HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報583号(2016年5月11日)

教養学部報

第583号 外部公開

<本郷各学部案内>理学部

理学部長 福田裕穂

理学への招待Ⅱ─理学の楽しみ─

http://www.s.u-tokyo.ac.jp/

理学は、壮大な宇宙から、地球、生物、分子、さらには素粒子まで、我々を取り巻く森羅万象の理を理解しようとする学問です。昨年のノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章先生は、私たちの理学系研究科で素粒子の研究をしていました。私たちの理学部・理学系研究科では、その対象こそ違え、理学を学び、「自然の理」を解くための研究を行います。皆さんが三年生から進学する理学部には、数学科、情報科学科、物理学科、天文学科、地球惑星物理学科、地球惑星環境学科、化学科、生物化学科、生物学科、生物情報科学科の10学科があります。まずは、このうちのどれかの学科に入って、それぞれの分野に特有の基礎や解析手法を学びます。その特徴は、授業に加えて、演習や実験を重視していることです。この実践的な訓練が、自ら課題を考え、それを解くための工夫をする基盤となります。その後、ほとんどの学生は大学院へ進学します。理学系大学院には五つの専攻(物理学専攻、天文学専攻、地球惑星科学専攻、化学専攻、生物科学専攻)があります。ここで、いよいよ自らの発想に基づいた「自然の理」の解明へ船出することになります。大学院では、主体的に、とことん実験したり、観察したり、考えたりするのです。この実践の中からユリイカ(Eureka)がやってきます。この瞬間のために、自然の対象への問いかけ方をひたすら磨いていくのです。

理学は世界を相手にする学問です。そのために、学生の国際性教育はとても重要だと考えています。皆さんは、三年生になると、優秀な学部生を海外に派遣するSVAPプログラムに応募できます。募集人員が10名ですが、自ら海外のPIに直接連絡を取って、二週間から三ヶ月の期間、研究実習をしてくるというタイプAと既存の海外の研究実習プログラム(インターンシップ)又は授業受講プログラム(サマースクール等)に応募し、合格の上で参加するというタイプBがあります。これにより、国際的な学習経験を積み、グローバル社会に向けた視野を広げることになります。また、海外の主要大学の学部生を選抜して受け入れるサマースクール(UTRIP)を実施していますので、海外の学生と直に話し合うことが簡単にできます。平成26年度には、英語講義による学部後期課程コース「グローバルサイエンスコース」が化学科で始まりました。ここでは、普通に英語を使うことができる環境を用意し、普通に英語で議論できる人材を育成することにより、グローバル社会で活躍できる日本人学生の養成を目指しています。また、平成28年度には、英語だけで学位が取得できる国際卓越大学院コースの新設が予定されています。これらの国際活動をサポートするために、理学部では国際化推進室が用意されています。

理学部学生の活躍の場は、国内・国外に広がっています。天文学科には、木曽観測所が、生物学科には三崎臨海実験所に加え、小石川と日光に植物園があります。さらに国外に目を転じると、物理学科、天文学科では、セルン(スイス)、アタカマ(チリ)、ハワイ島(アメリカ)などに、共同研究拠点があります。アタカマでは、現在、理学系研究科主導で口径6.5mの世界最大規模の赤外電波望遠鏡を建設しつつあります。このように、非常に恵まれた国内外の研究施設を広く活用しながら、独創的かつ国際的な研究の第一歩を踏み出すのです。

最後に、理学は役に立つという話をしましょう。理学は、自然の根本原理の理解を通して、私たちの知的生活を豊かにしてくれます。また、DNAの機能原理の解明が医療や薬の革新につながったように、科学技術の土台を支えているのも理学です。そして、何よりも皆さんの役に立ちます。現代社会において、大切なのはグローバルな視野でかつ論理的に考える力と課題設定力ですが、これらは理学をする中で、課題を設定し、とことん考え、かつ世界の優れた研究者・学生と議論することにより身につきます。理学部・理学系研究科は、アカデミアはもちろん、企業の研究者や経営者、政府機関の政策立案者、さらには出版関係者など、多様な人材を生み出していますが、これは、このような理学部・理学系研究科での訓練により培われた力によるものであると思っています。

理学は、極上の愉悦を得つつ、役にも立つ学問です。さあ皆さん、一緒に理学をしませんか。理学部の活動の詳細は理学部ホームページからみることができます。是非一度理学部ホームページ(http://www.s.u-tokyo.ac.jp/)を訪ねてみてください。

(理学系研究科長・理学部長)

 

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