年にわずかな人数で始まったKWSも、現在では二〇名以上のチューターが登録し、年間のチュートリアル数も千を超えるようになりました。この間、いろいろな新しい工夫も始まりました。ALESSを受講する理科生が論文に使う実験をサポートするためにALESSラボという施設が一号館にありますが、そこで勤務するサイエンスTAがKWSでのチュートリアルに参加し、ライティング・チューターと協力してデータと文章の両面からサポートを行う、という試み(写真)も行われています。
また、二〇一二年からは、書くだけでなく、話す練習を主眼としたスピーキング・チュートリアルも開始しました。今年度入学したみなさんは、英語でディスカッションや意見交換を行う能力を涵養する新しい科目FLOWを履修するようになりましたので、今後はこの授業のサポートも、ますます拡充してゆく計画です。

さあ、みなさんも、ぜひ一度KWSを覗いてみて下さい。英語学習関係の資料もいろいろ揃っています。チュートリアルは予約が原則ですから、KWSのウェブサイトhttp://ale.c.u-tokyo.ac.jp/ale_web/index.php/ja/support-jp/kws-about-jpで詳細を確認することもお忘れなく。

(地域文化研究/英語)

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