HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報574号(2015年5月13日)

教養学部報

第574号 外部公開

<本郷各学部案内>経済学部

加藤賢悟

経済学部の中の統計学
http://www.e.u-tokyo.ac.jp/

経済学部の紹介、ということですが、自分には大局的な紹介をする能力はないので、個人的な話と、自分の専門とする統計学、および経済学部統計学コースの紹介をします。

まず、経済学部というと何をしているところかイメージがつきにくいと思います。経済学部の一つの特徴として、応用数学に分類できる分野、すなわち、ゲーム理論、統計学、数理ファイナンス、の研究者が一定数いることが挙げられます。自分はそのなかでも統計学を研究しています。

では統計学とはどのような学問でしょうか。Wikipe­diaを調べてみると、「統計に関する研究を行う学問である」とありますが、これではなんだかよくわからないので、あえて言い切ってしまうと、統計学とはデータを分析する方法論に関する学問です。統計学には、固有の数学体系があり、新しい統計手法の開発や、どのような統計手法が「よい」ものと言えるか、ということなどに関心があります。また、統計学は不確実性を数学的に扱うため、確率論と密接な関係にあります。最近では高次元データ(ビッグ・データとも呼ばれるようですが)の解析というものが大きな関心を集めていますが、このようなサイズの大きいデータを扱うためには、伝統的な統計学の範疇に収まらない新しい方法論、およびその理論的な解析のためには新しい数学的ツール(測度集中やランダム行列の理論など)が必要、ないし有用であることが認識されてきています。このように、現実的な問題から、理論的にもチャンレンジングな問題が現れることに統計学の面白さがあると思います。

自分自身に関して言うならば、もともと文科一類に入学したのですが、数学を使って社会を分析することに興味を覚えたので、経済学部に進学しました。統計学を研究分野として選んだのは偶然の産物ともいえますが、教養課程から学部後期にかけて、竹村彰通『現代数理統計学』やT.W. Anderson An Intro­duction to Multivari­ate Statistical Analy-sisといった、数理統計学や統計的多変量解析の名著といえる本をじっくりと読み、統計学の理論的な奥深さを知ることができたことが、その大きな理由と言えます。
ところで、アメリカなどの諸外国と異なり、日本には独立した統計学科というものないため、統計学者は関連する学部・学科に所属することになります。東京大学経済学部には統計学コースというものがあり、一定数の統計学者が所属し、コースとして大学院プログラムも用意されています。それ故に、東京大学経済学部は日本の統計学研究の中心地の一つであると言えます。詳しくは、統計学コースのウェブサイトを参照して下さい。

(経済学部)

第574号一覧へ戻る  教養学部報TOPへ戻る

無断での転載、転用、複写を禁じます。

総合情報